ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal

ゴールデンウィーク中、東京新聞、共同通信、朝日新聞などいくつかのメディアが、「桜を見る会」の前夜に安倍晋三元首相の後援会が都内ホテルで催した夕食会の費用の一部を、安倍氏側が補填していた問題に関して、安倍氏の当時の秘書2人が検察の取り調べを受けて作成された供述調書の内容を報じた。政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、有罪が確定した配川博之・元公設第一秘書の刑事裁判の記録を、記者が閲覧して明らかにしたものだ。
検察の“配慮”を感じる略式起訴
この事件に関し、国会で追及された安倍氏は、費用補填や政治資金収支報告書への不記載などについて、一貫して否認。費用を支払ったのは「あくまで個々の参加者」と繰り返した。ところが、弁護士有志らの告発を受けた東京地検特捜部の捜査で、安倍氏の事務所が保管していた金で費用補填が行われていたことが明らかになった。
地検は配川氏を略式起訴したが、安倍氏は不起訴とした。安倍氏はそれまでの発言を訂正し、謝罪。東京簡裁は20年12月14日、配川氏に罰金100万円の略式命令を出し、配川氏は罰金を即日納付している。安倍氏の不起訴については、東京第一検察審査会が「不当」とする議決をしたが、特捜部は再捜査の後、昨年12月に再び不起訴とし、刑事事件としては終了した。
配川氏の有罪認定を行い、刑罰を決めた「略式手続き」は、通常の裁判と異なり、法廷での公開審理を行わず、書面のみで、判決に当たる決定を下す。比較的軽微な犯罪について、被告人が同意している場合に行われ、略式命令の後でも不満があれば正式裁判を申し立てることができるが、配川氏の件ではそのような申し立てもなく、確定している。
通常の裁判が行われていれば、ジャーナリストは裁判を傍聴し、被告人の主張や検察側がどのような証拠を提出したのかなどを取材することも可能だ。しかし、略式起訴となると、それができない。
略式起訴された事件のなかにも、国民の関心が高く、公人としての資質が問われた重要なものもある。
新聞記者との賭けマージャンが問題となった黒川弘務・元東京高検検事長の賭博事件。秘書が選挙区内の有権者に香典などを渡していたことが問題となった菅原一秀元経済産業大臣の公職選挙法違反事件。2019年の参院選を巡る大規模買収事件で、実刑が確定している河井克行・元法相サイドから現金を受領した広島県議ら25人……。