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小林敦志「自動車大激変!」

オワコン化するモーターショーの衰退…出展に見切り、先進国は開催の危機に直面も

文=小林敦志/フリー編集記者
デトロイトショーでワールドプレミアされたフォードの新型「マスタング」
デトロイトショーでワールドプレミアされたフォードの新型「マスタング」

 前回、3年ぶりにアメリカ・ミシガン州デトロイト市において開催された「北米国際オートショー(通称デトロイトショー)」を訪れた際の様子についてお伝えした。

 今回のデトロイトショーのトピックといえば、新型「マスタング」のワールドプレミアと、ジョー・バイデン大統領が会場にやってきたことぐらいといっていいだろう。開催規模の大幅縮小もあるが、さまざまな“大人の事情”が交錯しながら開催された今回のデトロイトショーを見ると、世界の主要メーカーが出展を見送る判断をしたのもどこか納得してしまう。

「そもそもデトロイトとその周辺地域の人口は全米でも多くはないので、“アメリカンブランドのお膝元”でなければ、単純に集客効果だけを見れば出展メリットは少ないのです。しかも、アメリカンブランドも往時に比べれば、世界的にはその存在感は希薄になっています。ましてや地域全体を見れば所得水準も決して高いとは言えない、つまり富裕層が限定的なので、高級ブランドほど出展メリットがないと判断しているのです」(現地事情通)

 事情通によると、全米でもずば抜けてZEVの普及に消費者レベルでも関心の高いカリフォルニア州で開催される「ロサンゼルスオートショー」は、今後もZEVの発表の場としては最適なので、テスラをはじめ主要メーカー以外でも、いわゆる“EVベンチャー”なども積極的に出展し、情報発信していくだろうという。ただ、そのようなロサンゼルスショーでも、出展しないメーカーがあるとの情報も入っている。

 また、全米でも最大といってもいい富裕層の集まるニューヨーク市で開催される「ニューヨークショー」も、投資家やアナリストなどへのアピールの場としても有効なので、出展メーカーは絶えないのではないかとのことであった。

 新型コロナウイルス感染拡大により、リアルでの新車発表イベントの開催ができない中、各メーカーはオンラインを活用した新車リリースのノウハウを高めており、コロナ禍前から進んでいたオートショーの世界的な“選択と集中”に拍車がかかってしまったようである。

 新興国におけるオートショーは、市場自体がまだまだ成長過程にあり、消費意欲はかなり旺盛である。そして、オートショー自体も新車発表は“にぎやかし”のひとつとして、トレードショーとしての色彩を強め、開催期間中の成約台数を発表するショーもあるほど“会場での販売”に力を入れている。開催期間中に会場内限定の“特価車”なども用意されるケースもあるので、まだまだ勢いがあり、先進国のような“選択と集中”のような後ろ向きな様子はまず感じることはない。

 本稿執筆直後にフランスのパリで開催される「モンディアル・ド・ロトモビル(通称パリサロン)」では、ドイツ系ブランドがそろって参加しないとの情報が入っている。

 また、スイスのジュネーヴで毎年開催される「サロン・アンテルナショナル・ド・ロト(通称ジュネーヴショー)」は、2023年春の開催もキャンセルされたどころか、主催者であるジュネーヴモーターショー財団がすべての権利を会場運営会社に売却、新たな主催団体と中東のカタール観光局により、2023年から隔年開催とし、新たに「カタール・ジュネーヴモーターショー」としてカタールで開催されることになっている。

オワコン化する先進国のモーターショー

 今回のデトロイトショーの現状、欧州の動きなどを見ると、先進国でのオートショーの“オワコン化”が進んでいることは否定できない。世界的に自動車需要の中心がすでに新興国へシフトしている状況を見れば、より費用対効果を期待できる新興国のショーへ世界のメーカーが熱心に参加するのは、やむを得ないのかもしれない。

 それでは、2023年に開催予定の「東京モーターショー」はどうなるのだろうか。前回開催の2019年から自動車業界にとらわれないショー内容にされており、次回はさらに先鋭化するともいわれている。筆者のように従来のモーターショーイメージを強く抱く年齢層にはいささか違和感はあるものの。さまざまな層を取りこみ、イベントとして成功させるには有効なのかもしれない。ただ、今回のデトロイトショーのように、完成車メーカーの参加は“日本メーカー+α”程度になれば上々といえるだろう。

 かつては、ドイツの「IAA(フランクフルトショー)」、アメリカのデトロイトショー、そして東京モーターショーが“世界の三大モーターショー”と呼ばれていた。しかし、フランクフルトショーは開催地をミュンヘンに変え、デトロイトショーは3年ぶりに開催すると、往時のイメージは完全になくなっていた。そして、東京モーターショーも中国の上海や北京、広州ショーなどに開催規模や話題性では完全に持っていかれ、日本の自動車産業の情報発信力の低下も手伝い、衰退の一途をたどった。

 筆者が子どもや若い頃に、オートショーの多くが“開催の危機”に陥るとは夢にも思わなかった。人間以外にも物事には寿命があるとは言われているが、見本市色の強い旧態依然としたオートショーも、文明の進化、そしてそれに伴う時代の変化などにより、市場成熟度の高い先進国からオワコン化し、その多くが消えて行ってしまうのだろうか。

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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