イオンは子会社にした100円ショップ大手キャンドゥ(東証1部)の国内店舗数を5年後に7割増の2000店に増やす。グループのコンビニ、ミニストップ(東証1部、イオンが47.8%出資)と並ぶ規模となる。
イオンは21年秋からの2回のTOB(株式公開買い付け)を経て、1月5日付でキャンドゥ株式の51.16%を取得して連結子会社とした。買収総額は210億円にのぼる。イオンの吉田昭夫社長が、年頭の事業戦略説明でキャンドゥのテコ入れ計画を明らかにした。「新型コロナ下、(100円ショップは)エッセンシャル業態として、消費者の支持が集まっている。グループ内での相乗効果も期待できる」とした。
キャンドゥの店舗数は21年11月期に1180店だった。これを26年11月期に2000店にまで増やす。出店数の6割程度(492店)は大型商業施設や総合スーパー(GMS)など既存のイオンのグループ店になる見通し。キャンドゥのプライベートブランド(PB)商品をイオングループのドラッグストアや他の小売業に供給する卸売り機能を持った事業も強化する。イオンはグループのPB売上高を2倍の2兆円に引き上げるシナリオを描いており、雑貨や日用品ではキャンドゥの調達網や新製品の開発のノウハウを活用する。
キャンドゥの26年11月期の売上高は21年11月実績(731億円)比で7割増の1250億円、営業利益(同9.6億円)を6倍強の62億円に引き上げる。100円ショップは日用品や食品を含めた多彩な商品を品揃えしている。市場規模は20年度に初めて9000億円を突破した。売り場スペースの柔軟性が特徴で、小売り各社から重宝なテナントと見なされてきたが、ここへきて成長性に着目する大手小売りが増えている。
100円ショップ業界では寡占化が進んでいる。ダイソーを運営する非上場の大創産業(広島県東広島市)が年商5262億円(21年2月期)で独走状態。セリア(ジャスダック上場)が2006億円(21年3月期)で2位。キャンドゥの731億円(21年11月期)、ワッツ(東証1部)の507億円(21年8月期)と続く。ここまでが4強。4強の総売り上げのうち、上位2社(ダイソー、セリア)が占める割合は8割に達する。事実上、2強ということだ。
キャンドゥは3位の定位置から抜け出せずにいた。2位のセリアには、「オシャレ度で負け、首位のダイソーには、品揃えで負けている。新型コロナ禍で100円ショップ業界にも衛生用品、消耗品の特需があり、キャンドゥは200円~500円の多様な価格帯の商品をラインナップに加えたが、商業施設の閉鎖が相次ぐなどで、既存店の月次売り上げは前年割れが続いた。21年11月期は業績を下方修正し、減益決算を余儀なくされた」(キャンドゥ幹部)。出店競争が激化し、新規出店に適する地点は年々、少なくなっている。
セブンとイオンの代理戦争
再編の機運が高まるなか、キャンドゥはイオンの傘下に入る道を選んだ。イオングループに入れば、総合スーパー200店舗、食品スーパー、ドラッグストア各2300店舗内に出店の余地ができる。「都心の主要駅近くに、多くの店舗を構えてきたキャンドゥにとって郊外のショッピングモールへの出店は新しいチャレンジになる。コロナ禍でテレワークが普及した結果、都心から郊外に消費の適地が移動したことに機敏に対応できるかが勝負の分かれ目だ」(小売り担当で100円ショップの動向に詳しいアナリスト)。
キャンドゥには難問がある。
「イオンにはキャンドゥの競合相手であるダイソーやセリア、ワッツがすでに出店している。一方、キャンドゥはイオンの最大のライバルであるイトーヨーカ堂にも店を構えている。総合スーパーだけでなく、ドラッグストア、ホームセンターにもキャンドゥの店はあるから、“交通整理”が必要になるかもしれない」
イオンの吉田社長は取引の大きい大創産業、セリアとキャンドゥの棲み分けについて、「キャンドゥの出店を優先させるが、他社を排除するつもりはない。得意分野や立地に応じて両立できる」と説明している。
「大型店にはすでにダイソーが入っていて、それは残す。ダイソーはイオンにとって『家賃』を安定的に確保できる優良なテナントだ。地方のマックスバリュなどに今後、キャンドゥを展開していくのではないか。店舗数を増やすことは、バイイングパワーになるし、顧客データーの収集やマーケティングでも優位性が高まる。イオンにとってキャンドゥは利用価値がある。イオンが自前でやっても儲からない食器や文具などは、キャンドゥに任せ、集約することができる」(前出アナリスト)
イオン=キャンドゥ連合への対抗もあるのだろう。イトーヨーカ堂を傘下に持つセブン&アイ・ホールディングスのコンビニ、セブン-イレブン・ジャパンはダイソーのPB商品の品揃えの強化に動き出した。セブンは8月までにほぼ全店となる約2万1000店でダイソーの商品を販売する専用売り場を設ける。ダイソーの商品を先行導入したエリアでは除菌シートやペーパータオルなど雑貨の売り上げが2割増えるなど成果が挙がったという。
「100均は今後2番手までしか生き残れない」(有力金融筋)と見られている。セブン=ダイソー連合とイオン=キャンドゥの対決を予想する向きもある。100円ショップ業界でも、流通最大手セブンとイオンの代理戦争が繰り広げられることになる。
(文=Business Journal編集部)