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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

YMO高橋幸宏さんが闘病した脳腫瘍、注意すべき症状…誤嚥性肺炎との関連性は?

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
YMO高橋幸宏さんが闘病した脳腫瘍、注意すべき症状
高橋幸宏さん(「Wikipedia」より)

 イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)のドラムでミュージシャンの高橋幸宏(たかはし・ゆきひろ)さんが脳腫瘍により併発した誤嚥(ごえん)性肺炎で亡くなった(享年70)。

 YMOは1980年代に日本にテクノブームを巻き起こし、高橋さんが世に送り出した音楽は、今も多くの人に愛され続けている。高橋さんの訃報に、その死を惜しむ声がファンのみならず各方面から上がっている。高橋さんは2020年8月に脳腫瘍の摘出手術を受け闘病中だったが、その多くは語られていない。高橋さんが闘った脳腫瘍とはどういった病気なのか、また誤嚥性肺炎との関連性などについて、らいむらクリニック院長來村昌紀医師に話を聞いた。

脳腫瘍とは

 脳腫瘍とは脳に発生する腫瘍であり、大きく2つに分けることができる。脳で生じた原発性脳腫瘍と、体のほかの部位のがんが脳に転移してできる転移性腫瘍がある。

「原発性脳腫瘍は、脳の中で発生する腫瘍と、脳を包む膜や脳神経、硬膜などから発生し、腫瘍が大きくなるに連れて脳を圧迫する腫瘍があります。小児、成人、高齢者どの年齢でも脳腫瘍はあるのですが、各年齢によって起こりやすい脳腫瘍の種類が異なってきます」(來村医師)

 原発性脳腫瘍もほかの腫瘍と同じように良性・悪性があり、それぞれの症状に適した治療が行われる。

「発生箇所や腫瘍の種類によって手術、抗がん剤などの化学療法、放射線療法などが選択され、予後も異なります。一般的には言語野、運動野、生命を司る脳幹部の腫瘍の場合には手術で後遺症や命の危険が出る可能性があるため、手術が難しくなるケースがあります」(同)

脳腫瘍を疑うべき症状

 高橋さんも脳腫瘍の手術を受けた当時、「断続的な頭痛が続き、症状が改善しないためMRI検査を受けた」と報道されているように、頭痛が続く場合には放置すべきではない。また、頭痛以外にも脳腫瘍を疑う症状がある。

「頭痛、悪心、嘔吐、痙攣、また、脳腫瘍のできる場所によって手足の麻痺や言語の障害が出ることがあります。そういった症状が続く場合には、速やかに医療機関を受診してほしいと思います。早期発見では完治の可能性は高くなりますが、腫瘍の種類によっては再発し、予後が不良の場合もあります」(同)

脳腫瘍と誤嚥性肺炎の関連

 食べ物は口から入り食道、胃へと入っていくため、飲み込むことができる。しかし、飲み込む機能が低下すると、本来、食道へ入るものが誤って気管に入ってしまう。この現象を誤嚥(ごえん)と呼び、誤嚥によって口の中の細菌が唾液や食べ物と一緒に気管支や肺に入ることで生じる肺炎を誤嚥性肺炎と呼ぶ。実は誤嚥性肺炎による死亡率は高く、2019年の誤嚥性肺炎による死亡者数は4万人を超え、日本人の死亡原因第6位という報告がある。

「脳腫瘍や脳血管障害、神経系疾患などによって神経伝達物質が正常に機能しなくなることで、食べ物が口から気管へ入らないようにする咳反射や嚥下反射などの神経活動が低下し、誤嚥を起こしやすくなる傾向にあります」(同)

 1年間に新たに脳腫瘍を発生する患者は、人口10万人に対して10〜12人程度と推定され、頻度が高い疾患ではないが、頭痛や吐き気、まひ、歩行障害、しびれ、ふらつきなどの症状が続く場合には、すぐに医療機関を受診してほしい。

(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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