Hey!Say!JUMP八乙女光を襲った突発性難聴の意外な病態…完治はするのか?
2022年1月末から活動を休止していた八乙女光(Hey!Say!JUMP)が、11月から活動を再開させ、ファンから喜びの声が上がっている。八乙女は、2021年12月にめまいと耳鳴りの症状を訴え、左耳の突発性難聴と診断されたことから、治療に専念するため活動を休止していた。
歌手、俳優として活躍する八乙女にとって難聴という症状は、回復しなければ仕事を存続できない可能性もあるが、治療に専念したことが功を奏したのだろう。八乙女の報道で注目された突発性難聴は、誰しも発症する可能性のある疾患であるが、病態について広く知られてはいない。医療法人紫生会たま耳鼻咽喉科理事長の及川貴生医師に話を聞いた。
「突然に発症する原因不明の難聴を突発性難聴といいます。30~40代に多い傾向にあるものの、高齢の方が発症するケースも少なくありません。多くは一側性(片側)ですが、まれに両側のこともあります。突発性難聴の原因は不明ですが、蝸牛(聞こえの神経)の働きが悪くなったために起きる病気です。蝸牛への血液の循環が悪くなったためと思われる内耳循環障害説や、ウイルスの感染によって起こるという説、ストレスと密接な関係があるという意見もありますが、すべてが明らかになっていないのが現状です」(及川医師)
突発性難聴は、そう珍しい病気ではなく、及川医師のクリニックにも突然、耳が聞こえないと駆け込む患者が後を絶たないという。その症状には、いくつかの特徴がある。
「片耳の難聴、耳鳴り、耳閉感、めまいがあります。治療は早く開始するほど効果が期待できるので、早めの受診が大切です。治療は、薬物療法とストレスの回避、安静が柱となります。薬物療法は、ステロイドと一緒に循環改善剤・代謝改善剤・ビタミン剤などの点滴、内服を9日間します。発症から2~3週間以内に治療を開始することが重要です。その理由は、それ以降にステロイドを投与しても効果が期待できないからです」(同)
しかしながら、治療を行っても、すべての突発性難聴の患者が完治するとは限らないという。
「突発性難聴は、治療を行っても『3分の1は治り、3分の1は軽くなるが、3分の1は治らない』といわれており、耳鼻咽喉科疾患のなかでも予後不良な疾患の一つです。そのため、治療しても約半数の方に耳鳴りや難聴が後遺症として残ってしまうことがあります。特に治療開始が遅れた場合に難聴が残ってしまうことが多く、早期治療が重要となります。また、後遺症で多いのが耳鳴りです。しかし、耳鳴りに関しては、人によって感じ方、捉え方が異なる傾向にあります」(同)
後遺症に関しては、症状が続くことをどう捉えるかでその予後は変わってくると及川医師は話す。
「“鈍感力”も重要で、『このくらいなら生活に支障はない』と軽く考えられる人は症状が軽減していき、『どうして発症したんだろう。治るのだろうか』と心配する人ほど症状が続く傾向にあります。気にしないという鈍感力を持つことも大切です」(同)
突発性難聴の予防法
突発性難聴の治療の柱に「ストレス回避と安静」があるように、ストレスが発症のリスクになることは否めない。
「ストレスを溜めず、無理をしないことが重要だと思います。突発性難聴に限らず、ストレスが引き起こす症状はさまざまですので、リフレッシュしたり、休むことも大事です」(同)
八乙女のように音楽に携わる人は、「音」との付き合い方にも注意が必要だ。近年、ヘッドフォンが難聴につながるという警告もあるが、その真偽について意外な答えが返ってきた。
「ヘッドフォンの影響で難聴になる可能性は低いと思います。それよりも、スタジオやライブハウスなどでスピーカーが近くにある場合、注意が必要です。スピーカーからの大きな音を直接、聞いていると、『音響外傷』といって内耳に障害が起きることがあるので注意が必要です」(同)
ライブやクラブで長時間にわたりスピーカーの音に晒されることは、難聴を招くリスクになるため注意してほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)