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高安雄一「指標でみる韓国経済の今」

日本には存在しない経済指標「建設投資」から浮かぶ、韓国の予断を許さない現状

文=高安雄一/大東文化大学教授
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日本には存在しない経済指標「建設投資」から浮かぶ、韓国の予断を許さない現状の画像1
「Getty Images」より

 今月は日本には存在せず、韓国には存在する需要項目である建設投資に関する指標を取り上げる。日本の設備投資には、民間部門が建築物に作るなどの投資が含まれている。公共部門が道路や橋梁を作るなどして資本の形成を行った場合、公的固定資本形成、いわゆる公共投資として分類される。韓国では、日本における民間部門が建築物を作るなどの投資と公共部門が資本形成を行うための投資が、建設投資として分類されている。

 毎月公表される建設投資に関する指標は、「建設景気動向調査」で把握される「建設既成額」と「建設受注額」である。建設既成額は、名前のとおり、建設が終了して発注者に建設物が引き渡された時点での金額であり、建設投資がまさに実施された時期の数値が計上される。一方、建設受注額は、建設企業が建設工事を受注した時点で計上される金額であり、建設投資に先行する。統計庁は、毎月これら指標を公表しており、我々は建設投資の動向と先行きをきめ細かく把握することができるのである。

 建設既成額と建設受注額の母集団は、国内の建設業を営む総合建設企業である。しかしながら、建設景気動向調査はすべての母集団に調査をかける悉皆調査ではなく、一部の企業を選んでその企業に調査を行い、母集団の数値を推計する標本調査である。では、建設景気動向調査ではどのように標本を選んでいるのであろうか。

 まず建設既成額である。韓国では毎年、「建設業調査」を行っているが、この調査結果をもとに、母集団に該当する企業を建設既成額の順に並べていく。そして建設既成額が大きいほうから実際に調査する標本企業を選定していく。その合計が母集団全体の建設既成額の50%に達するまで企業の選定を続け、これを超えた時点で選定を打ち切る。標本となった企業だけに、毎月、どの程度建設を行い、建設物を引き渡したか尋ね、その結果から母集団の建設既成額を推計している。

 次に建設受注額であるが、これも建設既成額とほぼ同様の方法で推計されている。ただし、建設受注額の40%となったところで標本企業の選定を打ち切るところは、建設既成額と異なる。

建設投資は一時的に減少する可能性

 さて実際に建設既成額と建設受注額をみていこう(季節調整値、3カ月移動平均値)。まず建設既成額である。

日本には存在しない経済指標「建設投資」から浮かぶ、韓国の予断を許さない現状の画像2

 2019年は概ね11.3兆ウォン程度で推移していたが、コロナ禍が本格化した2020年の上半期から大きく減少するようになった。最も数値が下がった2020年10月は、コロナ禍前の2019年12月と比較して6.5%のマイナスとなったが、これは、民間機関が2020年1月から10カ月連続で減少となったことが大きく、コロナ禍による民需の落ちこみが大きかった結果といえる。ただし、公共機関も2020年3月から7カ月連続で減少しており、財政政策により公共需要が景気を下支えるといった動きはみられなかった。

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