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小谷寿美子「薬剤師が教える薬のホント」

自分の処方箋薬を他人に渡すのは犯罪行為…相手の命を危険に晒す、メーカー保証の対象外に

文=小谷寿美子/薬剤師
自分の処方箋薬を他人に渡すのは犯罪行為…相手の命を危険に晒す、メーカー保証の対象外にの画像1
「Getty Images」より

「この薬すごく効いたわよ」

「ほんと?」

「ほんと、いいから使ってみなさいよ」

 薬局の待合室で、こうしたやり取りを耳にして、止めることがあります。先日も「また湿布のやり取りか」と思いきや「ビソノテープ」で、危ないにもほどがあります。この薬、血圧を下げたり、脈の乱れを整えたり、心臓の負担を抑えるといった効果があります。患者さんが医師の処方通りこのテープを使ってつらい症状が治ればよいですが、他人が使うべき薬ではありません。

 心臓の負担を抑え過ぎたら、心臓は止まります。脈の乱れを整えるといっても、乱れている人が使うからちょうどいいのであって、もしかしたら脈が止まることだってありうるわけです。何か起きれば責任が取れない以上、決して友達に自分が処方された薬を渡してはいけません。友達だと思うなら、そういう薬は決して受け取ってはいけません。

 また、もし友達に「この薬すごく効いたわよ」と言われたら、「そう、あなたに合う薬が見つかってよかったわね」と答えるのが正しいのです。

又聞きになると必要な情報が誤って伝えられる

「ビソノテープ」ほど重大ではないですが、こういう例もありました。下痢止めが処方された患者さんとのやり取りです。

「今、下痢の具合はどうですか?」

「私じゃないんです。主人が下痢のときに1回1錠で飲んだら、すごくよくなったんですよ。それで薬がなくなってしまったので、先生にお願いしました」

「先生の処方では1回2錠ですよ?」

「え? 2錠なんですか?」

 普段よりお腹の調子が悪いのと持病があるのとで、あらかじめ下痢止めが処方されていた患者さんでした。そしてこの薬の通常量は1回2錠です。又聞きになると、必要な情報は誤って伝えられてしまうものです。

 みなさんも一度は「伝言ゲーム」をやったことがあると思います。これはゲームですから、最後の人が話す「とんちんかんな答え」に大爆笑できます。一般的にこの伝言ゲームの正答率は20%とされています。又聞きになると必要な情報は誤って伝えられる、ということは経験則としてみなさんも覚えておいてください。

薬によっては刑事罰になります

 処方箋薬というのは、医師が診察の結果あなたの症状や体質に応じて指示し、薬剤師が適切に調剤して渡している薬です。つまり、「あなた専用」の薬であるということです。これを他人に渡すと必要な効果が得られないばかりか、健康被害になる可能性もあります。実際、健康被害が多数報告されています。

 薬を他人に譲渡してしまうと、医薬品医療機器等法(薬機法)や麻薬及び向精神薬取締法といった法律に抵触し、

・3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金、またはこれを併科

・5年以下の懲役、又は情状により5年以下の懲役及び100万円以下の罰金

といった罰則が科せられることがあります。

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