ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 吉野家、肉量が減ってる?
NEW
重盛高雄「謎解き?外食が100倍面白くなる話」

吉野家、肉量が減ってる、ご飯が露出しないよう肉広げ…店舗に現れ始めた危険な兆候

重盛高雄/フードアナリスト
吉野家、肉量が減ってる、ご飯が露出しないよう肉広げ…店舗に現れ始めた危険な兆候の画像1
吉野家の店舗

「最近の吉野家はちょっとおかしい?」と感じた消費者は少なくないだろう。吉野家の業績は、3月の客数は前年同月比107.2%(全店)と大幅に伸長し、4月も同108.6%と好調を維持している。1月は同98.5%、2月は同101.4%であったことから、3月まで実施していた魁!!吉野家塾や呪術廻戦コラボが大きく集客に寄与したと想定される。特定の日(29日)を除き1日1米札(マイル)を付与するというキャンペーンも、客の来店意欲を増大させたのではないだろうか。

 その一方で不祥事が発生した。ひとつはキャンペーンに起因するもので、もうひとつは取締役の社外講演における発言に起因するものである。前者は会社としての判断ミスであり、後者は取締役個人の資質が要因だが、吉野家がトカゲのしっぽ切りのように事態の収束を急いだのはなぜだろうか。

 一連の吉野家の不祥事の原因をめぐっては、同社のヘッドハンティングにあるのではないかという指摘も出ている。ヘッドハンティングにより採用された人材が、外部からの登用ゆえに新しい発想や着眼によりゼロから新しい価値を創造してくれるなら、会社だけでなく消費者にとってもプラスになるが、そのような結果にならないケースも多い。ヘッドハントされた人はしょせん外部登用(外様)であり、在籍する企業とのつながりはお金と地位(権力)。ゆえに社員やお客との距離は近くはない。

 今回、早稲田大学の社会人向け講座で問題発言をした伊東正明氏はマーケティングを担当する常務取締役だったが(すでに解任)、ここ最近の吉野家が展開する他業種とのコラボなどに新奇性はまったくなく、この程度のアイデアが重用されてしまうのは、経営サイドの創造力が充足していないことの証左ともいえる。

 お客のニーズやウォンツは販売現場である店舗が一番熟知している。お客や現場の意見を積極的に取り入れ、施策を実行することができていれば、ヘッドハンティングなどに無駄な費用をかけず、より効果的な戦略を練ることができたのではないだろうか。そう考える吉野家ファンは少なくないだろう。

「アタマの大盛り」を注文する客の多さ

 吉野家の客単価の伸びは、他社に比べて決して高くはない。店舗内で気づくのは「アタマの大盛り」(肉が大盛、ご飯は並盛のサイズ)を注文する客の多さだが、並盛は肉の量が減っている。盛り付けの場面でも、盛った後に肉を減らしたり、肉をピンセットのようなもので広げてご飯が露出しないように工夫している様子が見られる。これでは、キャンペーンで半額券や無料券を配布する代わりに肉を減らしているのではないかと疑われても仕方ない。

 並盛に満足できない客が、アタマの大盛りにシフトしてくれるだけで426円(並盛・税込み/以下同)から547円と客単価は28%増える。たとえば筆者が普段利用している有楽町店では、盛り付ける担当者によって工夫が顕著に現れる。筆者は、盛り付け担当者が特定の男性である場合、利用は控えるようにしている。

 さまざまな問題が顕在化しても、まだ多くの客が利用しているようだが、昼食時間帯以外では席数に空きが目立ってきている印象を受け、吉野家の企業としての姿勢が問われているのではないかと感じる。過日の価格改定(値上げ)のときよりも客は減ったとも感じられる。

 コロナ禍における各種宣言が解除され数カ月が経過し、営業時間も徐々にではあるが通常に戻りつつある。新しい生活様式が浸透し、中食の売上は引き続き拡大している。スーパー各社では冷凍食品の棚が目に見えて増えているが、それでも外食に求められる役割は大きいゆえに、外食業界は消費者からの信頼に応える産業であり続けてほしいと強く願っている。

(文=重盛高雄/フードアナリスト)

重盛高雄/フードアナリスト

重盛高雄/フードアナリスト

ファストフード、外食産業に詳しいフードアナリストとしてニュース番組、雑誌等に出演多数。2017年はThe Economist誌(英国)に日本のファストフードに詳しいフードアナリストとしてインタビューを受ける。他にもBSスカパー「モノクラーベ」にて王将対決、牛丼チェーン対決にご意見番として出演。最近はファストフードを中心にwebニュース媒体において経営・ビジネスの観点からコラムの執筆を行っている。
フードアナリスト・プロモーション株式会社 重盛高雄プロフィール

吉野家、肉量が減ってる、ご飯が露出しないよう肉広げ…店舗に現れ始めた危険な兆候のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!