新型コロナウイルス・オミクロン株の急激な感染拡大に伴い検査キットが不足している現状を受け厚生労働省は1月24日夜、濃厚接触者に発熱などの症状が出た場合、自治体の判断で、検査を行わなくても医師が感染したと診断することも可能とする方針を明らかにした。
一方で、この時期は例年、ノロウイルスなどを代表とする感染性胃腸炎の患者が増加する傾向にある。実は、オミクロン株への感染によっても胃腸炎と酷似した症状が現れる患者もいるため、医師の正しい診断が期待される。
我々も胃腸炎だと思っていたら実はオミクロン株に感染していたということがないよう、それぞれの症状の特徴について、また、期待が寄せられる新型コロナの経口治療薬についても解説したい。
オミクロン株と胃腸炎の症状の違い
冬はノロウイルスやロタウイルスに代表される感染性胃腸炎が流行する。感染性胃腸炎には、次に示すような特徴がある。
・感染経路:接触、経口感染
・潜伏期間:1~3日
・主な症状:吐き気・嘔吐、下痢、発熱
感染性胃腸炎では、消化器系の初期症状が出ることが特徴でもある。オミクロン株に感染しても無症状の人も多くいるといわれるが、症状が出る場合は、下記のような特徴がある。
・感染経路:接触、飛沫感染
・潜伏期間:約3日
・主な症状:発熱、咳、倦怠感、咽頭痛、吐き気・嘔吐
オミクロン株に感染した場合、発熱、咳に次いで強い咽頭痛が出る人も多い。上気道に初期症状が出た後に、消化器系症状が出る傾向にある。
発熱で慌てない
コロナ禍にあって、発熱があると誰もが不安を感じるとところだが、医療機関を受診すべきかの目安となる体温は37.5度と考えていいだろう。しかしながら、咳や息苦しさなどの症状が伴う場合には、その限りではない。医療機関を受診する際は、必ず事前に電話連絡をし、発熱していることやその他の症状、濃厚接触者であるか否かなどの情報を伝え、指示に従ってほしい。
現在、筆者のもとにも新型コロナの経口治療薬「モルヌピラビル」について多くの問い合わせが寄せられるが、コロナ陽性者すべてに処方できるわけではないことを多くの人に知ってほしい。17 歳以下の小児については、投与の対象になっていない。また、妊婦への投与も禁忌となっている。 通常、18 歳以上の新型コロナに感染し、重症化リスクがある患者に投与が可能である。
ちなみに、重症化リスクとは下記に示すようなものである。
・悪性腫瘍
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
・慢性腎臓病
・2型糖尿病
・高血圧
・脂質異常症
・肥満(BMI 30 以上)
・喫煙
・固形臓器移植後の免疫不全
また、65歳以上の高齢者も投与の対象となる。しかしながら、モルヌピラビルの投与が必要であるか否かは、医師が診察によって判断する。
オミクロン株に感染しても軽症が多いことから、新型コロナの感染症法上の位置付けを「5類」相当に見直すことを望む声も出ているが、現状では上記で解説したような治療薬の処方に制限があり、時期尚早といえるだろう。
我々ができることは、これまでと同様の感染対策の徹底と、感染した際に耐えうる基礎体力をつけ、重症化リスクを下げることだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)