潤う産業と衰退する産業
――産業では「銃産業」が潤うとの指摘もあったが、ほかにも潤う産業はありますか。
ロジャーズ 銃産業というのは比喩で、防衛産業のことです。そうなってほしくないですが、世界が不安定になりつつあり、中国もロシアも防衛にお金をつぎ込んでいます。まったくの無駄です。しかし、政治家は防衛にお金をつぎ込んでいるのが現状です。
特に日本はそうです。政治家が、自分たちにできるとわかっている経済対策のひとつが防衛にお金を使うことです。確かに、防衛費を増やせば経済にはプラスになります。得てして、経済が悪化すると国は防衛にお金を使います。国防にお金を使うことは、早く簡単に経済に刺激を与えられるからです。しかし、長期的にはよくないのです。たとえば、タンクを建設しても風雨にさらされて錆びるだけです。長期的に見ても、国のためにはまったくなりません。学校を建設するほうがよっぽど有用です。
――ちなみに、いまアメリカで元気がいいのは「GAFA」と呼ばれる企業群ですが、これらの未来についてはどう見ていますか。
ロジャーズ これらの企業は、市場に競争をもたらしています。これほどまでに成功しても、常に競争をもたらします。スマートフォンをつくることができるのは米アップルだけではありません。米国のセキュリティの脅威になっていますが、中国ファーウェイもより優れたスマホをつくっています。米国は中国との競争を制限しようとしていますが、世の中は競争することで回っているのです。
――GAFAはいつごろから衰退し始めるでしょうか。
ロジャーズ 次の弱気市場で、かなり落ちるでしょう。すぐ前の強気市場の値がさ株は、劇的に下がるのが常です。時には8割、9割と下がることもあります。株価が高くつけられすぎているからです。
――アマゾンのジェフ・ベゾスCEO(最高経営責任者)は、「アマゾンはいつか消える」と自ら発言しています。
ロジャーズ ダウジョーンズ工業株平均は100年前に30の企業で始まったが、そのどの企業もダウ工業株平均に残っていません。消え方は違っても、すべて消えています
――最後に、「中国で投資をするならば環境、インフラ、ヘルスケア」との発言について聞かせてください。環境対策ビジネスでは、特にどの分野に注目していますか。
ロジャーズ ヘルスケアと環境です。中国にはもっといいヘルスケアが必要です。今、かなりヘルスケア産業にお金を使っていますが、まだ中国の衛生状態はよくありません。そのため、まずは環境をきれいにしなければなりません。中国の「一帯一路構想」は、巨大なインフラ・プロジェクトです。中国にとっても有用で、世界のためにもプラスになる構想です。
(構成=大野和基/ジャーナリスト)