
資生堂は米国を中心に展開するベアミネラルなど化粧品3ブランドを、米投資ファンドのアドベント・インターナショナルに売却する。売却額は7億ドル(約770億円)の見通し。ベアミネラル、バクサム、ローラメルシェの3ブランドの2020年12月期の売上高は448億円で、資生堂グループ全体の売り上げの4.9%を占める。ベアミネラルの国内運営会社も売却の対象で、21年中に譲渡の作業を終える予定。今回のブランド売却で、資生堂は「負の遺産」を清算することになる。
3ブランドのうち、自然派ファンデーションブランドのベアミネラルの傷が深かった。10年、19億ドル(当時の為替レート約1800億円)を投じ、ベアミネラルを主力に展開するベアエッセンシャル社を買収した。16年に買収したローラ メルシェは魚谷雅彦社長が就任後、初めての買収案件だった。
欧州向けの高級ブランドを揃えて成長する方針を掲げ、3つのブランドはその中核と位置づけられたが、売り上げは思うように伸びず、17年度と21年度に累計900億円超の減損損失を計上。資生堂にとって、お荷物ブランドとなっていた。さらに新型コロナのまん延で外出自粛が広がり実店舗を展開する負担が増大。不採算店の閉鎖を進めてきたが、赤字体質の解消ができない状態が続いていた。
そのため不採算部門の切り離しを決断した。4月、イタリアの高級ブランド、ドルチェ&ガッバーナとのライセンス契約を21年中に解消すると発表し、特別損失350億円を計上した。7月にヘアケアのTSUBAKIなど日用品事業を1600億円で売却した。魚谷社長はかねてから「21年中に欧米事業の整理にメドをつける」と語っていた。売却した事業の合計売上高は1000億円超で、20年12月期の売上高(9208億円)の1割に相当する。
中国で稼ぎ、日本は足踏み
資生堂の2021年1~6月期の連結決算は売上高が前年同期比21.5%増の5076億円、営業利益は230億円の黒字(20年1~6月期は34億円の赤字)、最終損益は172億円の赤字(同213億円の赤字)だった。
新型コロナウイルス禍で落ち込んだ化粧品の販売が中国など海外で伸びた。だが、国内は低迷が続き、コロナ感染拡大前の19年1~6月期の実績(5646億円)には届かなかった。営業損益は同期として2期ぶりの黒字になった。米国は91億円、欧州も3億円の営業赤字だが、機内販売や空港免税店のトラベルリテールが2ケタ増の83億円の営業利益を叩き出し、欧米での不振を補った。最終損益はドルチェ&ガッバーナのライセンス契約の解消や欧米などでの店舗閉鎖にかかる費用として234億円を特別費用に計上したことが響いた。