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第2のマレリか…なぜ日産系の部品メーカーで経営危機が相次いでいるのか?

文=Business Journal編集部
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マレリのHPより

 日産自動車などにドアの内装部品を納入する河西工業(東証プライム上場)に経営危機説が流れている。5月中旬、東京株式市場で同社の株価は10年来の安値の233円まで下げた。河西工業は25年3月期まで3年間の中期経営計画(中計)を策定。生産能力の最適化や間接部門の削減などにより、25年3月期に売上高は1810億円、営業利益65億円、純利益50億円を目指すとした。しかし、市場は中期経営計画の達成に懐疑的な見方をしている。

 自動車のドアや天井などを米英で現地生産している。中計では25年3月期までに日本と米国で計3工場を閉鎖する。主要取引先の日産自動車の生産台数の落ち込みで生産能力が過剰になっていた。米国ではドアトリム(室内側のドアの内張り部品)など内装部品を生産している。5つの工場のうち米南部ミシシッピー州の工場を閉める。同工場の生産はテネシー州の工場へ移す。加工費の高い部品の生産をメキシコに移管し、生産体制を見直す。

 国内でつくってきた内装品の生産を人件費の安いタイやインドネシアにシフトする。関東では神奈川県寒川町と群馬県大田市、明和町、埼玉県寄居町の4つの生産拠点を持つ。九州には大分県宇佐市と福岡県苅田町に3拠点ある。各地域で工場を1つずつ減らす計画だ。

 業績は厳しさを増している。21年3月期の連結売上高は1528億円、最終損益は170億円の赤字。会計基準を変更した22年3月期の売上高は1474億円、北米子会社の株式評価損136億円を特別損失として計上したため、最終損益は190億円の赤字。2期連続の赤字に陥った。

 19年3月期末に615億円あった自己資本は、22年3月期末には315億円と半減。有利子負債の増大もあって、4割超あった自己資本比率は15.6%に急降下した。「融資を受ける際に金融機関との間で交わした財務制限条項に抵触したとみられている」(金融筋)。

 売上高の5割近くを占める日産の生産が落ち込んでいることから拠点を閉鎖し、23年3月期の最終損益をトントンにまで回復させたいとしている。5月に公表した23年3月期の業績予想では、連結売上高は1800億円(22年3月期比22.1%増)、営業利益は12億円の黒字の見通しだが、ロシアによるウクライナの侵攻の長期化、米国の利上げに伴う世界経済の減速懸念が強まっており、先行きは予断を許さない。

「曙ブレーキ工業、サンデン、マレリホールディングスに続き、自動車部品大手のADR(裁判外紛争解決手続き)の申請があるのではないか」と信用調査会社など専門家は予測している。

マレリHDが事業再生ADRを申請

 日産を主力納入先とする自動車部品大手マレリ(旧カルソニックカンセイ)が今年3月、私的整理のひとつである事業再生ADRを申請した。事業を継続しながら金融機関に債権放棄を要請し、新しい支援者の下で経営再建を目指すことになるが、負債総額は1兆1000億円規模と自動車部品業界では過去最大級だ。

 マレリの前身は日産の部品子会社カルソニックカンセイ。日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が1999年に掲げたリバイバルプランで系列の部品会社に対して資本関係の解消が断行された。カルソニックカンセイは2017年、米投資会社KKRに買収され、19年にイタリアのマニエッテイ・マレリと経営統合し、現在の社名となった。

 ゴーン会長(当時)は18年11月、巨額の報酬を隠蔽した容疑で逮捕され、日産は深刻な販売不振に陥った。新型コロナウイルスの影響による需要減や生産の停滞が続き、マレリは欧州での工場のリストラで後手に回ったことも重なり、経営危機に直面した。マレリの事実上の破綻ともいえるADRの申請は、日産向けを主力とする部品メーカーに衝撃を与えた。

 日産系の部品大手の経営者は「日産以外との取引を増やしたいのが本音だが、販路の開拓が間に合わない。“売る力”が落ちている日産に頼るしかない」と苦渋の選択を語っている。日産向けを主力とする部品会社から、「第2のマレリ」が出ると囁かれているのには理由があるのだ。

 マレリHDは5月末に開いた債権者会議で、KKRを支援企業とする再建案を説明。4500億円の債権カットを求めた。しかし、スポンサー候補だったインド企業のサンバルダナ・マザーソン・グループが脱落した結果、KKRの出資額は大幅に減る。再建への道筋は見えてこない。

「マレリの経営に失敗したKKRがどうやって再建させるのか。KKRが経営責任を明確にするのが先ではないか」といった声が金融関係者から出ている。だが、KKR以外にスポンサーのなり手がいないのが現実との冷めた見方が多い。6月中に関係のある全26行の同意を取り付け、再建計画を決定したいとしているが、マレリ自体が赤字体質から脱出できておらず、強い逆風の中にある。

 再建案ではKKRが6億5000万ドル(約830億円)の第三者割当増資を引き受ける。債権額のカット率を42%として、金額にして4500億円の債権放棄を求めることを金融機関に伝えた。これを受けて、みずほフィナンシャルグループは5月末、子会社のみずほ銀行のマレリへの貸出金など3885億円について、「取り立て不能または取り立て遅延の恐れが生じた」と発表した。

 マレリの再建案には国内外で3000人を削減する大規模リストラが含まれている。ドイツなど欧州を中心に生産拠点を閉鎖するが、欧州では労働組合の意向を尊重しなければ、ことが運ばない。

(文=Business Journal編集部)

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