コラーゲンの謎…食べたりサプリを飲むと、本当に肌機能は改善するのか?薬剤師が解説
コラーゲンといえば肌の弾力に役立つ成分で、年とともに減ってしまうため、サプリメントとして日頃飲んでいる方が多いと思います。一方で、魚や哺乳類のコラーゲンがどうやって私たち人間のコラーゲンになるか、疑問に思っている方もいるかもしれません。
コラーゲンはタンパク質の一種です。タンパク質というと筋肉を想像してしまいますが、コラーゲンもタンパク質です。筋肉とは構造が大きく違うため、まったく別物のように感じてしまいますが、コラーゲンは繊維状のタンパク質であると覚えておいてください。繊維とは「細くて長いもの」という意味です。1本の繊維では弱いため、3本の繊維を螺旋形にねじって合わせると強い糸ができます。この糸をさらにより合わせると、より強い糸をつくることができます。また、繊維を網目状に織り上げて布状にすることができます。
コラーゲンは体中の広い範囲に分布しています。皮膚、骨、腱、軟骨、血管壁、靭帯、歯、筋膜、眼球といたるところにあります。魚や肉の調理をしていると、「眼球がプルプルしている」「骨と肉の間に筋がある」「肉自体にも膜がある」と気づくかと思います。これらがコラーゲンです。
コラーゲンは29種類あり、発見された順に番号が付けられています。1番先に発見されたものをⅠ型コラーゲン、2番目がⅡ型コラーゲンといいます。Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅴ型、Ⅵ型は糸状の構造をしています。また、Ⅳ型は布状の構造をしています。この中でⅠ型は最も研究が進んでいるコラーゲンで、主に皮膚、骨、腱に含まれています。Ⅱ型は主に軟骨に含まれています。
コラーゲンのつくり方
コラーゲンはタンパク質なので、細胞内のタンパク質製造工場でつくります。ここで1本の細い繊維をつくり、その後「ヒドロキシ化」という作業をします。この作業にはビタミンCが必要です。ビタミンCが不足してしまうとコラーゲンがつくれません。コラーゲンは皮膚、骨、腱、軟骨、血管壁とさまざまな場所に含まれていますから、不足するとこれらがボロボロになるということです。
例えば歯肉では60%がコラーゲンからできているため、これが劣化してしまうと歯周病になってしまいます。血管壁がボロボロになれば出血してしまいます。ビタミンCを使ってヒドロキシ化をすることで繊維を安定にすることができます。その後、繊維を3本集めて螺旋形にねじっていきます。これで赤ちゃんコラーゲンの完成です。
赤ちゃんコラーゲンは細胞外に運ばれ、大人コラーゲンに変換されます。この変換にもビタミンCが必要です。大人コラーゲンは複数集まって手をつなぐ(架橋といいます)ことで、より強い最終形コラーゲンへ変わります。最終形コラーゲンはとても強い物質です。皮膚コラーゲンの半減期(半分に減る時間)が15年、軟骨においては17年といわれていて、なかなか壊れないのです。
コラーゲンを飲んで本当に効くのか?
市販されているコラーゲンは、魚や哺乳類からつくられます。コラーゲン自体はとても安定していて壊れない物質ですから、そのままの形では吸収されにくいのです。そこで、各メーカーの技術で分解させて小さくしたものをサプリメントとして使います。「低分子コラーゲン」や「コラーゲンペプチド」と書いてあるのは、小さくして吸収をよくしたコラーゲンです。魚由来と哺乳類(主にブタ)由来があります。低分子化の技術が上がったため、吸収に関してどちらも変わらないとされています。魚由来は独特の魚臭さが若干あるそうですが、あまり気にならないという方もいます。
コラーゲンを飲んだ後の肌機能に対する効果を調べたところ、一部の研究で皮膚の弾力の改善がありましたが、皮膚の水分量やシミ、シワに対しては効果が認められませんでした。これは成人女性120名を対象とした試験で、ブタ皮由来コラーゲンペプチドを1日2g、5g、10gの3グループで8週間続けて飲んでもらうというものです。その結果、1日5g以上のグループで皮膚弾力性の増加があったそうです。また、コラーゲンを飲んで関節痛が改善したという研究もあります。
コラーゲンペプチドが肌や関節痛に効果があるとして、「機能性表示食品」が発売されています。効果があるものが欲しいという方は、この機能性表示食品を買って飲めばいいということです。
なぜ人間が魚や哺乳類のコラーゲンを飲むと、体内にコラーゲンができるのかは、まだ詳細はわかっていません。食べたコラーゲンは消化の過程でアミノ酸になります。バラバラにされた状態で吸収されるのです。ヒドロキシプロリンはコラーゲンに含まれる特有のアミノ酸ですが、体内での合成を促進させる効果があるといわれています。これからの研究が待たれます。
コラーゲンの安全性
ゼラチンを食べてアレルギー反応がある人は、コラーゲンを飲むことは控えてください。ゼラチンとは動物の骨や皮に含まれるコラーゲンに熱をかけて抽出したものです。コラーゲンの三重螺旋を1本ずつに分解しています。ゼラチンもサプリメントのコラーゲンも原料は同じものを使っていることから、ゼラチンアレルギーの方はサプリメントのコラーゲンを飲まないようにしてください。
被害事例はゼロではなく、かゆみや発疹が出てしまったという報告があります。しかし、多くのケースではいたって問題はなく、推奨量を守って飲めば安全なものです。
(文=小谷寿美子/薬剤師)