そして、米ヤフーが日本法人の株式の売却をすれば、ソフトバンクはその株式買収に名乗りを上げるのかという点に、市場の注目が集まっている。
インターネット検索ポータルとして成長した米ヤフーは、スマートフォン(スマホ)の急激な普及に乗り遅れた。2012年に就任したメイヤーCEOはモバイル事業に経営資源を集中して新たなオンラインチャネルを展開したが、ユーザー数やネット広告が伸び悩んだ。15年1~3月期の売上高は前年同期比4%減の10億4000万ドル(約1250億円)、純利益は93%減の2100万ドル(約25億円)だった。
物言う株主として知られる米投資会社スターボード・バリューから、ヤフー日本法人株式を売却するよう圧力をかけられていた。スターボードは3月、米ヤフーがヤフー日本法人の持ち分を節税効果のある方法でスピンオフ(分離)することで111億ドル(約1兆3000億円)の株主価値を引き出すことが可能だと指摘した(3月10日付ブルームバーグ報道より)。米ヤフーは資産の売却で投資家の圧力をしのがざるを得ない、苦しい状況にある。
今年1月に保有する中国アリババ集団株式を年内に本体から切り離し、同株式の保有を目的とした新会社を設立すると発表した。米ヤフーの株主には持ち株数に応じて新会社の株式を提供し、利益の還元を図る。米ヤフーはアリババ株を約3億8400万株保有しているが、アリババが米国で株式を公開して1年を迎える今年9月までは売却できない。売却の制限条項がついているからだ。現在の保有株の価値は約400億ドル(約4兆8000億円)だ。
そして資産売却の第2弾がヤフー日本法人の株式だ。すべて売却すれば約90億ドル(約1兆円超)規模の資金を調達できる可能性がある。米投資会社は、アリババに続いてヤフー日本法人株式を売却して得たキャッシュを株主に還元するよう迫っている。
日本法人株式の行方
米ヤフーが日本法人株式を売却する場合、その買い手の有力候補とみられているのが、ソフトバンクとヤフー日本法人自身である。
ソフトバンクはヤフー日本法人を連結対象企業にしている。ソフトバンクの孫正義社長がヤフー日本法人会長で、同社の宮坂学社長はソフトバンクの取締役を兼務している。ヤフー日本法人の取締役5人のうち、孫社長と宮内謙ソフトバンク副社長(6月末以降はソフトバンク取締役)、宮坂社長の3人がソフトバンク取締役を兼務。宮坂氏を社長に抜擢したのは孫氏であり、ソフトバンクとヤフー日本法人の結び付きは強い。