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『元彼の遺言状』が超低空飛行…綾瀬はるかは小説原作と相性が悪い?

文=上杉純也/フリーライター
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『元彼の遺言状』が超低空飛行
『元彼の遺言状』公式サイトより

 人気女優・綾瀬はるかが大ピンチだ。綾瀬といえば、これまで主演クラス(=3番手以内)として起用された連続ドラマで、数々の高視聴率を叩き出してきた。

 主演作であれば『きょうは会社休みます。』(日本テレビ系)の平均視聴率16.0%(ビデオリサーチ調べ・関東地区・世帯/以下同)、『義母と娘のブルース』(TBS系)の14.2%、ヒロイン役なら『JIN-仁-完結編』(TBS系)の21.3%、『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系・04年7月クール)の16.0%など、いずれも話題作ばかり。

 だが、ここにきて最新主演作となる月9ドラマ『元彼の遺言状』(フジテレビ系)が、まさかの苦戦。初回こそ12.1%と、まずまずの数字だったが、4話目から1桁台に転落し、以降、一度も2桁に乗ることなく低空飛行を続けている。

 視聴率女優・綾瀬はるかのまさかの“失敗作”となったワケだが、実は過去に綾瀬をもってしても数字が伸び悩んだ連ドラがある。今回は、彼女が務めた主演クラスの作品のなかで、視聴率ワースト3となってしまった作品をご紹介したい。但し、2019年のNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』は第1部と第2部で主人公が変わるリレー形式だったことや、途中で登場しない回もあるため対象外とした。

『鹿男あをによし』(フジテレビ系)

 まずはワースト3位から。平均9.9%と、わずかに2桁に届かなかった『鹿男あをによし』(フジテレビ系)である。小説家・万城目学の同名ファンタジー小説が原作で、2007年夏には第137回直木賞の候補にもなった。奈良県にある奈良女学館高校に赴任した教師・小川孝信(原作では本名不明で“おれ”とだけ表記されている)が奈良公園の鹿に命を受け、日本の滅亡を防ぐために奮闘する物語で、主人公を玉木宏が、その一番重要な相棒である同僚の教師・藤原道子を綾瀬はるかが演じた。

 本作を最後まで観た人からは「面白い」「凄い」など、その完成度を絶賛する声が多々挙がり、なかには「原作より面白い」という人もいるが、最初の段階の“設定”についていけなかった人もいたようで、それが敗因となった可能性が高い。

 神話と民話が混ざったようなストーリーが、とにかく摩訶不思議な世界観を醸し出しているのだが、これがダメな人はとことんダメで離脱もやむなしといった感じだろうか。また、観ていくうちに謎がひとつ解けると、すぐに新たな謎が出てくる怒涛の展開で、これを面白いと感じる人がいる一方で、1回見逃すとワケがわからなくなってしまう。要は“観る人を選ぶ”作品だったワケだ。

 ここで1つ注目点を挙げるとするならば、本作で綾瀬が演じた歴史教師・藤原道子は、原作では妻子持ちの男性教師だったという点だ。それを独身女性に設定変更したことで、キャラとしては成功した。

 原作では剣道部の女子生徒・堀田イトがヒロインなのだが、ドラマ化に際し、ヒロインを同僚教師にしたかっただけだなと思ってしまうところだが、藤原の“歴史オタク天然ボケ純粋キャラ”は女性だったからこそ生きたし、何より綾瀬にハマっていた。まさに可愛くて面白いキャラ全開だった。また、藤原の出番が増えたことで、観る側に歴史解説する役割も担っていた。かなり上手い改変だったワケだ。

『鹿男あをによし』は視聴率的には失敗したが、内容的には成功した作品だといえる。まだ観たことがない人は、DVDや配信などでぜひ1度ご覧になることをオススメしたい。

『精霊の守り人』(NHK総合)

 残る2作品は、ともに6.8%で並んでいる。まずはNHK総合で2016年3月から18年1月にかけて計3シーズン・全22話にわたり放送された『精霊の守り人』シリーズである。

 作家で文化人類学者の上橋菜穂子のファンタジー小説『守り人』シリーズ全10巻の実写化で『放送90年 大河ファンタジー「精霊の守り人」』(注:放送90年とは、NHKで日本初のラジオ放送が始まってから90年という意味。テレビに先立つこと28年、1925年のことだった)と銘打って破格のスケールで制作された女用心棒・バルサの冒険活劇だ。

 綾瀬演じるバルサは短槍使いの凄腕用心棒で、精悍で男勝りな性格である。それまで比較的女性らしい役でヒット作を連発してきた彼女にとって、初の本格的なアクションに挑戦した作品でもあった。

 本作で綾瀬は、文字通り体当たりのアクションシーンに挑み、初めてとは思えない見事な身のこなしを披露している。その評価は高く、17年にはジャパンアクションアワードでベストアクション女優賞最優秀賞を受賞している。のちに『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)で元スゴ腕の特殊工作員役を演じ、キレキレのアクションを披露しているが、その原点となった作品だといえる。

 つまり、本シリーズで綾瀬はアクション女優としての可能性を大いに広げたワケだ。そういう意味で、彼女にとってかなり重要なポジションを占める作品なのだが、視聴率的にはシーズン1の平均が9.1%、シーズン2が同7.0%、ファイナルシーズンが同5.6%。そして全話を平均すると6.8%と、残念な結果となってしまった。

 とはいえ、NHKのドラマは朝ドラと大河以外は相対的に高い数字が出にくい傾向にある。また、期間を空けて3年かけて放送という形も珍しい(シーズン1は16年3〜4月、シーズン2は17年1〜3月、ファイナルシーズンが17年11月〜18年1月にかけて放送された)。これなら1桁の視聴率に終わったのも仕方ないといえよう。

『わたしを離さないで』(TBS系)

 その点、問題なのが、次の作品である。16年1月クールに放送された『わたしを離さないで』(TBS系)だ。本作は日系イギリス人作家のカズオ・イシグロの同名小説が原作。世間から隔離された施設で“普通の子ども”として育てられた男女3人が、実は生まれながらに“ある使命”を与えられた特別な子どもであることを知ってしまい、自分たちの“本当の運命”と向き合っていく……というヒューマンサスペンスだった。

 特別な使命を与えられた3人は、綾瀬のほかに三浦春馬と水川あさみ。実力派の3人が顔を合わせるということで、放送前からかなり期待されていた。ところが、最高視聴率は2度記録した7.7%、最低視聴率は6.2%で3度もマーク、全10話の平均は6.8%という大惨敗に終わってしまう。

 低空飛行の原因として考えられる理由は“クローン”や“臓器提供”といった重いテーマだったことが挙げられるだろうか。さらに、ストーリー展開も絶望に向かって進んでいっただけに、観る側としたらかなりキツかった。実は本作が放送された翌年に原作者のカズオ・イシグロはノーベル文学賞を受賞しているので、タイミングが一足早かったのも不運だったといえよう。

 結果的に、ワースト3の主演クラスの連ドラ作品は、すべて平均2桁視聴率を割っていた。そして今回の『元彼の遺言状』は、最終回目前にしても盛り上がる気配はなく、ここまでの平均視聴率は9.2%と、2桁に届いていない。最終回の数字次第では4本目の視聴率1桁作品が誕生してしまうワケだ。ちなみに、この4作に共通しているのは、いずれも小説が原作のドラマ化だということ。ひょっとすると綾瀬はるかとの相性が悪いのかもしれない。

上杉純也/フリーライター

上杉純也/フリーライター

出版社、編集プロダクション勤務を経てフリーのライター兼編集者に。ドラマ、女優、アイドル、映画、バラエティ、野球など主にエンタメ系のジャンルを手掛ける。主な著作に『テレビドラマの仕事人たち』(KKベストセラーズ・共著)、『甲子園あるある(春のセンバツ編)』(オークラ出版)、『甲子園決勝 因縁の名勝負20』(トランスワールドジャパン株式会社)などがある。

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