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高齢労働者の多くは肉体労働?『モーニングショー』75歳まで現役特集が炎上のワケ

文=あかいあおい/A4studio
高齢労働者の多くは肉体労働?『モーニングショー』75歳まで現役特集が炎上のワケの画像1
「gettyimages」より

 6月22日放送の朝の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)での「75歳まで現役」特集が、SNSを中心に炎上した。

 同特集は、少子高齢化による出生数の減少に関して議論するというもの。テレビ朝日局員でコメンテーターの玉川徹氏は「働ける人は年寄りでも働く」「働けないので若い人たちに養ってもらいますという考え方自体をやめるべき」と主張。その後も「高齢でも働くんだと。障害があっても病気があっても、みんなが働くんだと。そういう完全雇用を日本は目指すべきなんじゃないか」などの持論を展開していく。

 すると、これらの発言がTwitterで炎上。以下のような批判の声が相次いだのである。

<ビルの清掃員とか 駐車場の誘導員とか 高齢者が多く従事している職種に 玉川さん自身が将来就くことは想定していないよね 想像もしていない 玉川さんの意見には概ね賛成なんだけど やっぱりエリートさんなんだなって思う>

<スキルを身につけて70過ぎても働けって、この人達、世の中の仕事がデスクワークだけだと思っていませんか?>

<玉川さん凄い事を言うなぁ w75歳以上でも障害者でも全員働かせて今後は働かないで年金生活しようという考えは辞めさせるべきときたよ wその理由は医療も発達するから高齢者も働けるだって wこんな日本なら早く死んだ方が良いな w>

<60歳過ぎて 働ける人ばかりでは無い! 親の介護もある 働いている人も 働きたくて働いている訳ではない。玉川さん 残念>

 そこで今回は経済ジャーナリストの荻原博子氏に、75歳まで現役で働くということの現実性や、『モーニングショー』が炎上した背景を解説してもらった。

高齢者にも広まるクラウドソーシング

 まず、現在の高齢者の労働事情はどうなっているのか。

「正社員以外の高齢者の方々の就労先として多いのは、やはり清掃員や工場の軽作業、土方などですね。またシルバー人材センターの方に聞いた話ですと、体力的な負担が比較的少ないうえに日当が良い道路誘導が人気なようです。

 一方、最近ではクラウドソーシングを使って仕事をする高齢者の方も増えてきています。クラウドソーシングとは、企業や個人がインターネット上で不特定多数の人々に業務を発注する業務形態のこと。若者を中心に副業として人気が高いイメージがありますが、意外とクラウドソーシングを利用して仕事をする高齢者もいらっしゃるんです。このような働き方であれば在宅でできるので、体力的な負担はかなり少ないでしょう。ただし、収入も少ないので、安定した年金がある人向きでしょう。

 実際、『ランサーズ』や『クラウドワークス』など業界大手企業がシルバー層にかなり力を入れているようです。ただし、やはり相応のPCやITのスキルを持っている方に限定されてしまう依頼が多いようですね」(荻原氏)

 ではスキルを持っていない人の場合、高齢者ともなれば肉体労働を繰り返すことで身体を壊してしまうというケースもありそうだが。

「もちろん生活費を稼ぐために毎日肉体労働に従事して、身体を壊してしまうという方もいるでしょうが、現在の高齢者は生活に迫られて働いているという人は少ないんです。『モーニングショー』の『75歳まで現役』特集を観た方のなかで、高齢労働者の多くは肉体労働的なきつい仕事をしているのに現実を知らないエリートが何を言ってるんだ、と批判している人もいるようで、確かにそういう面はありますが、ただ、そういう方々ばかりではありません。

 というのも現在65歳以上の男性は、世代全体の8割がサラリーマンだったといわれており、さらに終身雇用という時代でした。また、この世代の方たちが働いていたのは高度経済成長期で、会社がどんどん生まれていた時代。会社があれば当然その数だけポストがあり、年功序列制なので給料は右肩上がり。退職の際にはその高い給料を基準に退職金が払われていたわけですから、ほとんどの方がエレベーターに乗っているような感覚で昇給、老後を迎えることができていた世代なんです。ですから現在の高齢者の大半は生活が逼迫して過酷な肉体労働をせざるを得ないという人は非常に少なく、そのため身体を壊すほど働いているという人はかなり限られてくるでしょう」(同)

 もちろん現在でも、経済的に逼迫して肉体労働をせざるを得ない高齢者もいるだろう。その本人やそういった高齢者の存在を知る方々から、冒頭のような批判はあがったのかもしれない。

将来に漠然とした不安を抱える高齢者

 では、なぜ今でも働いている人が多いのだろうか。

「まずは現在の高齢者の資産状況についてお話しします。日本の金融資産の6割超は60歳以上の世代が保有、65歳以上の平均貯蓄額は約2000万円といわれています。さらに高齢者のうちの8割が持ち家という数字もあり、資産としての額はより高くなるでしょう。こういった背景から、なぜ今でも働いている人が多いのかと考えると、2つの理由が考えられます。

 まず現在のシニア世代が“アクティブシニア”だということ。アクティブシニアとは年齢に関係なくさまざまなことに意欲的なシニア世代の方々を総称した言葉です。ひと昔前であれば定年を迎えた後は孫の面倒を見ながらのんびり老後を過ごす人がほとんどでした。しかし最近のシニア世代はいろいろなことに意欲的で、先ほどお伝えしたようにクラウドソーシングで仕事をするといったバイタリティー旺盛な方も多いのでしょう。そのため生活に追われて仕事をしているというよりは、“社会と繋がっていたい”“何か仕事をしていたい”という人が週2、3回程度、興味のある分野で働いているような方が多いように感じます。

 次に、漠然とした不安を抱えている人が多いということ。老後に2000万円が必要という話がありましたが、将来の国の財政について心配している方が増えているのでしょう。一定の貯蓄があるため明日のお金に困っているといった状況ではなくても、将来に対してなんとなくモヤモヤした不安を抱えている人が多いのではないでしょうか。ですから現在の高齢者で働いている方は、“ある程度の資産は持っているけど働いている”という方がほとんどだと思います」(同)

危機感を持った若者世代からの炎上?

 だが、現在の40代以下が高齢化したときは深刻かもしれないという。

「現在の高齢者は生活に逼迫している人は少ないでしょうが、10年後、20年後、30年後ぐらいに高齢者になる世代については、予断を許さない状況といえるでしょう。というのもそれらの世代が老後を送る頃には終身雇用が崩壊し、年金で生活することがほぼ不可能といわれています。

 “副業解禁”といった言葉などが流行しましたが、それは年金に頼らない生活を目指す必要があるという危機感の裏返しでしょう。また老後への備えがないという場合、それこそ経済的な事情で肉体労働をせざるをえなくなったり、それによって身体を壊してしまったりする人も増えてくるのではないでしょうか。

 ですから、『モーニングショー』での『75歳まで現役』特集が炎上した理由は、現在の高齢者が悲惨な状況なので炎上したというよりも、40代以下の層が、自分たちが高齢者になったときのことを悲観して、反論したというような背景もあったのでしょう」(同)

(文=あかいあおい/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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