分散型エネルギーの鍵は「蓄電池のマネジメント能力」にあり。需要併設型蓄電池が支える、エネルギーの未来
災害時には建物内での生活維持を支援する「防災インフラ」として、平常時には電力を蓄え、電力市場に価値を提供する「調整力」として──蓄電池の役割は、今、大きく変わろうとしています。
レジル株式会社では、災害時には、マンションに併設された蓄電池からエレベーターや水道ポンプへ電力を供給する「マンション防災サービス」を提供。平常時、つまり“災害が発生していないタイミング”には、蓄電池に蓄えられた電気を需要家の消費や電力市場に供給し、コスト削減や収益に還元しています。
実はこの「マンション防災サービス」。AIによる最適制御によって蓄電池の価値を最大化する高度な技術を持つスタートアップ、株式会社Sassorに支えられています。
今回は、株式会社Sassorの代表取締役、石橋秀一氏を迎え、レジル株式会社のエネルギーマネジメント事業本部 事業開発グループ ジェネラルマネージャー、安藤圭祐氏とエネルギーマネジメント事業本部 事業開発グループ、伊藤慎吾氏が、Sassor社の持つ技術力や展望にせまります。

レジル×Sassorの共創で実現、蓄電池を活用したマンション防災サービス

レジル 伊藤:蓄電池を利用したレジルのマンション防災サービスで協働させていただくきっかけとなったのは、2022年度に経済産業省で行われた実証事業がきっかけですね。
Sassor社は電気のシステムに精通していて専門的な知識もあり、技術的な意思疎通もスムーズで、パートナーとして非常に心強かったです。現在はマンションやビルなど、電力需要家に設置される蓄電池である「需要併設型蓄電池」※1 の制御最適化の部分で一緒に取り組ませていただいていますが、まずはSassor社のサービスについて教えてください。
Sassor 石橋:弊社は蓄電池における充電や放電※2 を制御するAIソリューションを開発、提供しています。需要家側の消費量や発電量を予測し、最も経済性が高いタイミングを分析し、その結果に基づいて充電や放電を制御します。
レジル社のマンション防災サービスにおいてもこのソリューションを活用しており、同じソリューションをさまざまな種類の蓄電池向けに提供しているのが『ENES』というサービスです。
レジル 伊藤:『ENES』は市場価格や電力の取引制度に合わせて、最適化する仕組みになっているのですよね?
Sassor 石橋:そうですね。住宅用の蓄電池では、FIT制度※3 が適用されている場合、電力使用量を予測し、日中時間帯に太陽光の電力を市場に売却して、収益を高められるように、蓄電池の充電/放電タイミングを最適化します。FIT制度の満了後やFIT制度を活用していないご家庭は、太陽光で充電した電力を夜間に放電し、自家消費量を増やすことで電気代を削減します。このような運用方法を最適化するのが、SassorのAIソリューションです。

※1 需要併設型蓄電池:家庭や施設など、電力需要家の施設に設置された蓄電池のこと。
※2 放電:蓄電池などから電気を放出すること。蓄電池は、電力系統の安定化を図るため、発電量が余ったときに電力を蓄え、必要なときに放電をする。
※3 FIT制度:再エネ特措法に基づき実施されている再生可能エネルギーの固定価格買取制度。太陽光や風力など、再生可能エネルギーで発電した電気を、電気事業者が一定の価格で買い取ることを国が約束する制度で買取期間は太陽光発電の出力、買取価格は認定年度ごとに異なる。これらの買取にかかる費用は、再エネ賦課金として、電気使用者が使用量に応じて支払っている。
需要併設型蓄電池の複雑さに見るSassor社のすごさ
レジル 安藤:電力の市場取引や関連する制度まわりの知識が豊富ということもさることながら、制約の多い需要併設型の蓄電池に対してフレキシブルに対応できるという面も、Sassor社の大きなアドバンテージであると感じます。需要併設型蓄電池は、充電と放電のタイミングを図るための分析に必要な項目が、非常に多岐に渡るためです。

Sassor 石橋:レジルのマンション防災サービスのように、実際に電気を使用する需要家に蓄電池が併設されている場合、最もコストをかけずに充電できるタイミングと、需要家が電気を使うタイミングを予測して充電と放電を制御します。これに加えて、太陽光パネルが併設されている場合は、天候や過去のデータなどから発電量の予測も必要になります。需給調整市場などに調整力を提供する場合は、市場入札価格を過去の実績値などから予測して入札します。
レジル 安藤:マンションや一般家庭の場合、朝に活動がスタートしたタイミングと、帰宅してからの夜間に電力使用量が多くなります。蓄電池の充放電を効率的に行うためには、この電力需要のカーブを正確に予測できなければいけません。これに加えて、不安定性のある太陽光発電の予測も組み合わせつつ、マンション特有の充放電制約のもと、各種市場取引の最適化を組み合わせられる点がSassor社のすごさですね。
Sassor 石橋:市場での取引価格は前日までに分析する必要がある一方で、充電によるマンションの契約電力の更新を防ぐため、電力使用量はリアルタイムでの分析が求められます。それらをすべて踏まえた上で、制御の指示を出します。需要併設型蓄電池の制御は、非常に複雑で一筋縄ではいかない。それがこの領域の最大の難しさでもあります。

分散型エネルギーシステムの要として ー レジルとSassorの次なる展望
Sassor 石橋:系統用蓄電池や発電所併設型蓄電池は、分析や制御が需要併設型蓄電池に比べてシンプルなため他社の参入も多く、市場として盛り上がっているという印象です。こういった市場に対して、システムを提供する企業も多くなるため、どうしても価格競争を招くことになります。
需要併設型蓄電池においては、現状は弊社が技術的な差別化ができている状態だと考えています。VPPや需給調整市場などの登場により、これからも伸びていく市場だと考えているので、今後もアドバンテージを発揮していけるよう、システムの改善に努めていきたいですね。
レジル 安藤:我々としても今後、マンション防災サービスを拡張させていく予定です。
マンション防災サービスは、実は住民の方々の災害対策や日々の電気使用のみで完結しているものではありません。このサービスが拡大することで、レジルの「蓄電池による調整力」が各地に置かれている状態になるのです。
太陽光や蓄電池による調整力の提供を増やせることによって、再生可能エネルギーのコストを下げたり、環境価値の高い電気をお客さまに提供できたり、ということが可能になり長い目で見ると調整力を増やすことで得られた価値を多くの人に還元できるサービスになると考えています。
Sassor 石橋:そうですね。マンション防災サービスや需要併設型蓄電池については、レジル社とSassor社で多くの議論を重ねて今に至っています。
今後もともにサービスやシステムのアップデートに取り組んでいきたいですね。それが結果的に、日本で一番高機能な調整のシステムやサービスに成長していくことにつながると考えています。

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レジル社とSassor社の協働が目指すのは、防災だけでなく、収益性や持続可能性といった複数の価値の実現です。需要併設型蓄電池の複雑な制御に挑み、エネルギーの最適活用を追求することは、再生可能エネルギーに新たな価値付けをもたらすのではないでしょうか。上手に蓄えて使いこなす。エネルギーに対するそんなアクションが当たり前になる未来が、すでに動き出しています。
※本稿はPR記事です。