
人権意識に乏しい日本の入管行政
日本の入管行政のあり方が問われる出来事が相次いでいる。
名古屋出入国在留管理局に収容されていたスリランカ人女性、ウィシュマ・サンダマリさんが、適切な医療を受けられず、33歳の若さで死亡した事件では、その後の遺族への対応も含め、当局の人権感覚への信頼は地に落ちた。
また9月15日、大阪出入国在留管理局に、2017年に収容されていた日系ペルー人の男性が、職員の暴行で腕を骨折したとして国に損害賠償を求めた裁判では、国側が所内の監視カメラ映像を提出。そこには、後ろ手に手錠をかけられたまま床に横たわっている男性が、職員5人に押さえつけられたり、14時間にわたって放置されたりする場面が映っていた。
代理人が映像の一部を公表し、それを見た多くの人が衝撃を受けた。
さらに9月22日、スリランカ人の男性2人が、難民不認定の処分を通知された翌日に強制送還されたため、処分取り消しの裁判を起こせなかったと訴えていた件で、東京高裁は、出入国在留管理庁の対応は「憲法32条で保障する裁判を受ける権利を侵害した」として、原告逆転勝訴の判決を出した。
2人はいずれも不法残留として警察に逮捕され、検察の起訴猶予処分を受けて、東京入管収容場に収容された。難民申請を行ったが不認定となり、異議申立の行政手続きを行っている最中に仮放免となった。異議申立は棄却となったが、入管当局は40日以上もそれを伝えなかった。仮放免延長の手続きで2人が訪れた機会にも伝えていない。そして、2014年12月17日、仮放免延長のために出頭した2人に、延長不許可を伝えて再収容し、異議申立の棄却を伝え、翌日のチャーター便による一斉強制送還で帰国させた。
難民不認定に対しては、行政手続きとしての異議申立のほか、処分取り消しを求める裁判を起こす司法手続きがとれる。2人は裁判を起こす意思を示し、1人は担当弁護士との連絡を要求した。入管職員は、弁護士に電話をすることは許したが、弁護士は事務所に不在で連絡がとれなかった。入管が弁護士との連絡を認めたのはわずか30分間で、その後は携帯電話を取り上げ、連絡をさせなかった。
憲法第32条は「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。」と明記している。判決は、それに加えて、国の行為は適正手続きの保障を定めた憲法第31条などにも違反していると断じた。
こうした出来事からは、当局が不法残留と認定した外国人は、とにかく早く追い返すことばかり一生懸命で、その人権には頓着しない入管行政のありようが浮かんでくる。