
デジタルによってスムーズにサービスが提供される。これがDX(デジタルトランスフォーメーション)の理想であるとすれば、その成否はトラブルの際にはっきりするものです。
DX先進企業であるアマゾンではもう10年以上前から、トラブル対応が優れていることがわれわれプロの界隈で話題になってきました。最近のアマゾンはややコンタクトセンターの品質が劣化しはじめたという報道もありますが、10年前当時、私の個人体験ではこんなことがありました。
まだ置き配が始まる前の時期でしたが、当時アマゾンで購入した書籍はメール便で配達され、それが郵便受けに入りきらずに突き刺さった状態で配達されることがよくありました。「危ないなあ、あれじゃいつか盗まれちゃうぞ」と思っていたら案の定、あるとき注文した書籍が届かない。アマゾンのサイトで調べたら数日前に配達済みになっています。たぶん誤配か同じような状況で配達され盗まれたかのどちらかでしょう。
こういったトラブルが起きたときには、消費者は不安で嫌な気持ちになるものです。嫌な気持ちは購入した商品が届かなかったからですが、不安は「この問題を解決するまでにすごく面倒なことになるんだろうな」という気持ちから来るものです。
それでアマゾンのサイトにアクセスしました。置き配が始まった現在は少し手順が違うのですが、当時のアマゾンの場合カスタマーサービスのサイトには「配達済みになっているのに商品が届かない」という場合の対処法として電話での対応と、メールでの問い合わせ法が載っていました。
それで電話をしたのですが、プロの経済評論家としていい意味で驚いた点は、まずなによりもすぐに電話がオペレーターにつながったことです。そして電話口で注文番号とトラブルの状況を伝えると、すぐに謝罪があり、その場で同じ商品の再配達の手続きをしていただけました。
経済評論家という商売は、こういった事例をきちんと記録する習慣があります。このときの記録を確認すると、不安を感じてアマゾンのサイトで対処法を調べ始めてから問題が解決するまでにかかった時間は8分でした。この記事の読者の皆さんは、まずこの10年前の「アマゾンでは8分で解決」というエピソードを覚えておいてください。
オペレーターにつなげさせない仕組み
つぎに最近、私が使っている携帯電話会社であったトラブルの話をします。対応が悪い例として紹介する関係上、どこの会社かは内緒とさせてください。
この会社ではオプションで500円を払うと一種の保険としてデータ通信量が超過した場合の0.5GB分のデータ追加を無料にしてもらえるサービスがあります。経験的には3~4か月に一回ぐらいデータ超過になるので、私はこのオプションを使っています。
実はこのオプションを申し込むと、系列のショッピングモールで500円の割引クーポンがもらえます。つまりインターネット通販をよく使う人なら、このオプションは実質無料なのです。
ところが最近、私が携帯の設定を少し変えたせいでこのクーポンが消失してしまうトラブルが起きました。「500円払って入ったサービスで500円の特典がもらえていない」というのがトラブルの内容です。少額なので普通の人ならあきらめる話かもしれません。しかし、経済評論家はこういったことは好奇心からちゃんと追及してみるのです。
それでまずその通信会社のトラブル対応をするコールセンターに電話をしたのです。電話をすると自動音声が出てきて、トラブルの内容に応じて「何番を押せ」と言われ続けていくのですが、細かく分岐していくと結局私のトラブルに対応する番号がありません。それで「元のメニューに戻る場合は9を」みたいな感じで出口がなくなるのです。