東京オートサロンと東京モーターショー、なぜ明暗くっきり?日本車、生き残りのカギ
2020年1月初旬に幕張メッセで開かれた「TOKYO AUTO SALON 2020」は、実質2日半の一般公開期間の入場者が過去最多の33万6060人となり、会場はクルマと展示製品、そして人であふれかえっていた。東京モーターショーに比べて、クルマ好きの人たちにとってははるかに魅力的なショーであることは間違いなく、今後の東京モーターショーのあるべき姿への示唆も与えてくれるものとなった。
今回もっとも力が入っていたのはトヨタ自動車で、「GRヤリス」のグローバルデビューを行い、豊田章男社長が出席、GRヤリスによる世界ラリー選手権挑戦も発表するなど、東京モーターショーにおけるトヨタのブースとは意気込みがまったく違っていた。
GRヤリスは1.6L 3気筒ターボ(272ps)を搭載、価格は396万円(RZ)と456万円だが、今後、世界ラリー選手権でどのような活躍を見せるかは非常に興味深い。ホモロゲーション上、連続した12カ月間に2500台以上の生産、ベース車両全体で2万5000台以上の生産が必要で、新型コロナウイルス問題がどのような影響を与えるかは予断できない。
メーカー展示としては、トヨタ以外にはあまりインパクトのあるものは見られなかった。たとえば、マツダの「モータースポーツ」というテーマは悪くはないのだが、どのような活動に結びつけていくかの具体的な提案がなかったのが残念だ。
今年のデイトナ24時間出場車の展示、IMSAとル・マンとの競技規則の統一化に対する今後の戦略、底辺モータースポーツの具体的な施策、モータースポーツとSKYACTIV技術との今後のかかわりなどをぜひとも発表、展示してほしかった。
スーパーカー&スーパーSUVが多数出展
東京オートサロンの出展車両の中で非常に多いのが「スーパーカー」だが、今回はそれに加えて「スーパーSUV」と呼んでもいいクルマが多数出展されており、高価格のため自分の購入対象にはなりにくいが、非常に興味深いカテゴリーで、東京モーターショーではほとんどお目にかかれない車種だ。
18年末に納車を始めたスーパーSUV「カリナン」がロールスロイスの販売台数を牽引、19年の販売台数が25%も伸びるとともに、購入者の平均年齢が10歳以上若返ったという。「スーパーカー」「スーパーSUV」とは対照的な軽SUVも軽市場の中で大きなシェアを占めつつあり、今後の動向が興味深い。
出展されていたクルマの中で数が多かったのはトヨタ「スープラ」と、すでに導入後30年近く経過した3代目「RX-7」のカスタムカーで、「スポーツカー」が依然として多くのクルマファンの心を捉えるものであることを意味しているのではないだろうか。心高まる「スポーツカー」「スポーツバージョン」「スポーツユーティリティービークル」など活動的なライフスタイルに対応した商品系列を充実させることは、今後の日本車の生き残り&市場開拓にとって非常に大切なことではないかと改めて感じた。
以下は、今後の東京モーターショーに対する私の提案だが、会場内に「スーパーカーコーナー」「スーパーSUVコーナー」「モータースポーツコーナー」「スポーツカーコーナー」などを設け、主催者側(日本自動車工業会)がスペース費用は負担し、関係会社には車両展示をしていただくことを真剣に考えてみる価値があるのではないだろうか? これらのコーナーの増設は来場者増大の大きな引き金になるものと確信する。
また、有明と青海の分割された会場での開催は避けるべきで、もう一度幕張に戻すことも真剣に検討すべきではないだろうか? さらに、一般公開は出展社の費用低減も考えれば、7日もあれば十分だと思う。
(文=小早川隆治/モータージャーナリスト)
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