動画サイトの人気ジャンル「ゆっくり茶番劇」の商標権がYouTuberによって取得され、商標の使用に「年間10万円」が必要になると発表されたことで大きな騒動になっている。
「ゆっくり茶番劇」とは、人気シューティングゲームを中心にした上海アリス幻樂団による同人作品群「東方Project」から派生した二次創作。デフォルメされた人気キャラの霧雨魔理沙(きりさめ まりさ)と博麗霊夢(はくれい れいむ)が、テキスト読み上げソフトによる音声で寸劇を繰り広げるものだ。
「ゆっくり」の由来は巨大掲示板「2ちゃんねる(現5ちゃんねる)」のアスキーアートとされるが、元2ちゃんねる管理人・ひろゆきは自身のTwitterで「おいらの記憶だと、自作の霊夢の絵で『ゆっくりしていってね』という台詞をつけたホームページがあって、その絵がオモロいと広まった気がします」と説明している。
おいらの記憶だと、自作の霊夢の絵で「ゆっくりしていってね」という台詞をつけたホームページがあって、その絵がオモロいと広まった気がします。
— ひろゆき@ゆっくり茶番劇 (@hirox246) May 15, 2022
自分のページに長く滞在して貰いたいので「ゆっくりしていってね」と。
下記のサイトだとセリフの説明がつかないんですよね。https://t.co/6KgNFlZlWF
東方Projectの原作者であるZUN氏らが使用を容認していることから「ガイドラインを守れば誰でも使える」とされ、YouTubeやニコニコ動画を中心に一大ジャンルとなっていた。
ところが、ゆっくり系動画の投稿者だった柚葉氏が今月15日に自身のTwitterで「この度、当社は『ゆっくり茶番劇』商標権を取得いたしました」と突然発表。YouTube動画やホームページ上で詳細を告知し、「法人・個人を問わず『ゆっくり茶番劇』商標を商用使用(1円でも利益の出る使用)する場合は、当社とのライセンス契約が必要です」などと呼びかけたことで大きな波紋を呼ぶことになった。
#ゆっくり茶番 投稿者各位
— 柚葉 / Yuzuha【祝!ゆっくり茶番劇 商標登録】 (@Yuzuha_YouTube) May 14, 2022
この度、当社は「ゆっくり茶番劇」商標権を取得いたしました。
⚠️今後、当該商標をご利用頂く場合はライセンス契約が必要となる場合が御座います。
✅詳細は下記URL「商標使用に関する要網(ガイドライン)」動画版をご確認下さい。
▼YouTube▼https://t.co/U0D1FbSAxJ pic.twitter.com/yvU1k4T50y
柚葉氏によると、商標の使用料は年間で10万円(税別)。広告料が発生するYouTubeの「ゆっくり茶番劇」動画などは商用使用にあたるとみられるため、ネット上では「ジャンルが潰れる」「なぜ急に有料になるんだ」「茶番だけでなく、ゆっくり解説とかも類似だから影響しそう」といった声が飛び交うなど大混乱となった。
柚葉氏は東方Projectの関係者でもアスキーアートの制作者でもなく「一般のゆっくり系動画の投稿者」とみられることから、「なんの権限があって商標を取得したのか」といった批判コメントも続出。同日に署名サイト「Change.org」で商標登録の撤回を求める署名活動が開始され、16日時点で2万5000筆以上が集まる事態になっている。
これを受けて、ZUN氏は自身のTwitterで「ゆっくり茶番劇の話は耳に入りましたよー。法律に詳しい方に確認しますね」と反応。ニコニコ代表の栗田穣崇氏は「ニコニコの投稿者にどのような影響があるのか週明けに法務部に確認します」「ニコニコから公式に見解を出す必要があるのか、何かニコニコとしての対応が必要なのかについては法務確認を持って判断します」とコメントしている。
ゆっくり茶番劇の話は耳に入りましたよー。
— 博麗神主 (@korindo) May 15, 2022
法律に詳しい方に確認しますね。
「ゆっくり茶番劇」が商標登録されたことで、ニコニコの投稿者にどのような影響があるのか週明けに法務部に確認します。
— くりたしげたか(Re)?ニコニコ代表の人 (@sigekun) May 15, 2022
ニコニコから公式に見解を出す必要があるのか、何かニコニコとしての対応が必要なのかについては法務確認を持って判断します。
さらに、柚葉氏が所属するライバーコミュニティ「Coyu.Live」は「弊会所属ライバー『柚葉』(登録名:たまゆら)につきましては、所属規約および所属契約への違反が認められましたので、総合的に判断いたしました結果、本日付にて警告処分といたしました」と発表した。
ただし、柚葉氏は「商標『ゆっくり茶番劇』は『文字商標』です。文字表記に対して効力が及びます」と強調。「ゆっくり茶番劇」という表記を使わなければ動画投稿において特に問題はないとの見方もあり、ネット上では「目的がよくわからなくて怖い」「炎上商法なのでは」といった指摘があがっている。
ネット上では過去にもたびたび「商標問題」が起きており、2002年にはタカラ(現タカラトミー)が2ちゃんねるのアスキーアート「ギコ猫」の商標登録を出願し、ユーザーの猛反発を受けて取り下げる事態に。05年には、アスキーアート「モナー」をモチーフにした「のまネコ」の商標などをめぐって騒動が発生したことがあった。