楽天モバイルは12日、新料金プランの「最強プラン」を発表。自ら「最強」と謳うプランは、果たして本当に最強といえるのか。専門家に解説してもらう――。
現在の楽天モバイルの「Rakuten UN-LIMIT VII」は、月間データ利用量3GBまでは月額1078円(税込み、以下同)、同3GB~20GBまでは月額2178円、データ使い放題は月額3278円であり、専用アプリ「Rakuten Link」を使用すれば音声通話とSMSは無料になる。ただ、データ利用量については、KDDIのパートナー回線によるauローミングサービス利用時の高速通信は月間5GBに制限されており、制限を超えると通信速度が1Mbpsに制限される。6月1日から提供が始まる「最強プラン」では、現行の料金体系を維持しつつ、auローミングの制限が撤廃される。
背景には、楽天モバイルとKDDIのローミング協定の見直しがある。楽天モバイルは一部エリアではKDDIの4G回線を借りてローミングを行っており、自前の基地局設置を進めるなかで、このローミングを段階的に減らしてきた。従来の協定ではローミングの終了時期は2026年3月に定められていたが、今回の改定により同年9月まで延長され、さらにローミングの対象外だった東京、名古屋、大阪などの屋外も対象となる。
「人口カバー率99%以上の達成を目標に楽天モバイルは自前の基地局整備を進めてきたが、その一方で今年度内に携帯電話事業の単月黒字化も目標に掲げている。基地局整備がある程度進んだこともあり、今後3年間で設備投資額を従来より計3000億円減らすとしているが、直近の22年12月期決算は最終損益ベースで4000億円を超える赤字を計上しており、より踏み込んだかたちでコスト削減に取り組む必要がある。その一つとして、自前の基地局設置を減らすという決断をしたのだろう。
一方、KDDIとしても4Gから5Gへの移行に伴い、これまで多額の投資をしてきた4Gの設備が空くよりは、他社に回線を貸し出してローミング収入を得たほうがよいという事情もある。『最強プラン』でauローミングサービスに関する制限が撤廃されるが、今回の協定改定に伴い、KDDIは楽天モバイルから得るローミング料金の単価を引き下げたとみられている。両社がお互いにWin-Winになる線で合意したということだろう」(全国紙記者)
ワンクリックで契約可能に
では、新料金プランは本当に「最強」といえるほど契約者にとってメリットが大きいプランなのか。ITジャーナリストの石川温氏はいう。
「楽天モバイルは『データ使い放題なのに安い』というのが魅力だったが、『ネットワーク品質がイマイチ』というのが最大の弱点であった。しかし、KDDIとのローミングを続けることでネットワーク品質が安定。しかも、これまであった5GB制限がなくなるので、どこでも使い放題が実現。『安くて安心して使える』プランになった」
どのようなユーザーが加入すると、より大きなメリットを受けられるプランなのか。
「とにかくデータ通信をしたいけど、料金が高くなるのは困るという人。既存3社で使い放題プランは6000円以上するが、楽天モバイルなら半額の3278円で収まる。また、『楽天で楽天ポイントをもらうのが好きだけど、スマホはNTTドコモやKDDI、ソフトバンクと契約している』という人も、新料金プランなら安心して楽天モバイルに乗り換えられるので、通信料金でも楽天ポイントがもらえるのでお得」(同)
新プランでは、ほかにも注目すべきポイントがあるという。
「新料金プランとともに注目したいのが、ワンクリックで契約できるようになった点。最初はデータ通信のみだが、2カ月遅れで音声プランも契約できるようになる。楽天市場から追加の本人確認不要でワンクリックでeSIMダウンロードしてすぐに楽天モバイルを契約できるのは、ユーザーにとって便利だし、3キャリアにとっては脅威になりそう」(同)
現在、「Rakuten UN-LIMIT VII」に加入すると、「楽天市場」で商品購入時に付与される楽天ポイントが最大でプラス3倍となり、NBAや楽天TV「パ・リーグ Special」が無料で視聴できるという特典もあり、これらは「最強プラン」でも引き継がれる。
(文=Business Journal編集部、協力=石川温/ITジャーナリスト)