金融庁が金融持ち株会社の規制緩和の検討に入った。金融持ち株会社傘下の子会社の業務範囲を拡大することで、電子商取引やスマートフォンを使った決済に参入しやすくする。すでに米国では金融とITの融合が進む。日本でもIT企業や物流企業が金融業界に参入し始め、地殻変動が確実に迫っている。
低くなる垣根が新業態を生む
「ICT(情報通信技術)の発達をてこにした他業態の金融事業への進出、これは間違いなくある」
3月19日に会見した全国銀行協会の平野信行会長(三菱東京UFJ銀行頭取)は、協会会長としては最後になる会見で業界の未来を語った。
「例えば、リテール商流を自ら持っているような業界・企業が、それに決済やファイナンス等の金融機能をつなぐことで、顧客との複層的な関係を築き、極めて柔軟なビジネスモデルを創ることができる。プライシングにしても、こちらは無料にして別のところで収益を上げるといったこともできる」
実際、海外ではITと金融の垣根が低くなっている。IT関連企業が決済サービスを始めることで、既存の金融機関しか手にできなかった購買履歴を自社で囲い込む。そうした情報をもとに融資業務にも手を広げ始めている。
米アマゾンは12年に自社サイトの出店者向け融資を米国で始め、14年には日本でも同様のサービスを開始した。中国のアリババ集団は04年にネット決済サービスを始めて、10年にはショッピングサイトの取引状況で融資を判断する取り組みを始めた。14年には民間銀行の設立認可を取得するまで金融事業を成長させている。
楽天、ヤフーらが相次いで金融事業に参入
こうした既存の金融機関を「中抜き」する動きは、すでに日本でも現実になっている。その先端を行くのが楽天だろう。通販サイト「楽天市場」で知られるが、グループ営業利益の5割近くを金融事業が稼ぎ出す。カード、証券、保険にとどまらず、ショッピングサイト出店者である中小企業や個人事業主向けに、楽天カードが無担保融資をこのほど始めた。
通販サイト出店者向け融資はヤフーも展開。「Yahoo!ショッピング」出店事業者向けに1月、出資先のジャパンネット銀行が限度額1000万円で貸出業務を開始した。