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サイゼリヤの信用失墜、カエル混入を招いた品質管理体制の綻び…客離れも

文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表
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サイゼリヤのHPより

 イタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」は3日、店舗で提供したサラダにカエルが混入する事案が発生したと発表した。サイゼリヤといえば、300円(税込み/以下同)の「辛味チキン」や「ミラノ風ドリア」など低価格をウリにし、原材料費の高騰を受けて外食チェーン各社が相次ぎ値上げに動くなかで値上げをしない方針を打ち出すなど、消費者に寄り添う姿勢で高い人気を誇る一方、食材の生産から深く関与するなど安全・品質の向上・維持に力を入れていることでも知られている。そんな同社店舗で、なぜ今回のような事例が起きたのか。業界関係者の見解も交え検証してみたい。

 全国に1059店舗(2023年3月現在)を展開するサイゼリヤは、上記のほかにも400円の「ミートソースボロニア風」、200円の「フレッシュワイン(デカンタ250ml)」など低価格な商品が多く、それが多くのファンを惹きつけている。その低価格を実現できる要因となっているのが、製造直販(SPA)方式だ。商品開発から食材の生産、加工~配送までを同社が一貫して行い、中間業者を極力排することで価格を低く抑えている。ワインやスパゲッティ、オリーブオイル、プロシュート、チーズなどはイタリアの現地メーカーや農場から直接買い入れ、ハウスワインはサイゼリヤ専用のタンクで発酵・熟成させている。

 安全・品質管理へのこだわりも強い。素材の開発・生産・加工などすべての工程に踏み入ることで安全・品質向上を図っている。そのこだわりは徹底されており、自社農場で種や土壌・栽培方法を開発研究したり、ハンバーグとミラノ風ドリアの専用工場をオーストラリアに設けるほど。今回問題となっているレタスについては自社で種の品種改良まで手掛け、一玉でたくさんのサラダ分の葉を賄える大玉でかつ日本人好みの食感のレタスを生産している。HP上では、

「お客様に安全な料理を召し上がっていただけるように、様々な品質管理体制を整えています」

「生産工程においてリスク要因を取り除き、安全な食品の生産を維持するように定期的な点検・査察を行っています」

「重要な食材に関しては自社より専門家が産地へ赴き、品質の管理方法などの確認を実施しています」

と謳われている。

アクシデントを100%根絶することは難しい

 サイゼリヤの3日付けリリースによれば、混入が発生したのは小田原ダイヤ街店(神奈川県)、川崎日航ホテル店(同)、阿佐ヶ谷駅南口パール商店街店(東京都)の3店舗。神奈川県の自社工場で加工しているレタス原材料への混入可能性が高いといい、再発防止策として以下を行うとしている。

「原料レタスの下処理作業を行う際に、従来の目視点検に加え、展開葉(外側の葉部分)を1枚ずつ剥がして裏表を、確実に点検を実施する」

「産地に対しては上記の情報をフィードバックし、展開葉をなるべく剥がしてから出荷する」

 飲食店における異物混入事案は珍しくない。ここ数年の事例をあげれば、22年にファミリーレストラン「ガスト」のポテトフライに虫の足が混入する事例が発生。マクドナルドでは昨年12月に「マックフライポテト」の箱のなかに人の爪が混入するという事案が、今年2月にはハンバーガーにゴキブリが混入するという事例が発生。今年5月には「丸亀製麺」の「丸亀シェイクうどん」にカエルが混入していたことが発覚し、同商品の販売を一時休止。21年には、モンテローザが運営する「魚民」の「もつ鍋」に、白菜の洗いが不十分だったため大量の黒い虫が混入するという事例が発生し、ネット上で話題となったことも記憶に新しい。

 外食チェーン関係者はいう。

「自社工場は管理の目が行き届きやすいため、他社工場より高い水準の安全・品質を保ちやすいものの、異物混入などのアクシデントを100%根絶することは難しい。小さな虫や生き物の混入は地道に目視でチェックしていくほかなく、一時雇用の作業担当者の習熟度には当然ながらバラツキもある。いったん工場から『問題なし』として出荷されれば、店舗の調理場でいちいち混入の有無をチェックするようなことは行われない。スーパーやコンビニエンスストアのカット済み野菜でも虫などが混入しているケースはしばしばみられるが、生の野菜である以上、そのような事例は起こり得る。『自分が食べる前にさっと確認する』という意識が消費者側にも必要だ」

加工工場内でのチェック体制はどうなっていたのか

 人気チェーンということもあり、サイゼリヤの動向が大きくクローズアップされることは珍しくない。今年7月には粉チーズ(グランモラビア)の無料提供を終了させることを発表し、SNS上では大きな反響が沸き上がった。そこに続いて起きたのが、今回の不祥事となった。

「全国に1000店舗以上を展開していれば、どんなに安全管理を徹底していても、収穫から保管、配送、加工、調理の過程において野菜に異物が混入するといったアクシデントはどうしても起きてしまうものだし、今回は外部から金属片などが入ったわけではなく、栽培時からレタスに混ざっていた生き物がそのまま残ってしまっていたということなので、飲食チェーン側がこれでバッシングを浴びてしまうのも酷だろう。

 SNS上では『やむを得ない』という冷静な反応も目立つが、消費者からの期待値が高い分、サイゼリヤのブランドや信用の失墜は避けられない。子どもを持つファミリー客も多く、一定の客離れも避けられないだろう。安全管理体制のどこかに綻びが生じ始めているということであり、加工工場内でのチェック体制はどうなっていたのか、また作業担当者の労務環境に無理がなかったのかなど、いまいちど見直しが必要といえる」(同)

問題発生確率を下げる継続的な努力が大事

 こうした事例が生じる原因としては、どのようなことが考えられるのか。また、飲食店において100%防ぐことは難しく、一定程度起こることは避けられないのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「飲食店でサラダなどにカエルなどの両生類や虫が混入するケースは結構あるものなのかと問われれば、『可能性として十分あり得る』となります。理由としては、野菜に虫や両生類がついていることは自然界において当たり前のことで、特に葉物には隙間があり、その間に潜んでいる虫や両生類を100%見つけ出すことが困難だからです。街場の小さな飲食店のなかには、葉物を1枚1枚はがし、包丁を使わず手切りでカットしているところもあります。虫やナメクジ、土の汚れ、いろいろなものを発見できたりします。このやり方は面倒ですが、異物の確認がより正確ですし、野菜の切り口が赤く変色する劣化スピードを抑えることができるためですが、さすがに大きな工場になると、葉物の野菜はそのままザクザクカットし、バラバラになったあと洗浄され、小口に分けられ保管、各店舗に発送されるのが一般的です。お客が食べるサラダに虫や両生類が入っているとお店の信用問題にも関わりますから、この工程のなかで注意しながら、目視にて虫や両生類除去の作業を行っているのですが、どっさりまとまった葉物の中から異物を100%除去することは難しいと思います。

 サイゼリアのような大手の作業場=工場では、HACCPという手法により、原材料の入荷から製品の出荷に至る工程で、危害要因を除去・低減させるための管理をし、製品の安全性を確保するような各種ルールを決めています。HACCPでは、ネズミや昆虫などの害虫対策についても触れられているので、サイゼリアも一通りの対策は講じてきたことでしょう。それでも、今回の異物混入は起きています。今回の事件によってサイゼリアの工場では、保健所の指導を受けながら、レタス等の野菜の葉は1枚ずつ剥がして裏表を確実に目視点検してから工程に流すようにするとの対策を掲げました。これが守られれば、虫や両生類混入の確率はかなり低減されると思います。しかし、人間が行うことには不注意もつきものですから、これでも100%大丈夫とはいえないでしょう。

 表に出てきた事件だけでなく、現場にて穏便に済まされてきたものも多々あると思います。今回のような虫や両生類のような異物混入は大手でも街場の飲食でも、どこでも起こり得ます。理想は問題が起きないことですが、もし問題が起きてしまった時、再発防止のための対策を立て、確実に実行し、その後の問題発生確率を下げる継続的な努力が大事といえます」

(文=Business Journal編集部、協力=江間正和/東京未来倶楽部(株)代表)

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

江間正和/飲食プロデューサー、東京未来倶楽部(株)代表

東京未来倶楽部(株)代表
5年間大手信託銀行のファンドマネージャーとして勤務後、1998年独立。14年間、夜は直営店(新宿20坪30席)ダイニングバーの現場に出続けながら、昼間、プロデューサー・コンサル業。コンサル先の増加と好業績先の次の展開のため、2012年5月からプロデューサー・コンサル業に専念。
「数字(経営者側)と現場(スタッフ・オペレーション)の融合」「各種アイデア・提案」が得意。また、現場とのメニュー開発等、自称<「実践」料理研究家>。
・著書:『ランチは儲からない、飲み放題は儲かる』『とりあえず生!が儲かるワケ』『ド素人OLが飲食店を開業しちゃダメですか?』

Instagram:@masakazuema

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