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修学旅行キャンセル料、国の交付金が充当されない例も…なぜ自治体によりバラツキ?

文=Business Journal編集部
京都を散策する児童ら
京都を散策する児童ら(GettyImagesより)

 損害保険ジャパンとその子会社で「修学旅行キャンセル保険」などを販売するMysuranceは17日、全国の小中高生の保護者を対象としたアンケート「コロナ禍の修学旅行の参加実態調査」の結果を公表し、「26%の保護者が参加予定の修学旅行の中止・不参加時のキャンセル料負担に不安」との見解を示した。コロナ禍での修学旅行のキャンセル料をめぐってはたびたび議論になっているが、政府はかねてから「内閣府新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用することを呼び掛けている。交付金は十全に機能していないのだろうか。

「キャンセル料の負担」に頭を抱える保護者たち

 損保ジャパンの調査は2021年11月12日~22日にインターネットアンケート方式で実施。同社の会員制サイトに登録している全国の小中高生の保護者に新型コロナウイルス感染症の影響による修学旅行の中止の有無、修学旅行に参加させた、もしくは今後、子どもを参加させるのにあたって不安に感じていることなどを問い、1663人が回答したという。

 修学旅行の実施状況では、回答者1663人のうち、コロナ禍で修学旅行が「中止になった」と回答した保護者は33.4%、「実施された」は38.3%、「これから実施予定」は28.3%となった。

 一方で「参加させた際の不安」(回答者607人)では「旅行中の子どもの新型コロナウイルス感染」が53.0%でもっとも多く、次いで「宿泊先、交通機関の感染対策」が38.1%、「修学旅行の中止・不参加によるキャンセル料の負担」が19.8%となった。

「これから参加させる際に不安なこと」(回答者431人)でも同様の結果で、「旅行中の子どもの新型コロナウイルス感染」が58.2%と最も高く、「宿泊先、交通機関の感染対策」は45.7%、「修学旅行の中止・不参加によるキャンセル料の負担」が26.0%だったという。

 上記の結果を踏まえ、以下のように公益財団法人日本修学旅行協会の談話を添付している。

「修学旅行をはじめとする教育旅行は、子どもたちにとって貴重な学びの機会であり、大切な経験です。新型コロナウイルス感染症の影響により、多くの学校で修学旅行等の旅行行事が変更・中止を余儀なくされました。保護者が参加・不参加の判断をする際に、その理由として感染への不安やキャンセル料の負担等の要素がありました。キャンセル料の取り扱いについては、各自治体や取り扱い旅行会社により異なり、保護者の参加・不参加の判断にも影響しました。新しい保険が整備・拡充されることは、保護者の不安を減らすという意味で重要と考えております」

修学旅行のキャンセル料は国が支援するはずだが……

 コロナ禍での「修学旅行のキャンセル料」をめぐる議論は、2020年2月27日に当時の安倍晋三首相が全国の小中学校・高等学校・特別支援学校へ臨時休校を要請した当初から起こっていた。すぐに全国の保護者、学校関係者などから批判の声が上がり、授業とあわせて「修学旅行をどうするのか」もあわせて問題提起された。

 同年3月24日には文部科学事務次官名で「令和2年度における小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における教育活動の再開等について」が通知され、同通知の中に「特に、修学旅行については、その教育的意義や児童生徒の心情等にも配慮いただき、当面の措置として取り止める場合においても、中止ではなく延期扱いとすることを検討いただくなどの配慮をお願いしたい」などという文言が明記された。

 しかし、4月7日に7都府県に緊急事態宣言が発令され、その期限が5月31日までに延長されたことで、多くの学校は休校に。修学旅行の中止や延期も増加し、キャンセル料発生に伴う保護者の負担軽減のため、予算措置を求める声が高まった。

 その結果、4月30日に文部科学省で補正予算が組まれ、キャンセル料などへの支援として約6億円が計上された。その後、政府は「内閣府新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」(20年度1次補正予算1兆円、2次補正予算2兆円)を設立。「修学旅行の中止や延期に伴う追加的な経費、臨時休業中では難しい自然体験・文化芸術体験・運動機会の創出のために必要な経費」に充当することを促した。

 文部科学省公式サイトの「新型コロナウイルスに関連した感染症対策に関する対応について」のQ&Aでは、「修学旅行を中止又は延期した場合のキャンセル料、感染症対策や計画変更等により生じた追加的費用等については、国として支援してもらえるのか」との疑問に対し、以下のように国としての公式見解を述べている。

<新型コロナウイルス感染症の影響により修学旅行等(修学旅行、遠足、社会科の見学、移動教室、体験活動、オリエンテーションなどの校外で行う活動を含む)を中止又は延期した場合に発生したキャンセル料等や、修学旅行等の実施にあたり、例えばバスの増便等新型コロナウイルス感染症対応のために生じた追加的費用については、令和3年度においても、各自治体の判断により「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の活用が可能ですので、保護者の経済的な負担軽減を図るため、予め各自治体の財政担当部署と調整の上、活用について検討をお願いします>

余裕のない自治体では交付金が修学旅行にまで回らない

 だが修学旅行のキャンセル料の負担に対する保護者の不安は軽減されていないようだ。交付金の活用対象にならない事例があるからだ。それはどのようなものなのか。前述の日本修学旅行協会の担当者は次のように説明する。

「交付金は一括で各自治体にお金が落ちる仕組みです。“コロナ対策”という大きな枠組みで、使途は“各自治体が判断し、幅広く使ってください”という趣旨です。そのため、活用対象は医療機関、営業補償、学校分野であればICT教育を含めていろいろな事業に及びます。そのため当然、“修学旅行より医療関係者や営業補償に当てたほうが大事だ”という判断はあると思います。また、“修学旅行のような一部の学年の取り組みに負担していいのか”という声もあると思います。

 また各自治体の予算規模の問題もあります。潤沢な財政状況の自治体とそうではない自治体があり、修学旅行に充当できる余力があるか否かも問題になってきます。学校側は自治体から同交付金の充当をしてもらうことができれば、キャンセル料の負担を考えなくても済むので、ギリギリのタイミングまで実施の可否を判断できます。社会を取り巻く感染状況は日々変わっていくので、学校としてはギリギリまで状況の推移を見て判断したいと考えます。

 一方で、旅行会社からは3週間前から1カ月前に実施・中止の判断を求めてくるのですが、その段階で感染拡大の状況を判断するのは難しいのです。行政が充当してくれるのか、くれないのかによっては、各学校の校長先生方の判断に大きくかかわってきます。この点に関しては、昨年度から今年度にかけて課題になっています。

 例えば、教育委員会が修学旅行の中止を勧告し、各学校に対して『経済的な負担は自治体が負担するので、なるべく安全面に配慮してください』とする事例がある一方で、実施・中止の可否の判断を学校側に委ね、交付金の充当もないというケースもあります。

 昨年くらいまでは、修学旅行のキャンセル料に対応した保険もありませんでした。今は少しずつ、保険各社が修学旅行に関する保険商品を出し始めていますが、まだまだこの問題が解決したわけではないという状況です。できれば、文科省が別個に予算を組んでほしいと思います」

 コロナ禍での修学旅行に関する難しい判断を、学校側は当面求められ続けることになりそうだ。

(文=Business Journal編集部)

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