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小林敦志「自動車大激変!」

日本車はトヨタとスバルのみでホンダ不在…3年ぶりのデトロイトショーで不安的中

文=小林敦志/フリー編集記者
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3年ぶりに開催されたデトロイトショーの様子
3年ぶりに開催されたデトロイトショーの様子

 2022年9月14日より、3年ぶりにアメリカ・ミシガン州デトロイト市において「北米国際オートショー(通称デトロイトショー)」が開催された。新型コロナウイルスの世界的感染拡大により3年ぶりに開催されたこともあるが、コロナ禍直前の2019年に開催したときには、“2020年からは新しいスタイルで開催する”としていたので、どんなショーになるのかも楽しみで、筆者はデトロイトへ向かった。

 2019年当時の話では、デトロイト市中心地域全体をショー会場に見立て、従来の新車展示のみとするのではなく、さまざまなイベントを開催していくといったようなものだったのを覚えている。開催時期も厳寒の1月ではなく、気候が温暖で年間で最も過ごしやすいとされる6月としていた。

 3年ぶりの開催は9月となったが、9月も日本でいえば北海道の夏のような爽やかな陽気で、滞在中は晴天が続いた。どんなショーになっているのか楽しみにしていたのだが、その反面、渡米直前に“ホンダは出展していないようだ”との情報も入手しており、その後、さらに主催者側からプレスカンファレンススケジュールが送られてきたのだが、完成車ブランドでプレスカンファレンスを行うのは、シボレー、フォード、ジープのみであった。

 募る不安を抱きながらショー会場へ向かったのだが、その予感は見事に的中してしまった。実際にショー会場を訪れると、完成車としてはGM(ゼネラルモーターズ)、フォード、ステランティス(主にクライスラー系ブランド)に加え、トヨタスバルのみが展示ブースを構えていたのである。アメリカンブランドは地元なので当然のごとく出展していたのだが、どこか“おつきあい”的な雰囲気が漂っていた。

 事実、GMのキャデラックブランドでは、2022年7月に「セレスティック」というコンセプトモデルを発表しているが、このセレスティックはショー会場に展示されていなかった。

 それでは、前述したように今までとは異なる、市街地全体を会場に見立てるといった取り組みはどうかというと、かつてプレスルームとして使用していたホールに恐竜の等身大模型が展示され、メイン会場近くのデトロイト川に沿った場所にある公園のような場所を特設会場として、モンスタートラックショーをやるぐらいであって、少々拍子抜けしてしまった。新型コロナウイルスの感染拡大があったとはいえ、これでは当初よりかなり縮小した開催内容に見えた。

メーカーがZEVを出し惜しみする事情

 数少ないプレスカンファレンスは、ジープが「グランドチェロキー」の発売30周年記念モデルと「ラングラー」の派生車種(ともにPHEV<プラグインハイブリッド車>)、シボレーはフルサイズSUV「タホ」のハイパフォーマンスモデル、そしてフォードが新型「マスタング」であった。

ジープ「グランドチェロキー」
ジープ「グランドチェロキー」

 今時のオートショー、特に“デトロイトショー”という“大舞台”ならば、BEV(バッテリー電気自動車)をはじめZEV(ゼロエミッションビークル)が続々登場してもいいのではないかと思うのだが……。

「今、アメリカでBEVを発表するならば、毎年1月にネバダ州ラスベガスで開催されるCES(コンシューマエレクトロニクスショー)もしくは、全米50州の中で特にZEVの普及に積極的なカリフォルニア州ロサンゼルスで開催されるロサンゼルスオートショーが適切であり、発信力があるとして、そこに各メーカーもニューモデル発表を集中させるでしょうね」とは現地事情通。

 展示ブースを見れば、シボレーブースには複数のBEVが展示されており、GMCブースには「ハマーEV」が、そしてキャデラックブースには、直近に発売となったBEVの「リリック」が展示されていた。フォードではF-150ピックアップトラックのBEV版となる「ライトニング」や、ハイブリッドユニットが標準搭載となるコンパクトピックアップとなる「マーベリック」、BEVの「マスタング マッハE」、そしてLCV(ライトコマーシャルビークル)「トランジット」のBEVとなる「Eトランジット」が展示されており、アメリカンブランドとはいえ、見た目は日系ブランドよりもZEVなどのラインナップに積極的に見えた。

「クライスラー系ブランドはPHEV止まりで、決定的にZEVに出遅れている印象が強いです。当初はGMがアメリカンブランドの中ではリードしていたように見えたのですが、出遅れていたとされるフォードが、ここのところZEVのラインナップでは急伸しています」(前出の事情通)

 それなのに、プレスカンファレンスではZEVは1台も発表されなかった。国際ショーといいながらアメリカンブランドとトヨタスバルだけしか出ていないショーでは、会場を訪れるメディアも少なく(事実少なかった)、情報発信力を考えれば、現状では話題性の高いZEVを“出し惜しみ”するのも無理ないと思ってしまった。

自動車業界に配慮(?)するバイデン政権の実情

 開催初日に会場をジョー・バイデン大統領が訪れた。滞在中は厳選されたメディア以外は会場から追い出された(筆者も当然追い出された)ので、その晩のローカルニュースでバイデン大統領の会場内での様子を見たのだが、演説では熱心にZEVの普及をアピールしていたが、そのニュース映像では、シボレー「コルベットZ06」の展示車の前でご満悦な様子なども流されていた。

 バイデン大統領は2030年までに、アメリカ国内で販売される新車の50%をPHEVも含む電動車とするとしている。

「PHEVが含まれているのが“ミソ”です。クライスラー系がBEVなどZEVの開発に出遅れていることへの配慮ではないかと思われ、原文で読むとバイデン大統領の苦しい実状が反映されているようで、かなり無理があることを感じます」(同)

 バイデン大統領の重要な票田のひとつがUAW(全米自動車労組)である。PHEVを含めたのはクライスラーへの配慮ではないかともいわれている。欧州ではZEV化が進み、その過程で、ドイツではICE(内燃エンジン)開発部門のエンジニアや関連サプライヤーの従業員などで、すでに雇用問題(リストラということ)へと発展している。全面的なZEVへの移行を声高に叫べば、支持母体のひとつであるUAWの反感を買う恐れがあるのを考慮しているようである。そのため、あえて会場内でコルベットの展示車に近寄ったりするパフォーマンスを見せたのかもしれない。

 今回のデトロイトショーの現状や欧州の動きなどを見ると、先進国でのオートショーの“オワコン化”が進んでいることは否定できないのだが、そのあたりの事情については次回に詳述したい。

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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