昭和・平成を代表する立川談志の弟子となり、現在は真打として活躍する落語家・立川談慶氏。通常は3年くらい前座を勤めると二つ目に上がれるが、立川談慶氏は立川談志の基準をクリアするのに人の3倍の9年半、前座時代を過ごすことになる。そして、二つ目、真打昇進の許しをもらうまでに14年間かかった。
しかし、立川談志の無茶ぶりに耐えつつ過ごした前座時代は、誰も経験できなかった立川談慶氏の財産になったという。
落語界の巨人が説いていた「幸せの条件」
『武器としての落語 天才談志が教えてくれた人生の闘い方』(立川談慶、方丈社刊)では、多くの弟子の中でももっとも立川談志の影響を受けた一人である落語立川流真打、著述家の立川談慶氏が、立川談志の言葉や落語から学び、経験してきたことを役に立つスキル、頼りになる武器として紹介する。
『大事なことは立川談志に教わった』(KKベストセラーズ年)、『教養としての落語』(サンマーク出版)など、談慶氏の著作は落語家としては異色の20冊を超える。
生真面目すぎる立川談慶氏は、入門したての頃はドジを繰り返し、立川談志からは「そうじゃねえだろう」と叱られ続け、ドジの烙印を押されていたという。気を使いすぎると見当はずれのことをしてしまったり、生真面目すぎると応用が効かなくなる。
「今こうすれば師匠は喜ぶだろうな」と状況に合わせて臨機応変に対応できれば、物事はスムーズに流れる。相手が何を求めているのか。それを把握する俯瞰力は、落語家の師弟関係だけでなく、どのような関係においても活かすことができる。俯瞰力は、上空から自分も含めた全体像を見下ろすドローン的な視点で全体像をつかむこと。その癖をつければ、取るべき行動が見えやすくなり、失敗を避けられるようになるという。これは社会生活の色々なところで役立つはずだ。
「湯呑み茶碗のフタを見て幸せを感じられるやつは幸せだよな」と立川談志はよく言っていたという。これはおそらく「幸せの基準は徹底的に低いほうがいい」という考えをもっていたからだと立川談慶氏は述べる。
「美味いなあ」「気持ちがいいなあ」「きれいだなあ」と、日常の小さなことに幸せを感じられるかどうか、が大事ということだ。また、他人との比較や世間の基準ではなく、幸せの基準は自分にあることを忘れてはいけない。
立川談慶氏が立川談志から学んだことは、、落語の世界だけでなく、物の見方考え方、仕事の処理方法、人との関わり方など、生きていく上で武器となるスキルになるはずだ。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。