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天下一品、開口部が狭い「今風の器」に変更の意外な狙い…旧型の丼の店舗混在の理由

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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天下一品のHPより

「元祖こってり系ラーメン」として多くの根強いファンを抱えるラーメンチェーン「天下一品」。そこで使用されるラーメンの器が、2019年から順次、違う形状のものに入れ替わっていることが密かに話題を呼んでいる。天下一品のラーメンの器といえば、外側が赤く、上側の開口部が広くて横長の形状のものがトレードマークにもなっていたが、新しい器は開口部が狭い分、高さが高くなり「深型」で側面の勾配も急。いわゆる今風のラーメン店でよくみられる器だが、一部SNS上では「スープを少なくするためではないか」などと、さまざまな憶測が飛び交うことに(天下一品は「量には一切変更ありません」と説明)。また、入れ替え開始から4年たった現在も、従来型の器と新型の器を使用する店舗が混在しており、その理由も人々の関心を呼んでいるようだ――。

 全国に224店舗を展開中(3月24日時点)の天下一品は、昭和46年(1971年)に創業者の木村勉氏が京都で始めたラーメンの屋台が発祥。2021年には創業50年を迎え、現在は年商約200億円の一大チェーンに成長した。そんな天下一品の代名詞といえるのが、木村勉氏が3年9カ月もの歳月をかけて完成させたというスープを使用するラーメン。現在、「野郎ラーメン」や「ラーメン二郎」など「こってり系」の店は珍しくないが、天下一品はHP上で「半世紀も前にこの『こってり』というジャンルを創造した木村勉は、食文化に金字塔を打ち立てたと言っても過言ではありません」と強調。その「こってりぶり」は生半可ではなく、SNS上では「食べると決まってお腹を下す」といった声も多いが、そうした反応など意に介さぬように独自路線を突き進んでいる。

 ちなみに天下一品のラーメンメニューとしては「こってり」のほかにも、「あっさり」や、こってりとあっさりの中間味である「屋台の味」、北海道の赤味噌と愛知県の豆味噌』をブレンドした濃厚味噌を鶏白湯スープと融合させた「味噌ラーメン」もある。このほか、サイドメニューとして「ギョーザ」や「チャーハン」、さらには「デミカツ丼」「明太子丼」「鶏山椒丼」といったユニークなメニューもそろっている。

SNS上ではさまざまな声

 そんな天下一品は、前述のとおりラーメンの器の入れ替えを進めており、その理由について店舗内の案内物では次のように説明している。

<NHKのテレビ番組で『冷めにくいラーメンの鉢はどういった形状か?』といった実験で、開口部が狭く深型の鉢の方が、スープが冷めにくいという結果が出ました>

<鉢の変更に伴い、スープ・具などラーメンの量には一切変更ありません>

 一方、この入れ替えをめぐってSNS上では以下のようなさまざまな声が寄せられているのだ。

<材料費ケチるための形>

<量減らすのか?>

<スープ節約>

 ラーメン鉢の入れ替えの理由や、現在でも従来の鉢を使用している店舗と新しい形状の鉢を使用している店舗が混在している理由について天下一品の運営会社に問い合わせたが、期日までに回答を得られなかった。そこで、自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏に解説してもらった。

店側・客側の双方にメリット

 ラーメン店で開口部が狭い「深型」の容器を見かけることが増えてきました。初めてこの形状の容器を見た時、「なんか丼が小さくなった?」とも思いましたが、食べているうちに「深いから、そこそこ麺やスープは入っている」と気が付きました。その後、深型の容器を見る機会は増えています。

 この容器のメリットは、深さがありスープが空気と触れる表面積が小さいため冷めにくいことです。店にとってみると、料理が熱々の状態をできるだけ長く保つことができ、お客も温かい料理を食べることができます。飲食店の料理は通常、温度や火入れ、盛り付けなどが最良のタイミングで提供されるので、時間が経過するにつれて完成品から遠ざかっていきます。ラーメン店も、完成したときの状態をできるだけ持続したいと思い、料理が冷めにくくなる工夫をしています。

 また、店側のメリットとして「何か新しいことをすれば、それが宣伝の材料になる」ということもあります。店は多くの消費者に存在を思い出してもらうように宣伝する必要があり、「新しいもの」を用意してそれをPRしなくてはなりません。今の時代はお客がSNSを使って勝手にPRしてくれるので、そのためのタネ火として新しいものが必要で、今回の器の変更にはそうした目的もあるでしょう。

 天下一品は容量の変更はないとオフィシャルに説明しているので、そこは守られていると思います。一方、飲食店が器の変更によって材料費を抑えたりすることはあります。「1杯500円!」と謳う生ビールでもグラスの大きさを変えればコストは変わってきます。グラス売りをするワインで注ぐ分量が同じでも、グラスの形状によって少なく見えたり多く見えたりするので、グラスの選定には注意を払います。

 そして、天下一品で従来の鉢を使用している店舗と新しい形状の鉢を使用している店舗が混在している理由としては、費用対効果を意識する店ごとの方針によるものだと推察されます。フランチャイズ(FC)の本部が全店舗に強く統一性を求める場合、テスト期間を設けたあと、「これは行ける」と思ったら一斉に新しいものに変えることでしょう。本部がそこまで強く加盟店を縛らない場合は、FC加盟店の自主性に任せています。本部としては新しい器を推奨しているとは思いますが、強制ではないので混在しているのでしょう。器を入れ替えた店舗の売上が劇的に伸びるようなことがあれば、本部が自腹を切ってでも全店の器を変えるかもしれませんが、そこまでの効果は確認されていないのかもしれません。

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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