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東京メトロ、株式上場へ、時価総額は小田急・東急に匹敵か…新線「品川地下鉄」整備が加速

文=編集部
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東京メトロ銀座線(「Wikipedia」より)

 赤羽一嘉・国土交通相と小池百合子・東京都知事は7月15日、オンラインで会談し、東京メトロの株式上場に向け、国と都が保有株式を半分ずつ同時に売却することで合意した。実現すれば、政府が大株主の企業としては2016年のJR九州(九州旅客鉄道)以来の大型上場となる。

 国交相の諮問機関である交通政策審議会は、国と東京都が保有する東京メトロの株式を半分ずつ売却するよう求める答申を国交相に出した。答申は実質的に国、都、東京メトロの3者の合意内容となる。答申ではサービス向上や経営の柔軟性などの観点から「株式売却を早期に進める必要がある」と明記。現在は政府が53.4%、都が46.6%保有しているが、それぞれ「同時・同率での売却が重要だ」と指摘した。

 東京メトロは法律で完全民営化の方針が決まっている。東日本大震災からの復興予算を手当てする復興財源確保法は、政府による東京メトロ株売却の期限を27年度としている。有楽町線の豊洲駅から住吉駅までの延伸と、南北線・白金高輪駅と品川駅を結ぶ「品川地下鉄」の整備について、答申は「東京メトロに事業主体の役割を求めることが適切だ」とした。2つの新線建設を確実なものにするため、建設期間中は国と都が、東京メトロ株式の残りの半分ずつを保有することを求めた。

 答申を受け赤羽国交相は「長年の課題を同時に解決する道筋を示していただいた」と発言。都はこれまで株式売却に慎重だったが、小池都知事は「答申に基づいて売却のための準備手続きを進めていく」と述べた。関係者によると、「新線整備については国が総事業費の25%、都が28%を補助し、残りは東京メトロが負担する案が有力視されている」という。

 東京メトロは2つの新線建設について「十分な公的支援と株式の確実な売却を前提に取り組んでいく」とコメントした。建設費用は16年時点の試算で有楽町線の延伸には1500億円、品川駅まで地下鉄を通す計画には1600億円となっている。政府は「副都心線を最後として新線建設を行わない」方針を打ち出していたため、東京メトロは新線建設について「経営に影響を及ぼさない範囲で行う」と慎重な姿勢だったが、国と都の財政支援が約束されたことで実現に向けて前進する。

 株式売却と新線建設の2つの課題が解決できる道筋が見えてきたことで、これまで難航していた東京メトロの株式上場に向けた検討が加速する。品川駅は羽田空港から都心への玄関口だ。リニア中央新幹線は始発が品川駅で、駅周辺ではJR東日本や京浜急行電鉄が再開発を急ぐ。

東京メトロと都営地下鉄の統合は見送りか

 もう一つは、東京メトロと都営地下鉄の統合は実現しない可能性が高まったということだ。答申では「これまで一元化について議論した。近年はメトロと都営でサービス一体化、改善が進められている」との記述にとどめている。東京メトロは帝都高速度交通営団(営団地下鉄)の民営化に伴い04年4月に設立された特殊法人。銀座線など9路線を運行する。これに対して都営地下鉄は浅草線など4路線を持つ。

 かつて猪瀬直樹氏が副知事や知事を務めていた時代に、都は都営地下鉄東京メトロの統合を目指していた。13年1月、猪瀬知事が太田昭宏国土交通相(当時)に面会し、地下鉄一元化を実現するため、政府が保有する東京メトロ株を都に譲渡するよう申し入れている。ただ、猪瀬氏の失脚により、一元化問題は棚上げ。その後の舛添要一、小池百合子都政では一元化の主張は後退した。小池都知事は、今後、臨海エリア、品川エリアの再開発に向け基幹となる交通手段の整備が担保できるなら、都営地下鉄と東京メトロの統合にそれほどこだわらないだろうと見られている。

 業績が低迷する都営地下鉄と東京メトロが経営統合すれば、東京メトロ株式の市場の評価が下がる可能性が強く、国は計画通りの売却益を得られなくなるため、これまで統合に難色を示していたという背景もある。

 都が東京メトロと都営地下鉄の統合を断念する見返りに、国は東京メトロの株式公開を認め、国と都が新線建設に必要な財政支援を行うことになった――。答申を、こう深読みする向きもある。政府は東京メトロ株を売却でき、都は国の後ろ盾を得て新線を建設できるわけで、双方の顔が立つ。国交省は延伸に向けた調査費などの必要経費を22年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。

東京メトロの時価総額は東急、小田急と肩を並べる

 政府による東京メトロ株売却期限の27年度に向けて、東京メトロの上場計画が本格化する。株式市場では東京メトロが上場した場合、どの程度の企業価値(時価総額)になるかに関心が集まる。

 東京メトロの法人名は東京地下鉄株式会社。山村明義社長は東北大学工学部卒の鉄道技術者で17年6月から社長を務める。9路線、195.6㎞、180駅の地下鉄を運行しており、資本金は581億円、従業員は9881人である。どの程度の時価総額になるかは、関東の私鉄各社と比較するとわかりやすい。

 東京地下鉄の21年3月期の連結決算は売上高が20年3月期比31.7%減の2957億円、営業損益は402億円の赤字(20年3月期は839億円の黒字)、最終損益は529億円の赤字(同513億円の黒字)だった。04年の民営化後、初めて赤字に転落した。新型コロナの影響による外出自粛やテレワークの拡大で、定期券の運賃収入が前期に比べて30.7%減、定期外の運賃収入が39.2%減と大幅に悪化した。

 業績の悪化は他の関東私鉄も同じである。時価総額でみると小田急電鉄が9404億円、東急が9260億円(8月6日終値時点)。東京地下鉄(東京メトロ)の売上高は業界6位にとどまるが純資産は業界2位に相当する。上場すれば、時価総額は小田急、東急と肩を並べ、9000億円の大台に乗ると試算されている。

【関東の私鉄各社の業績(21年3月期)】(単位:億円)

        売上高 最終損益   純資産  時価総額

・東急     9359  ▲562    7525   9260

・東武鉄道   4963  ▲249    4531   5912

・小田急電鉄  3859  ▲398    3524   9404

・西武HD      3370   ▲723    3856   3842

・京王電鉄   3154  ▲275    3443   7700

・東京地下鉄  2957  ▲529    6444    ?

(HDはホールディングスの略。▲は赤字。時価総額は8月6日終値時点)

(文=編集部)

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