本物の経営者はこう考え、こう振る舞う
では、経営者としての考え方や行動の例を3つほど見ていきましょう。
ひとつ目は、組織の中での役職や昇進に関わることです。会社勤めをする身としては昇進して地位が上がることは、たとえ責任が重くなるとはいえうれしいものです。
通常、「昇進する」というのは、組織の中で役職が上がることを指します。自分より役職が下の部下を管理する立場になる、ということです。まさに、組織の階層を上がり、管理者として部下を管理する立場になるのです。
しかし、経営者の考え方は異なります。役職が上がるということは組織を下から支える存在になる、というふうに考えます。偉くなるということは組織の階層を降りていき、多くの社員を下から支える役回りになると捉えるのです。
だから、ほかの人ができないことに手を差し伸べ、場合によっては、部下の代わりに業務を行うこともあります。その業務がうまく回らなければ、組織全体が機能しなくなってしまうからです。それを避けるためには、その業務を自らやり遂げるしかありません。
もし、その業務が行われなくても支障がないとすれば、上司は部下に本来必要でない業務を行わせていたことになります。それは、なんと無駄なことでしょうか。
2つ目は、組織の変化に関わることです。ハイパーコンペティション(激烈な競争が行われている状況)の現代では、ビジネスの変化が早く、組織や組織の構成員も素早い変化を求められることが多くなってきました。
組織が変わるということは、当然、その構成員である社員も管理者も経営者も変わるということです。自分自身も、変わらなければなりません。
自ら変化を作り出すことができれば申し分ありません。それができないまでも、せめて、変化に柔軟な対応ができることが大事です。これには、年齢は関係ありません。「年をとったから変わることができない」というのは、単なる言い訳にすぎないのです。
考えてみてください。誰もが変化には敏感で、「できれば変化したくない」と思っています。そのため、経営者が率先して変わらなければ、部下は変わりようがありません。
もし、部下のほうが変化に柔軟で、組織の業務を改善させたり、進化させることができるのであれば、その部下が上司になって、上司は部下に降格したほうが良いということになります。
3つ目は、時間の使い方に関わることです。映画『踊る大捜査線 THE MOVIE』(東宝)の一場面では、偉い方々は現場から離れた立派な会議室で指示を出していました。一方で、現場にいる末端の捜査員が駆けずり回り、事件の解決に当たっていました。
本当にそれでいいのでしょうか? 本物の経営者ほど、個室から外に出て、あるいは会議室での打ち合わせをやめて、お客様と対話する時間を大事にしています。お客様との対話に、より多くの時間を割くように努力しているのです。