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日産、驚異的な次世代安全運転支援技術を開発…300m先の障害物を高精度に把握

文=木下隆之/レーシングドライバー
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日産、驚異的な次世代安全運転支援技術を開発

 安全運転支援技術が進化しつつある。

 自動車の動力源がすべて電気モーターに代わるのは、それがたとえ理想の形だとしても、しばらく時間がかかる。そもそも電気自動車(EV)への盲目的な信仰にも異論・反論がある。だが、「死亡事故ゼロ」という理想的な社会を否定する勢力はない。だから各社例外なく開発を進めているのは、安全運転支援技術である。

プロパイロット」で自動運転の「レベル3」を実現してみせた日産自動車が今回、次世代の安全運転支援技術を公開した。

 体験走行が許されたのは、日産のテストコース。会場となった神奈川県・追浜にある日産グランドライブには、数々の障害物や市街地を想定した架空の街が再現されており、これまでは困難だった緊急回避や自動運転のデモンストレーションが行われたのだ。

 最初の驚きは、たて続けに遭遇する障害物に対して正しく緊急回避したケースである。走行中、死角からクルマが飛び出してきた。それに対して正確に素早く、クルマは自動で対向車線に回避。だが対向車にダミー人形が飛び出してきた。それに対しては急ブレーキで回避、障害物の手前で緊急停止したのである。危険がたて続けに迫ってくるケースは、リアルワールドでも起こりうる。

日産、驚異的な次世代安全運転支援技術を開発…300m先の障害物を高精度に把握の画像2

 ケース2は、もっと複雑だった。視界を遮るミニバンの背後を走行中、ミニバンが急旋回、すると正面からタイヤが転がってくる。だが、それをも回避。さらにその先の路地からクルマが飛び出してくるといった、二重三重の危険に対しても反応してみせたのである。

 3次元での空間認識性能も高まったという。対向車線のクルマが跳ね飛ばしたドラム缶が、宙を舞いながら飛んでくる。そんな3次元の障害物に対しても反応したのだ。きわめて稀なケースだとはいえ、リアルワールドで起こらない保証はない。今回は映像のみの発表だったが、空間認識の精度が高まりつつあるのは確かだ。

 これらを可能にしているのは、特に「LiDAR(ライダー)」の進化による部分が多い。レーザーを照射して跳ね返ってくる時間と距離から物体の形と方角を認識する次世代ライダーは、圧倒的に性能が高い。3次元スキャンで再現したかのように正確に環境が把握できるようになった。

日産、驚異的な次世代安全運転支援技術を開発…300m先の障害物を高精度に把握の画像3

 精度の高さも際立っている。これまでは認識できなかった小さな障害物、たとえばトラックの荷台から転げ落ちた建設資材といった障害物も認識した。路面に低く横たわる高さ10cmほどのパレットも認識、回避してみせた。

 認識の距離が伸びたのも特徴である。前方の障害物検知は、これまでもなくはなかった。前方に停止している障害物を緊急回避することも可能だった。だが次世代ライダーは、これまでより遠くの300m手前から認識することが可能になった。これによって、はるか手前から余裕を持って車線変更できる。咄嗟のステア回避ではなく、穏やかなレーンチェンジである。

 市街地を模したコースでも、次世代ライダーの優秀性が確認できている。交差点を安全に旋回するのは予想内だが、マンションのエントランスを模したその場所でピタリと停止してみせた。これまではマンションの前の路上にしか反応しなかったのに対して、より詳細かつ正確にクルマを導くことが可能になっている。将来的には無人車が荷物を配達してくれるようになるだろう。

 安全運転支援技術と自動運転は極めて近い技術ではあるものの、法的にも責任論的にも大きな隔たりがある。だが、今回日産が公開した次世代安全運転支援技術は、その隔たりを埋めてくれそうなレベルにいた。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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