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食品スーパー「ベルク」が激戦区でも絶好調…圧倒的な集客力の秘密

構成=小野貴史/経済ジャーナリスト 撮影=山本宏樹/deltaphoto
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ベルクの原島一誠社長
ベルクの原島一誠社長

 ラストアイドルの等身大パネルを店舗に設置し、店内放送もラストアイドルが行う、あるいはスポーツ新聞社とのコラボで、本物のUFOが現われたという号外を3万1000部作成して店頭に置き、「日清焼そば U.F.O.」のキャンペーンを展開する――SNSで話題を呼んだこれらの施策は「MMSマーケティング」の一環だ。「MMS」とは「Media(メディアリーチ力)to Mobile(企画コンテンツ力)to Store(創客・送客力)」の意味である。

 このMMSマーケティングで新規顧客の獲得に成功しているのは、埼玉県を中心に126店舗を展開している食品スーパーベルク(東証プライム上場)。そして、同社にMMSマーケティングを提供しているのはITインフラ企業のビーマップ(東証グロース上場)だ。ベルクの原島一誠社長とビーマップの杉野文則社長に、MMSマーケティングも含めたベルクの取り組みについて聞いた。

食品スーパー激戦区でも好調なベルク

――埼玉県は「ベルクVSヤオコー」という構図で食品スーパー激戦区と言われていますが、この単純な構図ではなく、もっと錯綜した状況ではないかと思います。現状をどのようにご覧になっていますか。

原島一誠氏(以下、原島) 以前は食品スーパー同士の戦いでしたが、今は異業種が入り乱れての戦いになっています。圏央道が開通したので、神奈川のロピアさん(川崎市)が出店するなど、埼玉が攻められやすくなっています。うちもヤオコーさんも神奈川や千葉に出店していますが、向こうからも出店してきているわけです。さらに、ドラッグストアのコスモス薬品さん(福岡市)、クスリのアオキさん(石川県白山市)が埼玉に出店していますし、ディスカウントストアも含めて食品を扱うチェーン店が入り乱れての戦いですね。

――戦いの争点は何でしょうか。

原島 お客様が同じ店を利用し続けることは、なかなかありません。「この店は肉が良いから」「この店は魚が良いから」と買い回る傾向が顕著になってきています。たとえば、魚なら専門店の角上魚類さんで購入するとか。お客様の要求度がどんどん上がっているので、値段も許される範囲に設定して、品質も良くておいしいというバランスの水準を毎年上げていくしかありません。

――戦いが激しい中で、貴社の2022年2月期通期決算は、営業収益が前年比5.6%増の3002億6800万円、経常利益が9.5%増の138億8500万円、当期純利益が4.1%増の 91億8700万円でした。業績は堅調ですね。

原島 ひとつは、人口の多い関東圏で商売をさせていただいていることが要因です。埼玉県だけでも人口は約700万人。それに「競争が激しいのでボヤボヤしていられない」という強迫観念に近いものもあると思います。

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――顧客の購買単価などに変化はあるのでしょうか。

原島 コロナ感染が始まった当初は購入点数が増えましたが、その後だんだん下がって、今はコロナ前の点数に戻っています。一人あたりの購買単価は2000円強ですが、地域によって差があります。都内に近い店舗では徒歩や自転車で来店される方が多いので購入点数は少なく、地方は車で来店するので購入点数が多い傾向があります。

――このところナショナルブランド(NB)の値上げが続いていますが、貴社のプライベートブランド(PB)である「くらしにベルクkurabelc」の開発はどんな方針で進めていますか。

原島 最初に特定の商品分野に絞ることはしておらず、「とにかく作りたい物を作ろうよ」という方針です。そして、NBよりも安くて品質が同等であれば、繰り返し買っていただけます。現在、PBの売り上げは全体の7%ですが、目標は10%です。あと3ポイントを埋めるために、開発点数は月に10点、年間100点を目指しています。間口を広げないと10%に届かないので、「まずは出してみようよ」という考えで開発に取り組んでいます。

――商品化するかどうかの最終判断は社長が下すのですか。

原島 いいえ、私は最終判断には直接関わっていません。開発は各部門のチームで担当していますが、私はコンプライアンスに違反しなければどんな商品でもよい、と幅を設けて社員に任せています。

――仕入れコストの増加にはどう対応していますか。

原島 流通経路をどれだけ省略できるかが大事になってくるので、自社の物流センターを最大限に活用して直接取引を増やしています。輸入に関しても、商社を通さずに現地で直接仕入れて中間コスト削減に取り組んでいます。つい先日も、当社のバイヤーがスペインの展示会に行って、現地のワイナリーさんと直接交渉してきました。

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――貴社は「話題づくり・新規顧客の獲得」を事業の柱に据えて、今年5月には戸田市と日本薬科大学と包括連携協定を結び、ボートレースの女子選手プロデュースの薬膳カレーを発売しました。どんな経緯で進めたのですか。

原島 昨年、埼玉県が発足150年を迎えたことを記念して、当社は「埼玉150周年記念弁当」を発売し、県にも寄付をしました。一方で、戸田市は日本薬科大と連携協定を結んでいて、戸田市と日本薬科大学から「何かできないだろうか?」と打診されました。日本薬科大の知見を活用して、戸田市が運営するボートレース場の選手が好む食品を作れば、みながハッピーになれる、という意図で薬膳カレーを開発したのです。

――戸田市にとっては地域活性化につながる一方で、貴社にはどんな成果が出ましたか。

原島 ボートレーサーの間で話題になって、ボートレース場からまとめてご注文をいただいたこともあります。また、ボートレーサーの方々は戸田市のレース場だけでなく全国のレース場を走るので、各レース場にファンができて「うちの地域の食品スーパーでは買えない」という問い合わせが入ってきています。SNS時代に、折り込みチラシだけは集客できません。食品スーパーに行くきっかけをどう作っていくかが大事です。どうやって来店していただくかというのが、マーケティングの腕の見せどころです。

――MMSマーケティングの導入もその一環だと思いますが、どんな判断で導入したのでしょうか。

原島 食品スーパーにとって、これからのメイン顧客層であるZ世代をどう獲得するかという課題がありますが、Z世代はチラシには反応しない世代です。一方で、自分が推している人の口コミなどには反応します。その点で、ビーマップの杉野社長のご見解と合致して、アイドルの起用を始めました。アイドルを好きな世代は食品スーパーでなくコンビニのヘビーユーザーが多いですが、自分が推しているアイドルが食べている商品があれば、一度行ってみようとなるのではないでしょうか。食品スーパーはコンビニより品数が多いし、値段も安いことを実感していただき、選択肢のひとつにしていただく。それがMMSマーケティングの一番の目的です。

――Z世代の開拓は、顧客層の世代交代を視野に入れた施策ですか。

原島 世代交代ではなく、来店してない顧客層の開拓です。客数を増やすには、これまで来店していないお客様に来ていただくしかありません。通常、食品スーパーの来店客は年間約25%が離れていきますが、ベルクの場合は新しいお客様が28~29%来店されます。さらに、約50%近くのお客様がリピートして来店くださっています。

ベルクの霊能者イベントが大好評

――ビーマップの杉野社長にお尋ねします。どのような理由で、MMSマーケティングで食品スーパーの増客を図れると考えたのでしょうか。

杉野文則氏(以下、杉野) 当社はツイッターなどのデジタルツールを活用したマーケティング手法を開発していますが、若い人たちは新聞やチラシを読む習慣がなく、SNSなどから情報を得ています。そのため、話題のタレントなどがツイッターやインスタグラムで「この店はこんなことをやっている」と発信すれば、拡散されて、それを見た人の来店動機になると考えました。

 ただ、ベルクさんで最初に行ったのは中高年の女性を対象にしたイベントで、その層に刺さる企画として霊能者をお呼びしました。2020年8~9月にかけて全店舗を対象にして、3000円以上購入したレシートの画像をベルクのアプリで送信して当選すれば、生き霊霊視芸人のシークエンスはやともさんによる霊視体験にご招待する、という内容です。この企画では大変な数の応募があり、来店客にも喜ばれました。

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ビーマップの杉野文則社長

――通常、食品スーパーが霊能者をイベントに起用することはないと思います。

原島 食品スーパーがやらない企画をやろうと考えたからですが、10社のうち9社はやらないでしょうね。でも、私はトップダウンで「やろうね」と指示しました。意思決定は速かったです。

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――MMSマーケティングの導入は、販促の面でどんな影響がありましたか。

原島 食品スーパーの販促ではチラシしか知らない層に、いきなり異質な文化を入れるのですが、従来の文化を排除してしまうのではなく、融合させることがポイントかなと思います。霊能者のイベントは社内にも大きな影響を与えました。販促はチラシだけ作っておけばよいという考えから、いろいろなことをやればお客様に興味をもっていただけることを実感できたことは大きな効果になりました。今までは価格を下げるとかチラシのサイズを変えることが販促だと思っていたのですが、それらは特定のお客様にしか届きません。チラシに無関心のお客様にとって、チラシはゴミでしかないのです。

杉野 私たちはウィットに富んだ企画を提案しており、ベルクさんはツイッターでの発信を強化されているので、その企画がSNSで盛り上がるという効果がみられます。

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――今後は、どのような提案をしていくのですか。

杉野 お客様に飽きられないように手を変え品を変え、通常ではあり得ないことを仕掛けていきます。原島社長からは「コンプライアンスに反していなければ何でもよい」と言われていますので(笑)。コンビニではSNSを活用した集客が行われていますが、食品スーパーではベルクさんが先駆けではないでしょうか。

 しかも、食品スーパーでは200店舗を展開しているような会社でも、販促担当者は2名だけでチラシとデジタルの両方を兼務しているという例も少なくありません。その点、ベルクさんはマーケティング体制をしっかりと整備されています。

――マーケティング部はどんな体制で運営しているのでしょうか。

原島 人員は26名で、MMSマーケティングの導入をきっかけにSNS担当を配置しました。SNS担当者は社内公募で選んで、「やりたい!」という若手が担当しています。この人事をきっかけにして、すべての部署ではありませんが、各部署で異動対象者の公募を始めるようになりました。賃金体系は年功序列ではなくポジションに応じた体系なので、若手でもそのポジションに採用されれば一気に給料がアップします。

――お話をうかがっていると、食品スーパーの中ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が進んでいるという印象を受けました。単なるデジタル化でなく、集客の仕組みを変革したわけですから。

原島 「ITを活用した新しい集客の仕組みを作った」という意味ではDX化が進んでいると思いますが、一番難しいのはやり続けることです。お客様は移り気です。刺激に慣れてしまうと「もっとおもしろい企画があるでしょう」という心境になるので、やり続けなければなりません。

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――今後の食品スーパーは何が集客のカギになりそうですか。

原島 やはり商品です。NBの価格とPBの充実度や、生鮮食品のコストパフォーマンスが重要になってくるでしょう。コロナ禍で売り上げが伸びたのは惣菜ですが、やはりコスパが大事です。値段を10円や20円に抑えておいしくないコロッケを作るのなら、99円で出せるおいしいコロッケを作る、という考え方です。

――今日はありがとうございました。

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※本記事はPR記事です。

小野貴史/経済ジャーナリスト

小野貴史/経済ジャーナリスト

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表
著書「経営者5千人のインタビューでわかった成功する会社の新原則」

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