2019年に金融庁の金融審査会市場ワーキング・グループ報告書で、「国民の老後資金は2000万円必要」と発表されたことは、皆さんもよくご存じのことと思います。当時はかなり話題になり、議論が紛糾しました。
当サイト記事でも2018年2月に「老後の収入を増やす方法」として、7種類の方法をご紹介しました。その時は、国民年金を受給する人だけでなく厚生年金を受給する人も含めて、収入を増やす方法を考えました。今回は厚生年金(月約22万円)の半分くらいの年金(夫婦2人で約11万円)しかもらえない国民年金受給者向けの内容です。
国民年金受給者の年金額は、厚生年金受給者と異なり、平均的な生活が送れないほど少なく、また自営業、フリーランスで働いている人には退職金もありません。年金額を増やし、退職金代わりになるものとしては、以下の3つがあります。
(1)「小規模企業共済」(中小企業基盤整備機構が運営)
(2)「国民年金基金」(国民年金基金連合会が制度を担っている)
(3)iDeCo(イデコ)と呼ばれる「個人型確定拠出年金」
小規模企業共済は会社員の企業年金に相当するもので、私的年金です。個人事業主(フリーランスの人も含む)、会社役員が加入できる任意の積み立てで、掛け金は全額所得控除(小規模起業共済金控除)になり、退職金には運用益(年1%)が加算されます。
受取時には退職所得控除又は公的年金等控除が適用され、税金が軽減されます。現在、「国民年金基金」と「個人型確定拠出年金」は20歳以上60歳未満の人しか加入できませんが、「小規模企業共済」は年齢制限もなく、従業員20人以下の企業経営者や役員、個人事業主、フリーランスの人が加入できます。
3つの制度とも掛け金は全額、所得控除になり、受け取り時には退職所得控除や公的年金等控除を利用できるので、自営業者やフリーランスの人は老後資金を増やすことができます。
では、どの制度に加入したらよいでしょう。年金受給まで時間のある60歳未満の人は、運用益が非課税で、運営管理手数料もかからないイデコがお勧めです。しかし、60歳以上の人は現在、「小規模企業共済」にしか加入できませんので、「小規模企業共済」に加入して、少しでも老後資金を増やし、生活にゆとりを持ちたいものです。
小規模企業共済についてもう少し詳しく述べると、メリットとして以下の3点が挙げられます。
(1)掛金は全額所得控除でき、所得税、住民税が軽減される
(2)共済金の受け取り時には退職金控除や公的年金等控除が利用でき税金が軽減される
(3)廃業や退任時には積み立てた掛金を共済金(退職金)として受け取れる
掛金は月額1000円から、500円刻みで7万円までかけることができ、金額は途中で増減できます。
退職時に受け取る共済金は加入1年未満だと掛け捨てになり、20年未満で中途解約すると元本割れしますが、廃業や65歳以上での退任(共済事由)だと元本に上乗せした共済金を受け取れます。受給方法は「一括」と「分割」を選べますが、併用も可能です。一括の場合は退職金控除が、分割の場合は公的年金等控除が使え、税金が軽減されます。
年金は複雑でわかりにくく、また頻繁に内容が変わるので、十分勉強し、よく理解してから加入しましょう。より高い利回りが期待できる可能性もあります。
(文=藤村紀美子/ファイナンシャルプランナー・高齢期のお金を考える会)