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大盛況のパチスロ業界が抱える「爆弾」と関係者の不安…高射幸性を煽る危うい事情

構成=山下辰雄/パチンコライター
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パチスロを遊技する人々(「Wikipedia」より)
パチスロを遊技する人々(「Wikipedia」より)

 6号機がホールやユーザーから評価されず、どん底状態にあったパチスロ業界だが、6.5号機の登場によって状況は一変。「犬夜叉」や「新鬼武者2」などで万枚報告が相次ぎ、中古台市場の価格も高騰。「犬夜叉」や「甲鉄城のカバネリ」は100万円を超え、「新鬼武者2」に至っては一時期200万円以上を記録した。

 6.5号機の出玉感が話題になり、さらに今秋以降は「スマートパチスロ」の導入が控えているパチスロ業界は「やっと希望の光が見えてきた状態」といえるはず。しかし、パチンコ雑誌で活躍するベテランライター・T氏は「果たしてそうでしょうか」と疑問を呈する。

 T氏が「パチスロ業界は爆弾を抱えている」とまで言う理由は何なのか。詳しく話を聞いた。

高射幸性の流れに警察庁が怒る可能性も

――今、パチスロ業界は6号機以降で一番盛り上がっているように感じるのですが。

T氏 ええ、それは間違いありません。6.5号機の登場で「やっと打てる機種が出てきた」と感じたユーザーも多いことでしょう。

――では、なぜパチスロ業界の未来を危惧しているのですか?

T氏 出玉感です。「犬夜叉」では2万枚到達の報告もあり、6.5号機になってから万枚に到達する率も高くなっています。ユーザーにとっては喜ばしいことでしょうが、監督省庁の警察庁がいつまでも黙っているとは思えません。

――でも、保通協(保安通信協会)の型式試験を通過したから市場に出ているわけですよね?

T氏 もちろんそうなのですが、近年の「射幸性を抑える」という流れに逆行している現状は、そのうち規制を強化するという結果につながりそうで……。

――確率の問題で万枚が出るのは仕方のないこと。だからこそ、スマスロやスマパチ(スマートパチンコ)にはコンプリート機能を付けるという話なのでは?

T氏 そもそもコンプリート機能が発動した時点で(パチスロなら)1万9000枚出ているわけで、警察庁から「そんなに出る台を作るなんてどういうつもりだ?」って怒られても不思議ではありません。

――強制終了するから大丈夫なのではなく、そこまで出てしまう時点で「高射幸性の台」だと見なされてしまうわけですね。

T氏 一説によると、6.5号機「犬夜叉」の万枚到達率は1%弱。それに対して、スマスロは約4.5%という噂があります。6.5号機になってコイン単価が上がり、6号機よりも荒くなっているのは間違いなく、スマスロがそれ以上だとすると、本当に心配です。

――最近は「○時間で○万発も可能!」というパチンコ台の煽りを見かけるようになりました。

T氏 メーカーが業界誌に対して「射幸性を煽る表現は禁止」と通達し、編集やライターが書き方に頭を悩ませた時期もあったのを忘れたのでしょうか(苦笑)。

――メーカーの機種PVでは直接的な表現をしていなくても、パチンコ・パチスロ攻略サイトの記事やYouTuberの動画では堂々と「時速○万発!」という文字が躍っています。

T氏 かつては「時速○万発」は完全にアウト。“爆発”や“連チャン”も控えてほしいといわれましたからね。さらには“再抽選”が「一度確定したものを別のものに変換するような印象を与えるから禁止」といわれたり(苦笑)。

――別に大当たりをハズレに書き換えるわけじゃないのに……。

T氏 そんな時代があったのを考えると、最近の業界内にあふれている煽りコピーは「やりすぎじゃないの?」と思えてなりません。

スマートパチスロに潜む大きな不安

T氏 もう一つの問題は、以前からいわれている導入コスト。台が約50万円、メダルユニットが約20万円、管理用ホルコン(ホールコンピュータ)や各台の通信設備等に約50万円かかるので、1台につき100万円を超える想定とのことです。

――設置台数200台のホールなら2億円以上。1台につき約150万円かかるとしたら、3億円ですか。

T氏 とても簡単に出せる金額ではありませんよね。11月21日の導入予定台数は4機種で計7万台なので、すべてのホールに全機種が行き渡るわけではないはず。半導体不足も解消されていないので、導入台数はさらに減る可能性もあります。

――ということは、導入資金があり、稼働率も見込める大手チェーンが優先されるかもしれない。

T氏 しかも、導入から1カ月後には年末・お正月商戦が始まる。スマスロの有無は、来客数に直結する大きな要因の一つになるかもしれません。そして、そこでまたホールの淘汰が進む可能性も考えられます。

――先日、11月21日に導入される予定の4機種が発表されました。

T氏 現時点ではゲーム性やスペックが明らかになっていないので何ともいえませんが、型式試験の短期出玉・中期出玉・長期出玉のルールが変わっていないなら、6.5号機と比べて大幅に出玉性能を高めたスペックは通らないはずです。

――6.5号機とスマスロの違いは、有利区間の上限が撤廃されただけですからね。

T氏 スマスロが噂通りに“よく出る台”だった場合、お上に怒られる可能性がある。逆に、6.5号機とたいして変わらない出玉性能だった場合は、大きな投資をして導入したホールから総スカンを食らうし、遅れて導入しようと考えていたホールからも敬遠されてしまうでしょう。

――出すぎても問題だし、たいして出ない場合はパチスロ業界の盛り上がりに水を差す結果になりかねない、と。

T氏 もちろん、良い結果になってほしいのですが、個人的には期待よりも不安の方が大きいです。

* * *

 スマスロの導入予定日まで、あと2カ月。旧規則機の撤去という地獄から6.5号機の登場という天国へ、激動を経験したパチスロ業界が、また大きな転換期を迎えることになりそうである。

山下辰雄/パチンコライター

山下辰雄/パチンコライター

パチンコライターとしてBusiness Journalにて多くの記事を寄稿。

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