ゼンショー
「明」はゼンショー。過重労働の元凶とされる深夜時間帯の「ワンオペ」と呼ばれる1人勤務体制を廃止した。人件費を抑えるワンオペは商品価格引き下げにつながり、同社をデフレの勝ち組に押し上げたビジネスモデルの象徴だった。
この成功モデルが批判を呼び、廃止を余儀なくされたことで、ゼンショーの15年3月期最終損益は111億円の赤字(前期は11億円の黒字)、ROE(株主資本利益率)はマイナス17.2%に転落した。だが、6月19日に開催された株主総会で小川賢太郎会長兼社長兼CEO(最高経営責任者)の再任は96.06%の高い賛成票を得た。
小川氏が株主の圧倒的な支持を得たのは、ゼンショーが個人投資家に人気の高い株式だからだ。人気の秘密が株主優待である。同社はすき家のほかにファミリーレストラン、ハンバーガー、パスタ、メキシコ料理、焼き肉、しゃぶしゃぶ、和食レストラン、回転寿司、ラーメン、うどん、コーヒー、駅ナカカフェなど、実に多種多様な飲食店を経営している。同社の株式優待は、これらゼンショーの店舗で利用できる「お食事優待券」だ。500円単位で利用できる。
【ゼンショーのお食事優待券】
100株以上300株未満:2枚(1000円分)
300株以上500株未満:6枚(3000円分)
500株以上1000株未満:12枚(6000円分)
1000株以上5000株未満:24枚(1万2000円分)
5000株以上:60枚(3万円分)
食事券には、「パス」という300株以上を保有している株主を対象にした代替品交換制度もあり、牛丼の具やコーヒー豆などをもらえる。個人株主数は17万749人で、その所有株式数の割合は53.6%、年間配当は16円。株主優待券を合算すると、高利回り銘柄となるため、個人投資家の人気が高い。ゼンショーは「ブラック企業」批判を浴びる最中にも、株価が暴落することはなかった。個人株主が安定株主として、小川氏の強力な支援者になっていることが見て取れる。
ワタミ
ゼンショーと対照的に「暗」となったのがワタミ。15年3月期連結売上高は前期比4.8%減の1553億円、最終損益は126億円の赤字(前期も49億円の赤字)と赤字幅が拡大した。ROEはマイナス78.7%で、前期も18.1%のマイナスだった。桑原豊社長は引責辞任し、清水邦晃氏が新社長としてリリーフ登板。6月28日の日曜日に予定していた株主総会を、会場費削減を優先して6月22日の平日に変更した。