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原価低減の名のもと利益を搾取し続けるトヨタに、日鉄が反旗…他の取引業者に波及か

文=桜井遼/ジャーナリスト
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トヨタ・プリウス(「Wikipedia」より)

 日本製鉄が10月14日、トヨタ自動車と中国の鉄鋼メーカーの宝山鋼鉄を相手に電磁鋼板の特許を侵害しているとして提訴したことに波紋が広がっている。トヨタと日鉄といえばそれぞれ自動車メーカー、鉄鋼メーカーを代表する大企業同士で、両社は長年にわたって盟友と呼べるほど深い関係にあった。しかし「原価低減」の名のもと利益を搾取し続けるトヨタに対して、日鉄が反旗を翻した。こうした動きにトヨタの取引先は静観しながらも喝采を浴びせている。

 日鉄は宝山鋼鉄が製造する電磁鋼板が日鉄の特許を侵害しており、この宝山鋼鉄の電磁鋼板をトヨタが電動車に採用しているとして、宝山鋼鉄とトヨタにそれぞれ損害賠償200億円を求めて東京地裁に提訴した。日鉄はトヨタに対して、この電磁鋼板を使ったモーターを搭載した電動車の製造・販売の禁止を求める仮処分も申請するほどの強硬な姿勢を示している。

 日鉄にとってトヨタは、鋼材の最大の納入先であり、両社は長年にわたって密接な関係を続けてきた。それが一転、材料メーカーが最大の納入先を提訴するという異例の対応に踏み切ったのは、「盟友」だったはずの両社の関係が変化してきたことにある。

 国内の自動車メーカーと鉄鋼メーカーは鋼材納入価格を半期ごとに交渉することが慣例となっている。それぞれの業界で国内最大手である両社の価格交渉は「チャンピオン交渉」と呼ばれ、その交渉結果は他社が国内で鋼材価格を決める上での指標にもなっていた。

 しかし、自動車生産台数を増やし、規模拡大を続けるトヨタに対して、日鉄は中国や韓国の安い輸入鋼材に押され業績の低迷が続いた。強大化するトヨタの購買力に、日鉄の発言力は弱まり、韓国や中国の安い鋼材価格を引き合いにするトヨタの値下げ要求を日鉄は受け入れざるを得ない状況が続き、鋼材価格の交渉ではトヨタが完全に主導権を握っている。トヨタにとって日鉄は「パートナー」ではなく「下請け」という位置付けに成り下がった。

 かつて日本を代表していた名門企業の凋落に、忸怩たる思いを抱いていた日鉄の橋本英二社長は、鉄鉱石などの原材料価格の急騰で韓国などの海外鉄鋼メーカーが鋼材価格を大幅に引き上げたのを機に逆襲に打って出る。日鉄は今春、トヨタとの鋼材納入価格の交渉で大幅な引き上げを要求。トヨタはこれに難色を示し、原材料価格の上昇分だけの価格改定を求めたが、日鉄側は「(韓国系などの)他社から購入してもらって結構」と言い切り、鋼材の供給量制限も匂わせた。

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