新型コロナウイルスの新規感染者数は全国的にも減少傾向にあり、感染第7波はピークアウトの様相となってきた。しかし、このタイミングで学校は新学期を迎えたことで、感染拡大が再燃する可能性もあり、油断できない状況でもある。
第7波の感染拡大によって医薬品の流通に大きな影響が出ており、現在、コロナ感染者の対症療法に処方される薬の供給が滞っている。病院を受診しても「薬がない」となることも想定される事態だ。こういった状況に備え、市販薬を常備することも今後の重要なコロナ対策といえるだろう。個人で備えるべき市販薬は何か、くぼたクリニック松戸五香院長の窪田徹矢医師に聞いた。
「現在、新型コロナウイルス感染症の治療に使用される経口抗ウイルス薬には、モルヌピラビルとニルマトレルビル・リトナビルの2つがあります。しかし、全ての感染者に処方できるわけではなく、重症化リスクがあり医師が必要と判断した方に対してのみ処方されます。重症化リスクがない方や軽症の方は、対症療法で経過観察を行うのが現在の新型コロナウイルスの治療法です」
対症療法とは、それぞれの症状に対する治療であり、発熱には解熱剤、痰には去痰剤、咳には咳止めといった薬を処方することを指す。そういった薬は風邪の際に処方する薬と同様だという。
「コロナに感染したら、軽症でも経口抗ウイルス薬を処方されると思って受診される患者さんもいますが、そうではありません。軽症の患者さんの場合、発熱にはアセトアミノフェンやロキソニンなど、喉の炎症にはトラネキサム酸、痰にはカルボシステインやアンブロキソール、咳にはデキストロメトルファンやアスベリンなどを処方します」
そういった風邪の対症療法に処方される医療用医薬品と同成分を含む市販薬があり、厚生労働省も、次のように軽症患者には市販薬の使用を推奨している。
「基本的にはコロナの陽性者であっても、症状が軽い人に関しては薬を飲まなくても治る人がほとんどです。症状によっては、咳止めや解熱剤などの対症療法の市販薬を使っていただくことも一つです」
市販薬を選ぶ基準
医療医薬品の場合には、一つの症状に対して一つの薬が処方されることが多いが、市販薬の場合には複数の成分が含まれる配合剤が多く、その成分量をしっかりと見て選ぶことが重要である。市販薬の場合、有効成分の含有量が少なめのものもあり、医療用医薬品の適正用量に近いものを選ぶことをお勧めしたい。
【適正用量】
※効果:成分、1回当たりの用量(成人量/1日2~3回服用)
・解熱鎮痛剤:アセトアミノフェン、300~500mg
・抗プラスミン剤(喉の炎症改善):トラネキサム酸、250~500mg
・去痰剤:カルボシステイン、250~500mg
・去痰剤:アンブロキソール、15mg
・咳止め:デキストロメトルファン、15~30mg
上記以外の成分を含む総合感冒薬も複数あるため、購入の際はドラッグストアの薬剤師に成分を確認してほしい。
「現在、新型コロナ患者の療養期間は、症状がある感染者は10日間、無症状は7日間となっています。しかし、この療養期間も近い将来に短縮される方向で検討されています。症状が普段の風邪と変わらず軽症であれば、自宅で市販薬を飲み、様子を見てもいいと思いますが、60歳以上の方や喫煙者、基礎疾患がある方、肥満傾向の方など重症化リスクが高い方は、新型コロナに感染した際は、かかりつけ医や最寄りの医療機関に相談してほしいと思います」
2020年1月に日本で最初のコロナ感染者が確認されてから、我々の生活はコロナによって大きく制約を受けてきた。しかし、現在はワクチンや治療薬があり、感染後のデータも多く蓄積され、コロナと闘える盾を備えている。重症化リスクがある人のケアに重きを置くことを厳守しつつ、新型コロナに翻弄される生活から脱するべきだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)