NEW

東証区分再編、構想6年の末に骨抜き…海外投資家離れ加速、世界市場で地位低下

文=竹谷栄哉/フリージャーナリスト
東証区分再編、構想6年の末に骨抜き…海外投資家離れ加速、世界市場で地位低下の画像1
「Getty images」より

「大山鳴動してネズミ1匹とは、まさにこのことですよ」

 あるベテラン証券アナリストがこう嘆くのは、東京証券取引所の4月からの市場区分再編で、実質最上位となる「プライム市場」に現在の「東証1部」に上場する企業の約8割が横滑りするなど、抜本的な改革がみられなかったためだ。上場基準の厳格化などで企業の成長意欲を促し、海外からの投資を呼び込む素地をつくる目的で約6年もかけただけに、この結果には国内外の投資家から「東証は国内上場企業に極端に甘い」との批判が殺到している。

現行の東証1部の約8割が新市場区分「プライム市場」に横滑りの骨抜き

 今回の再編は、これまで「東証1部」「東証2部」「マザーズ」「JASDAQ・スタンダード」「JASDAQ・グロース」の5つの市場区分を、「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つに変更するのがメインだった。

 東証が1月11日に発表した資料によると、現行の1部上場企業の2185社からプライム市場に移るのが1841社と、約8割が残留しており、ほぼ現状維持となった。この現状について、冒頭のアナリストはこう分析する。

「昨年末の東証1部で時価総額下位1000社の平均が180億6200万円、下位500社の平均で94億3200万円。東証1部は実質的には少しだけ大型株のある中小型株の集合体で、日本のトップ企業グループとはとてもいえません。

 そもそも市場再編の議論が始まった当初、ボーダーラインは300億円といわれましたが、昨年末時点でそれ以下の企業は842社と大体の半数になり、相当スッキリするのに。今回の改革が骨抜きに終わったことで、向こう5〜10年程度は再度メスが入りませんから、最上位市場に入れるか怪しかったゾンビ企業は胸を撫で下ろしていることでしょうね」

米国のトップリーグ企業数より異常に多い東証1部上場企業、経営に緊張感なくす構造

 今回の東証の市場区分再編は、5つもある区分自体が煩雑なことや、2部やマザーズでの上場を経由すれば1部上場の基準が緩和されるという「裏ルート」により、上場企業がこの10年で3割近く増えたことに批判が集まっていたことが背景にある。現在の東証1部上場企業数は2814社(1月20日現在、外国株1社を含む)だが、米国の代表的な株式指標であるダウ平均(ダウ工業株30種)は30社、S&P500は500社で、それに比べれば異常なほど多い。

 米国では次々に銘柄が入れ替わるため、企業間の競争が刺激されるが、「日本の場合、よほどでないと上場廃止や2部降格にならないため、緊張感がない」(アナリスト)という指摘が根強く、改革が期待されていた。

市場区分改革、19年に改革案公表も野村グループ社員の不正で宙に浮く

 市場区分の議論は13年に東証と大阪証券取引所が合併し日本取引所グループが発足したことを機に始まった。約6年をかけて19年3月に改革案がまとまったが、改革案を議論する有識者会議のメンバーだった野村グループの看板アナリストが上場基準の情報を顧客にメールで漏洩させる不祥事が発覚。野村ホールディングスと野村証券が19年5月に金融庁から処分を受けるなどしたため、いったん議論が宙に浮いた状態となった。「このドサクサの空白時間で上場企業が東証側にロビイングする余裕ができ、改革が中身のないものになっていった」(証券関係者)というのも不思議ではない。

RANKING

23:30更新
  • 企業・業界
  • ビジネス
  • 総合