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大麻にコロナ予防効果との研究結果…大麻解禁が進む世界、日本では使用規制強化か

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
大麻にコロナ予防効果との研究結果
医療用大麻は解禁すべき?(「Getty Images」より)

 今年1月、科学論文誌「Journal of Natural Products」に、大麻に含まれるカンナビゲロール酸(CBGA)とカンナビジオール酸(CBDA)が、新型コロナウイルスの体内への侵入を阻止する可能性があるとする米オレゴン州立大学の研究チームの論文を掲載。これを受け、「大麻でコロナを予防できる」とのニュースが大きな話題となった。

 大麻によるコロナ予防は、まだまだ研究段階であり、エビデンスに欠けるものと思われるが、近年、医薬品としての大麻利用には関心が集まっている。実際に海外では、大麻から製造された医薬品が承認されている例もある。また、アメリカの一部の州やカナダなど複数の国で嗜好品大麻も合法化となり、大麻ビジネスの成長は加速し、“グリーンラッシュ”と呼ばれ世界の注目が集まっている。そういった海外の大麻事情と比較すると、日本での大麻を取り巻く状況は、あまりにも遅れている。

大麻取締法が阻む治験

 大麻成分のCBD(カンナビジオール) を含有するエピディオレックスは、既存の抗てんかん薬が効かない難治性てんかんの発作抑制効果が高く、アメリカではすでに医薬品として承認されている。日本でもエピディオレックスの治験を進めようと尽力する医師たちがいるにもかかわらず、大麻取締法が治験の開始を阻む現状にある。現行の大麻取締法では、大麻由来の医薬品の使用や輸入、治験を禁止しており、エピディオレックスの治験を行うには法改正が必要となる。

 日本のてんかん患者数は約100万人ともいわれ、そのうち20%は発作コントロールが難しい難治性てんかんであり、エピディオレックスの承認が多くのてんかん患者にとって希望となることは間違いない。

 厚生労働省は「大麻等の薬物対策のあり方検討会」を立ち上げ、そのなかで「大麻由来の医薬品は絶対認めるべき」といった意見も出ているが、今のところ大きな進展はない。厚労省が公開する議事録を見ても、大麻の危険性に重きを置いた議論となっている印象だ。しかし、患者の利益を大優先に考えるのであれば、大麻由来の医薬品について前向きな論議を進めるべきだろう。

HHCを指定薬物に

 厚労省は、危険ドラッグに含まれる6物質を新たに「指定薬物」に加え、令和4年3月17日に施行する運びだ。

<新たに指定された指定薬物の名称>

・物質1 省令名:エチル=2-[1-(5-フルオロペンチル)-1H-インドール-3-カルボキサミド]-3、3-ジメチルブタノアート 通称等:5F-EDMB-PICA 

・物質2 省令名:2-(4-エトキシベンジル)-5-ニトロ-1-[2-(ピロリジン-1-イル)エチル]ベンズイミダゾール 通称等:Etonitazepyne、N-Pyrrolidino Etonitazene 

・物質3 省令名:1、2-ジフェニル-2-(ピロリジン-1-イル)エタン-1-オン 通称等:α-D2PV、A-D2PV 

・物質4 省令名:6a、7、8、10a-テトラヒドロ-6、6、9-トリメチル-3- ヘプチル-6H-ジベンゾ[b、d]ピラン-1-オール 通称等:テトラヒドロカンナビフォロール、Δ9-THCP、THC-Heptyl

・物質5 省令名:6a、7、8、9、10、10a-ヘキサヒドロ-6、6、9-トリメチル-3-ペンチル-6H-ジベンゾ[b、d]ピラン-1- オール 通称等:Hexahydrocannabinol、ヘキサヒドロカンナビノール、HHC 

・物質6 省令名:2-(3-メトキシフェニル)-2-(プロピルアミノ) シクロヘキサノン 通称等:Methoxpropamine、MXPr、3-MeO-2′-oxo-PCPr

 このなかでHHC(ヘキサヒドロカンナビノール)は愛好家の間で高い支持を得ており、これまで合法として販売されてきた。HHCにはTHCに類似した気分を高揚させる効果があり、一部の若者の間では、口コミでブームになっていたようだ。そういった背景を鑑み、規制成分に指定されたという流れだ。

 しかしながら、3月17日の施行を前に、在庫の販売に力を入れる業者もSNS等で散見されており、使用者が急増する恐れもある。

厚労省、大麻使用罪を検討

 現行の大麻取締法24条の2では「大麻使用」について、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、五年以下の懲役に処する」とあるように、大麻の使用についての規制はない。しかし、厚労省は昨年より、使用そのものを規制する「使用罪」を創設するための審議を重ね、法改正が行われる可能性が高い。

 他方、海外では医薬品としてだけでなく嗜好品としても大麻使用を認める国もある。日本人のなかにも、海外で大麻を使用した経験があるという人が少なからずいるだろう。あくまで筆者個人の見解だが、そういった現状を考えると大麻の使用罪を設けるよりも一定の規制下での大麻使用を認めるという検討をしてもよいのではないかと感じる。

 少なくとも、大麻に関しては“ドラッグ”というネガティブな側面だけではなく、医薬品への転用などポジティブな側面についての可能性を論議すべきと思うが、読者諸氏はどう感じるだろうか。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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