NEW

日本企業は住友電工を手本にすべき…ウクライナ侵攻による世界経済ブロック化に対応

文=真壁昭夫/多摩大学特別招聘教授
日本企業は住友電工を手本にすべき…ウクライナ侵攻による世界経済ブロック化に対応の画像1
住友電工のHPより

 自動車用のワイヤーハーネス(電源供給や信号通信に使われる複数の電線を束にした部品)の世界トップメーカーである住友電気工業が、ウクライナで行ってきたワイヤーハーネスなどの生産を、ルーマニアとモロッコに移管すると報じられた。生産移管コストの一部は顧客である独フォルクスワーゲン(VW)が負担するようだ。住友電工のウクライナ危機への対応は、世界の自動車部品メーカーのなかでも早いといえる。同社の経営陣はウクライナ危機によって世界経済がグローバル化からブロック化に向かい始め、供給制約などの逆風が強まると危機感を高めている。ウクライナ危機は住友電工など世界の企業にとって“ゲームチェンジャー”だ。

 今後の注目点は、住友電工がどのようにして事業ポートフォリオの多角化を進め、より安定した事業運営体制を構築するかだ。当面、収益の柱である自動車事業の収益減少懸念は高まる。同社経営陣はコスト削減を徹底しつつ、成長期待の高い分野での設備投資をこれまで以上に積みまして組織全体が集中して取組むべき分野を明示しなければならない。ウクライナからの迅速な生産移管は、自己変革を加速させなければならないという経営陣の覚悟の裏返しに見える。

自動車部品需要の獲得を目指した海外進出

 1990年代の初頭以降、世界経済のグローバル化が加速した。そのなかで住友電工は生産コストのより低い地域での事業運営体制を強化し、ワイヤーハーネスなど自動車部品の需要をより効率的に獲得した。その結果、自動車事業は住友電工の売上高と営業利益の50%以上を占める稼ぎ頭に成長した。その背景には、以下のような世界経済の変化が大きく影響している。

 まず、グローバル化によって各国の国境は低下し、国境を跨いだヒト・モノ・カネの流れが活発化した。ウクライナなどかつて社会主義体制をとった国は、政治や経済運営上の不安定な部分を抱えつつも米国を中心とする自由資本主義陣営との関係が強まり、安価な労働力や豊富なエネルギー、鉱山資源、小麦などの供給地としての役割を担うようになった。特に、ウクライナはハンガリーやポーランド、チェコなどの東欧諸国とともに、ドイツやフランスなどへの自動車部品の供給地として役割を発揮した。

 海外での事業運営体制の強化によって、住友電工の海外売上高比率は上昇した。2004年度末の時点で同社の海外売上高比率は30%に達した。2021年3月期には57.3%に上昇した。同社の関係会社の約75%は海外にある。欧州で住友電工は、自動車部品需要を獲得する取り組みの一つとしてウクライナで生産を行った。それによって同社は世界の自動車メーカーとの関係を強化しつつ海外売上高比率を伸ばし、円高への抵抗力と事業運営の効率性向上を実現した。日独などの自動車メーカーにとって住友電工からの迅速かつ確実な部品納入体制の強化は、世界の自動車需要を効率的に獲得するために欠かせない要素だった。

RANKING

5:30更新
  • 企業・業界
  • ビジネス
  • 総合