タイ進出、新工場買収にも成功
「従来の弱電や携帯電話向けなど通信機器を対象とした部品製造については、思い切ってタイに進出しました」(同)
年商が40億円を切った10年に、タイ・アユタヤでの工場建設を決断したが、11年の大洪水で操業開始が半年間遅延した。「大洪水が、操業開始後でなくてよかった」と小平社長は振り返る。経営者には運も必要という例だろう。
「12年に操業開始すると順調に生産が立ち上がり、14年にはもう第2工場を増設しました。タイ工場の年商は14年に12億円を超え、早くも黒字化して業績に貢献してくれるようになりました。タイ語はおろか英語を操れる社員がいたわけでもないのに、なんとかやっています」(同)
諏訪地区でのグループ社員数300名ほどの地場企業が、アジアに製造進出してうまくやっている。
「次に目指しているのは、超高精度の金型を自社で開発製造して日本一、いや世界一の金属部品加工メーカーになることです。そのために、業績が上向き始めた12年に思い切って新工場を買収しました」と小平社長は語る。
新工場は「テクノロジーセンター輝」と名付けられた。地上3階、地下1階建ての同工場の特徴は、地下だけで2300平方メートルという広大な床面積を持っていることだ。小平社長は、「地下にあるということで、徹底的に温度管理を実践しています」と語る。
大型の工作機械まで、通風管理された大型エレベーターで搬入されるという。「1年を通して温度差は最大2度、1週間単位ではプラスマイナス0.3度を実現しました」(同)
温度管理のほかにも、最高クラスの床強度で工作機械の振動などが極小になる点も特徴だ。最新鋭の自動工作機械に加え、その精度の高さから「神の機械」といわれたスイスSIP社の工作機械まで整備活用している。
このような環境で製造される金型は、超精密を目指すことができる。小平社長は、「最後は人の手で精度を追い詰めるのです。すでに一部実現していますが、私たちの目標は誤差1ミクロンの精度の金型を安定的に製造することです」と語る。
目指すは世界一の金属成形部品メーカー
そこまでの精度を有する金型からプレス成形される金属部品は、どんな領域まで担うことができるだろうか。「医療機器分野に手を広げようと思っていますし、将来的には航空や宇宙関連事業で貢献できるところまで、精度を追い詰めたい」と、小平社長の野望は果てしない。
太陽工業は製造プロセスの分野でも、精密立体部品の自動積層組立ラインで「中小企業優秀新技術・新製品賞」の優良賞や「素形材産業技術賞」の素形材センター会長賞などを受賞している。