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木下隆之「クルマ激辛定食」

日産、新型エクストレイルに見る電動化戦略の神髄…推進役はEVではない?

文=木下隆之/レーシングドライバー
日産、新型エクストレイルに見る電動化戦略の神髄
日産自動車・新型エクストレイル

 日産自動車は、新型エクストレイルの販売を開始した。2000年に初代がデビューするやいなや、スキーやキャンプなどを趣味とするアクティブなユーザーに支持され、安定的な人気を獲得。その勢いをかって進化させた4代目は、全面刷新が遅れたことに気を揉んでいたユーザーへの、最高のブレゼントになる。

 内容は濃い。すべてのグレードを伝家の宝刀「e-POWER」に集約し、世界初「VCターボ」ガソリンエンジンと組み合わせたのだ。しかも、「アリア」への採用で話題となったAWDシステム「e-4ORCE」を合体させている。

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 走り始めてすぐ、上質な走り味に驚かされた。印象的なのは、そのVCターボの質感である。排気量は1.5リッターターボであり、想像を超えるビッグトルクを絞り出す。最高出力106ps、最大トルク250Nmである。

 e-POWER ハイブリッドの一種だが、エンジンは駆動輪と直結しておらず、常にバッテリーに電力をためる発電用に限定されるのが特徴だ。バッテリー残量が低下すればエンジンを始動し、電力を補充する。エンジンは発電機として割り切っており、走りはEVそのもの。それゆえにエンジンパワーは加速性能とは基本的に無関係。

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 だが、VCターボエンジンが強力なパワーを発揮することは、エンジンが短時間でバッテリーにたっぷりと電力を充電可能なことを意味する。同時に、エンジンを高めずに補充が可能という意味でもある。エンジンはなかなか始動しないが、たとえ始動しても唸りを上げることはない。上質な走りに貢献しているのである。

 もちろん、加速性能に影響するモーター出力も増強されている。フロントモーターは330Nm、リアモーターは195Nmと強力だ。そもそもVCターボは直列3気筒であるにもかかわらず、V型6気筒並みになめらかであることが特徴だ。3気筒エンジンにありがちなガサツな印象は皆無なのである。

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 e-4ORCEは、タイヤがグリップ限界域に達すると、左右輪の駆動配分をする。オンロードでは意識することはないが、雪道やダートなどでの操縦性にメリットがある。

 市街地での発進停止も、丁寧な駆動力の出し入れが引き立つ。たとえば、赤信号を確認して減速するような場面では、クルマが前のめりにならないように後輪の回生ブレーキ力を高める。フラットな姿勢で減速するのだ。

洗練され高級感が増したが、タフな走りは健在

 このように、エンジンの回転フィールは上質になり、操縦性も整った。しかも、ボディ剛性を高めるとともに、遮音性の高い窓ガラスを採用するなど、質感の向上を徹底しているのだ。

 デザイン的にも洗練度を盛り込んだ。歴代のモデルより明らかに上級傾向にある。トリッキーなデザインを改め、より高級SUVとしている。都会を闊歩するアーバンSUV的な雰囲気を得た。後席は260mmも前後にスライドする。リクライニングも可能だ。ミニバンほど、と言ったら誇張しすぎだが、ゆったりとくつろぎながらのロングドライブが可能になった。

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 とはいうものの、エクストレイルの生命線である「タフな走り」を疎かにはしていない。e-4ORCEは、もちろんオフロードでも威力を発揮する。ドライビングモードには、積極的に悪路踏破性を高める「オフロード」モードを備えるなど、アクティブなユーザーへの期待にも応えているのだ。モーターパワーも増強されたから、荒れた山坂道でも力不足を感じることはないだろう。

 トランクには、1500Wの外部電源が組み込まれることになった。ゲレンデを前にして湯を沸かすことも、キャンプサイトで暖を取ることもできる。アウトドアモデルとしての要件も満たしているのだ。

 都会から野山まで、活動エリアを広げた新型エクストレイルがこれから、日産のSUV戦略を牽引することになる。

(文=木下隆之/レーシングドライバー)

木下隆之/レーシングドライバー

木下隆之/レーシングドライバー

プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

Instagram:@kinoshita_takayuki_

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