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三井不動産(日本橋)は街づくりできるが住友不動産(秋葉原)はできない説検証

文=福永太郎/編集者・ライター、協力=長谷川高/長谷川不動産経済社代表
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三井不動産が開発した「日本橋三井タワー」(「gettyimages」より)

 電気街やサブカルチャーの聖地として人気の東京・秋葉原。現在、JR秋葉原駅「電気街口改札」周辺の1.7ヘクタールのエリアを対象に、再開発の計画が持ち上がっている。アニメやマンガ文化が根付き、メイド喫茶や免税店などユニークな店が軒を連ねる街に約170mの高層ビルを建設する計画について、「秋葉原らしさがなくなるのでは?」といった不安の声が多く寄せられており、再開発を進める住友不動産の今後の動向が注目を集めている。それに関連して、住友不動産がこれまで秋葉原周辺で開発したオフィスビルに対するX(旧Twitter)への以下投稿が一部で話題となっている。

<申し訳ないが住友不動産に街作りは出来ない。秋葉原では電気街のど真ん中や、ヨドバシカメラの真横に、商業も飲食店も一切ないただの淡白なオフィスビルを多数建ててしまい、人流を途切れさせている。住友のマンションは好きだけど、街作りには関与させてはいけないデベロッパー>

 この投稿に賛同する意見が多いなか、これに対比するかたちで、日本橋で多くの商業ビル開発を手掛けた三井不動産を賞賛する声も上がっている。

<それに比べ、三井不動産が手掛ける日本橋。これ低層階が、百尺ラインっていって全部31mで統一されてるんだぜ。古い建物と景観を合わせるために。「残しながら、創っていく」三井不動産の暖かいコンセプトなんですよ>

 そこで今回は、長谷川不動産経済社代表の長谷川高氏に、現在SNS上で広まっている「三井不動産は街づくりができて、住友不動産には街づくりはできない」という評価について話を聞いた。

街づくりには大規模な土地が必要

 秋葉原周辺には「住友不動産秋葉原ファーストビル」「住友不動産 神田ビル2号館」など住友不動産のビルが複数並ぶ。2019年に竣工した「住友不動産秋葉原駅前ビル」は、家電量販店やゲームセンターなどの秋葉原らしい建物が密集するエリアに位置しており、突如として現れるオフィスビルに違和感を覚える人も多いだろう。

 また、06年に開業した「秋葉原UDX」は、大型ビジョン・飲食店・イベントスペースなどを備えており、大手企業のオフィスが多数入居しているにもかかわらず、秋葉原との調和が取れている。それもまた、住友不動産のビルへの批判を後押しする一因となっているようだ。ただ、長谷川氏によると、これをもって「街づくりができない」という評価にはつながらないという。

「前提として、日本橋のような統一感のある街づくりをするには、広大な土地が必要です。住友不動産が秋葉原周辺で行った再開発は、ビル一棟が立つくらいの規模感のため、街づくりをするのは難しいといえるでしょう。対比で語られる秋葉原UDXは、非常に広大な神田青果市場跡地を利用した再開発でした。もし住友不動産が同規模の土地をもっていれば、統一感のある開発に取り組んでいたでしょうが、単体のビル建設では遊び心のある再開発ができなかったという事実があると考えます。そのため、秋葉原UDXと比べて街づくりができないと評価されることは、かわいそうな印象を持ちます。

 また、住友不動産は上場企業のため、株主への責任を果たす義務があり、デザイン等々に関して遊び心のあるビルを建築するよりは、利益を最大化=賃料収入を最大化できると最大公約数的なビルを建設したのでしょう」(長谷川氏)

街との統一感がなければ人は離れる

 また、長谷川氏は、住友不動産に街づくりができないという評価は誤りであるとする一方で、街との統一感については別問題として考えなければならないという。

「オフィス需要と街の魅力は相関しています。30〜40年前の丸の内は、オフィス街の一等地として人気でしたが、ビルの1階には銀行や証券会社ばかりの殺風景な印象で、六本木エリアの台頭により賑わいに陰りが見えていました。そのため、各ビルの1階や新築ビルの低層階にはおしゃれなカフェやレストラン等の商業店舗を誘致し魅力を創出することで、土日も一般客も訪れるような人気の街に変貌を遂げました。

 秋葉原は、近年、秋葉原UDXの建設によりオフィス需要が増加しています。20〜30代のIT系企業の社長や社員のなかには、あえて秋葉原にオフィスを構えたいと思う人も多いようです。そのような人々に好まれる環境をエリア全体として整備しないと、結局はテナントも埋まりにくくなる。最近は、渋谷駅周辺や東京駅の八重洲口などの各エリアでビルの大規模開発が進み、各エリア間における競争が激化しています。結果、オフィスビルの空室率も上がっています。そうなってきますとお客さんを呼び込む上で、街全体の統一感を考慮せずに一方通行の従来的なビルを建設することには、自らも含めたエリア全体の利益にならないのも事実です」(長谷川氏)

 大規模な再開発でない限り、建築基準法や各自治体の指導要綱に沿う形であれば、どのようなビルを建設するかはデベロッパーの判断に委ねられる。ただし、投資した資本の回収という面からみても、街との調和を考慮することは重要というわけだ。

三井不動産は地盤を活かした開発が強み

 街の調和が見事な再開発の例といえば、三井不動産が手掛けた日本橋だ。「残しながら、蘇らせながら、創っていく」がコンセプトで、歴史的建造物と現代的な感性が融合した街づくりがされている。なぜこのような街づくりができたのか。

「日本橋はもともと旧三井財閥発祥の地で、三井グループや関連会社が集結していたので、統一感のある街づくりができました。再開発の際には一部、野村不動産のビルも含まれていましたが、近年日本橋は、六本木や丸の内と比べて人気が低迷している状況を打破するため、三井不動産が主導し、他の地権者も巻き込んで街づくりを展開してきました。その結果、ショッピングや観光の人気エリアとして成長を果たしました。三井不動産は東京を地場とする会社であり、日本橋以外にも東京ミッドタウンや豊洲なども手掛けており、強固な地盤を活かした開発が得意といえるでしょう。

 一方、住友不動産は関西発祥の会社で元々は東京に地盤がなく、東京では後発ゆえに開発できる土地を一つ一つ探し、積極的にビルを建設することで発展したデベロッパーです。ただ、ビルの空室率が上がっている昨今は、街づくりにも前向きに取り組んでいます。六本木一丁目駅周辺の泉ガーデンは、統一感のある素晴らしい街づくりができているといえるでしょう」(長谷川氏)

 住友不動産が「街づくりができない」ということはなく、積極的にやってはこなかったと。しかし、最近では森ビルと組んで六本木5丁目の大規模再開発に参加しているように、これまでとは異なった展開をスタートしているのは事実だ。

(文=福永太郎/編集者・ライター、協力=長谷川高/長谷川不動産経済社代表)

長谷川高/長谷川不動産経済社代表

長谷川高/長谷川不動産経済社代表

東京生まれ。立教大学経済学部経済学科卒。
大手デベロッパーにて、ビル・マンション企画開発事業、都市開発事業に携わり、バブルの絶頂期からその崩壊と処理までを現場の第一線で体験。 1996年に独立。
以来、創業から一貫して顧客(法人・個人)の立場で不動産と不動産投資に関するコンサルティング、投資顧問業務を行う。また、取引先企業と連携して大型の共同プロジェクトを数多く手掛ける。
自身も現役の不動産プレイヤーかつ投資家として、評論家ではなく現場と実践にこだわり続ける一方で、メディアへの出演や執筆、講演活動を通じて、難解な不動産の市況や不動産の購入・投資術をわかりやすく解説している。
長谷川不動産経済社

Twitter:@hasekei8888

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