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1千円超えるカレーばかり…ココイチ、苦境を招いた配慮の欠如?堂々と連続値上げ

文=A4studio
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「カレーハウスCoCo壱番屋」のHPより

ココイチ」の愛称で親しまれている大手カレーチェーン店「カレーハウスCoCo壱番屋」が、今ピンチに陥っている。2023年2月期の連結営業利益見込みは30億円にとどまっており、この数字は過去最高を記録した20年2月期のわずか6割程度となっている。そんな同チェーンは、昨年12月1日に同年2回目となる値上げを行っており、ネット上では「ココイチって高いイメージがあるのにまた値上げか……」といったネガティブな受け止められ方も散見されているのだ。

 そこで今回は、飲食店コンサルティング会社・飲食店繁盛会の代表としてさまざまな飲食店の売り上げアップに尽力してきた笠岡はじめ氏に、ココイチ低迷の原因について解説してもらう。

年に2回、ココイチが行い続ける値上げ姿勢

 ココイチの業績が落ち込んでしまった原因はなんなのだろうか。

「私が作成しているデータによると、コロナ禍前を100%としたとき、22年3月から22年11月の平均客数は飲食全体で88.0%、ココイチ単体で見ると85.4%となっています。飲食業界の平均値にも届いておらず、ここからもわかるようにコロナ禍による客足の低迷と、そこからの客足の戻りの悪さが落ち込みの原因だと考えられます。ではなぜ客足が戻っていないのか、その原因はネット上でも最近指摘されるようになった値上げではないでしょうか」(笠岡氏)

 昨今、物価やエネルギー価格の高騰による値上げは飲食業界全体を苦境に追い込んでいるが、ココイチも同様に苦しめられているようだ。

「カレーで使う小麦、トッピングの調理に必要不可欠なフライヤーの油、テイクアウトの容器などなどが軒並み値上がりし、さらには電気代などのエネルギーまで考えると、製造から販売までに関わるほとんどの工程で影響を受けていると思います。ですので、ココイチが値上げに踏み切る気持ちもわかります」(同)

 しかし、こうした状況は他の飲食店も同様であり、ココイチの客足が値上げによって戻らない背景には、さらなる要因があるという。

「ココイチは昨年2度の値上げを行うなど、近年、他の飲食店に比べて値上げの回数がかなり多いのです。定番商品の『ポークカレー』を例に見ると、2016年時点で463円だったものの、それから5、6回の値上げを経て、現在は591円にまで上がっているのです。このほかにもココイチの売りのひとつである豊富なトッピングなども細かく値段が上がっています。一方で、客単価を比較するとココイチはコロナ禍前の2019年に比べて105.9%であるのに対して、飲食全体の平均は111.6%であり、客単価の推移を見る限りは飲食平均より値上げの幅は高くないといえます。つまり、値上げそのものよりも値上げ回数の多さが、客足に大きく影響していると考えています」(同)

“ブランドを安売りしない”という経営哲学の功罪

 笠岡氏によると、ココイチの値上げは通常の飲食店業界ではあまり見られないペースだという。

「通常の飲食店は値上げの回数をなるべく減らそうとしますし、するにしても、そのタイミングは他の大手飲食店やスーパーなどが値上げをし、ニュースでそれが多く報道されるタイミングに合わせるものです。ですがココイチはそれをしません。

 その理由は同社の経営哲学にあるでしょう。創業者である宗次徳二氏がネット上のコラムで『業界ではココイチが値引きをしないで発展したのは七不思議の1つだと言われるが、私には安易に値引きをするほうが不思議である』と語っていたことがあります。これは『原価が上がったら、お店の価値を上げる努力をした上で適正な価格をいただく』という、自社の商品を安売りしない姿勢を示しているのでしょう」(同)

 ブランディングの方針が明確化されており、そのうえで原価から考慮した適正な値上げを行うというスタンスのようだが、値上げタイミングを鑑みない強気な姿勢をなぜ続けられるのだろう。

「理由のひとつに考えられるのが、19年の値上げ後、ココイチが想定していたほど客足の落ち込みが激しくなかったことがあるかもしれません。これは同社も『2020年2月期決算説明要旨』で同様の趣旨のことを述べています。さらに続く20年2月期には売上が3期連続で過去最高、利益が4期ぶりに過去最高を記録したということもあり、値上げ姿勢でもファンがついてくることを確信したからではないでしょうか。

 最大の理由は景気が低迷したことで、消費者のお財布の紐が堅くなったことにあるでしょう。また、その強気な値上げ戦略がネット上で大きく取り上げられたことで、『ココイチはファンの足元を見て何度も値上げをするのか?』といった悪印象が広まってしまったこと、しかも、値上げするたびに繰り返し取り上げられてしまうことも原因でしょうね」(同)

 多くの飲食店が値上げをせずに耐えるか、もしくは値上げをするにしても苦渋の決断という雰囲気が漂うなか、堂々と、かつ頻繁に値上げを行ってきたココイチ。その無理をしない姿勢は素直ではあるが、消費者心理という点で見ると、少々配慮が足りなかったのかもしれない。

消費者心理を捉えた「メニューの見せ方」が鍵か

 ココイチに欠けているのは「消費者心理を捉えた工夫」だという。

「消費者が値上げに過敏に反応するようになった今、ココイチのとっている戦略は、値上げを必要以上に印象づけてしまっている気がします。とりわけココイチの現在のメニューブックの考え方・作り方は、『普通に頼んだだけで1000円を超えるカレーばかり』と消費者に思わせてしまうものになってしまっているのです。

 というのも、現在のココイチのメニューブックは、同社の魅力でもある豊富なトッピングがすでに組み合わさった状態の商品を主軸に提案する作りだからです。これは膨大な組み合わせに消費者が戸惑わないようにするためのものとしては有効なのですが、パッと見たときに高額商品ばかりが並んでいるように見えてしまうというデメリットがあります。

 そうした商品を載せるなということではなく、載せるにしてもベースとなる1000円以下のトッピング付きカレーの値段表記を大きく見せ、その隣に『こんなトッピングもあるよ』と別途トッピングの値段を提案すれば印象も大きく変わっていたでしょう。また、どの商品画像も同じような大きさで載せているのもネック。どれかリーズナブルな商品を1点、2点おすすめとしてピックアップして画像を大きく見せれば、消費者の間で『ココイチ高くなったな』というマイナスの印象も最低限に抑えられたはずだからです」(同)

 ココイチのメニューブックには、時代を読む力をもっと込めたほうが良いと笠岡氏は続ける。

「ココイチは、『豊富なトッピングを選ぶ楽しさ』で人気を獲得したチェーンです。ですがお財布の紐が堅くなり、効率性が重視されるようになった今は、『おすすめを手早く注文したい』という需要のほうが多いのではないでしょうか。そうなったときに“おトクな組み合わせ”や“看板商品”を明確にアピールしないココイチの姿勢は、微妙に時流に合っていないように思えますね」(同)

 ココイチの堂々と何度も値上げする姿勢は、物価高騰で苦しむ飲食業界の人たちから見れば、勇気のある英断と映るのかもしれない。しかし、今後は時流に即したメニューブックの見せ方など、消費者心理も捉えた工夫をしなければ、離れた客足は戻りづらいのではないだろうか。

(文=A4studio)

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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