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スバル初本格BEV・ソルテラ、トヨタ・bZ4Xとどう違う?スバルの密かなこだわり

文=木下隆之/レーシングドライバー
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スバル・ソルテラ、トヨタ・bZ4Xとどこが違うのか
スバル・ソルテラ

 スバル初の本格的BEV(バッテリー・エレクトリック・ヴィークル)「ソルテラ」は、トヨタ自動車との共同開発モデルである。つまり、トヨタ「bZ4X」とは一卵性双生児の関係にある。

 総電力量71.4kWhの大容量バッテリーを搭載し、航続可能距離が約500kmを超えるなど、これまでの国産BEVトップとなるEV性能を誇る点も、bZ4Xと共通している。そのバッテリーパックを床下に低く薄く搭載し、2WDと4WDをラインナップする点も同じだ。2WDではフロントに積む160kWの電気モーターが前輪を駆動し、4WDではそれが2分割され前後に搭載、80kWずつで4輪駆動する点にも違いはない。

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 ボディシェルも共用している。形式的にはミドルサイズSUVである。スバルでいえば「フォレスター」に近い。トヨタならば「RAV4」とほぼ同じサイズである。全体的なシルエットはRAV4に似ている。フォレスターとは路線が異なる。

 これらのことから、開発の主導はトヨタにあったのではないかと推測する。そもそもトヨタは、「プリウス」製造から電気モーターへの知見を積み重ねてきた。2021年末の“トヨタEV戦略大発表”が証明するように、さまざまなEVモデルの開発が水面化で進んでいる。ともすればソルテラはbZ4Xのリバッジ、すなわちエンブレムを付け替えただけのOEM供給モデルではないかといった、うがった見方をしてしまうのも道理である。

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 だが実際には、トヨタとスバルが対等の関係で開発を進めたという。スバルのエンジニアがトヨタに出向し、群馬を離れ愛知県に常駐する構成でソルテラは開発されたのである。

 だからスバル流の味付けが、そこかしこに確認できる。加速フィールは低回転からトルクフルであり、内燃機関では得られないレスポンスと力強さが味わえる。

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 ハンドリングにも違いがある。今回の試乗は、ソルテラがスノーロードで、bZ4Xがターマックのサーキットだったという環境の違いがあり、厳密な差異の検証はままならなかったが、ソルテラはすっきりとしたハンドリングに思えた。旋回性も際立っており、走りの香りが色濃く漂う。

 ドライブモードには、bZ4Xにはないパワーモードが組み込まれている。スロットルに対して、よりダイレクトにパワーが漲るように細工されている。ステアリングポストのパドルは、回生ブレーキ力をコントロールするためのもので、好みの減速Gのチョイスが可能だ。ワインディングをリズミカルにドライブするには都合がいい。そのパトルシステムもbZ4Xにはない装備である。

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 bZ4Xは近い将来に、ステアバイワイアーの操舵システムが加わる予定だ。航空機の操縦桿のようなステアリングに代わる。ステアリングギア比はバリアブルで、たとえば狭い駐車場での車庫入れ等でもステアリングを持ち替える必要がない。それでいて一般走行では穏やかな切れ味に徹する。トヨタはそんなシステムが認可待ちの状態だが、リアルなステア特性を好むスバルは採用を見送る。このように、ドライビングプレジャーに直結する部分においては、スバルは独自の路線を突き進むのである。

 エクステリアを一見すると、ソルテラとbZ4Xの違いほとんどないように思える。フロントにスバルのアイデンティティである6角形グリルが描かれており、前後のデイライトはスバル統一のコの字型にした程度だ。つまり、bZ4Xのリバッジに近い。

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 だが、風の流れを整流するホールは、スバルが「BRZ」で採用したウロコ形状になっているなど、詳細に観察すると違いが確認できる。

 その主張が、充電ポートのカバーから想像できる。トヨタbZ4Xは「ELECTRIC」の文字が貼られているのに対して、スバルソルテラは「EV」である。この細やかな点に、スバルエンジニアの強いこだわりが滲み出ている。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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