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米企業にやられっぱなしの生保業界、ようやく反撃開始?第一生命が“2つ目”の悲願達成へ

文=編集部
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米企業にやられっぱなしの生保業界、ようやく反撃開始?第一生命が“2つ目”の悲願達成への画像1第一生命保険本社(「Wikipedia」より/Kakidai)
「2020年をめどに、世界5位以内を目指す」

 第一生命保険の渡邉光一郎社長は、こう宣言した。保険料等収入で日本生命保険を上回った第一生命の次の目標は、世界市場でのトップ5入りだ。

 今年、生命保険会社の順位に異変が生じた。2015年3月期連結決算の売上高に相当する保険料等収入で、第一生命が戦後初めて日本生命を上回ったのだ。

【生命保険会社の保険料等収入ランキング】(15年3月期連結決算。以下は会社名 保険料等収入/単位:億円)

かんぽ生命保険 5兆9567
第一生命保険 5兆4327
日本生命保険 5兆3371

 第一生命の保険料等収入は5兆4327億円で、日本生命に956億円の差をつけた。今秋、株式上場を予定している日本郵政傘下のかんぽ生命に迫る勢いだ。

 第一生命の保険料等収入は、前期の4兆3532億円から25%増の大幅増収となった。子会社の第一フロンティア生命が販売する、外貨建ての貯蓄性商品が前期比50%増と大きく売り上げを伸ばしたことが寄与した。

 日本生命も一時支払い終身保険などの販売が好調で、保険料等収入は前期比11%増えたが、第一生命に及ばなかった。

 第一生命が日本生命を逆転した要因は、銀行窓口販売の保険料収入の差が大きい。第一生命は窓販部門を第一フロンティアが担当しており、他社に先駆けて利回りの良い外貨建て商品を開発したことが奏功した。第一フロンティアの15年3月期の保険料等収入は1兆8997億円で、第一生命全体の35%を占めている。

 保険の銀行窓販とは、生命保険会社や損害保険会社の委託を受けて、銀行や信用金庫などが窓口で保険商品を販売することだ。銀行や信金にとっては手数料収入が魅力で、主力業務のひとつになっている。

 規制緩和により、07年には保険料を一括払いする終身保険や医療保険、自動車保険などの銀行窓販が全面解禁された。日本生命は、銀行窓販の保険料等収入で第一生命に約1.4兆円引き離されたため、逆転を許す結果になった。

米プロテクティブの巨額買収で、外資系生保に一矢を報いる

 10年4月、第一生命は大手生保として初めて相互会社から株式会社に転換し、株式を上場した。

 第一生命には、2つの悲願がある。ひとつは、民間生保国内最大手の日本生命に追いつき追い越すことで、2つ目は攻められっぱなしの米国生保の本拠地である米国市場に上陸することだ。

 前述の通り、第一生命日本生命に追いつき、追い越すことに成功した。2つ目の悲願である米国生保の買収については、米中堅生保のプロテクティブ生命を今年2月に約5800億円で買収した。

 これは、日本の生保業界にとって快挙であった。日本の生保は、これまで米国生保に一方的に攻め込まれてきたからだ。医療保険などの第三分野は、国内の保険会社の取り扱いが禁止されており、米大手のAIGグループやアメリカンファミリー生命保険会社(アフラック)などが独占していた。米国生保の利権を守るために、米国政府が参入規制の撤廃に待ったをかけたからだ。01年7月以降は、国内のすべての保険会社が参入できるようになっている。

 外資では、AIG系生保などを買収した米プルデンシャル・ファイナンシャルが一大勢力になりつつある。アフラックは、日本郵政と広範な販売提携に踏み込んだ。

 TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の協議では、保険がひとつの焦点だった。かんぽ生命が打ち出した独自のがん保険などの新規業務に対し、米国政府は待ったをかけ、結局、日本郵政はアフラックのがん保険を全国2万の郵便局で取り扱うことになった。

 日本の生保業界は、官民一体となって攻め込んでくる米国勢にやられっぱなしだ。彼らの次の標的は、株式を公開するかんぽ生命を手に入れることだといわれている。

 第一生命による米プロテクティブ生命の買収は、国内生保の巻き返しであり、溜飲を下げる出来事だった。第一生命は米プロテクティブ生命を子会社にした余勢を駆って、世界市場のプレーヤーになることを目指す。

 保険料等収入は、フランスを本拠とする保険最大手のアクサが世界首位だ。アクサは日本では生保と損害保険を併営している。

 第一生命は16年10月をめどに、持ち株会社体制に移行する。米国、シンガポールの地域統括会社の権限を高めて機敏にM&Aを行い、世界のトップ5入りを目指す姿勢だ。

日本生命は海外生保のM&Aに1.5兆円を用意

 戦後初めて、第一生命に民間生保首位の座を明け渡した日本生命の児島一裕常務執行役員は、決算発表の席上で「ナンバーワンにこだわりたい」と無念さを口にした。

 日本生命が第一生命に勝つための武器は、やはりM&Aだ。同社は、中期経営計画(15年4月~18年3月)に海外保険会社のM&Aに最大1兆5000億円を投資することを盛り込んでいる。

 日本生命はこれまで、海外での事業拡大に慎重だった。しかし、第一生命の後塵を拝したために方針を転換、M&Aを軸に据えて巻き返しを図る。

 早速、日本生命は豪ナショナルオーストラリア銀行の生命保険部門の買収に向けて交渉を始めた、と現地メディアが報じている。実現すれば、買収に要する資金は約2400億円に上る。

 オーストラリアでは、第一生命が11年に生保大手TALグループを1500億円で買収して子会社にしている。オーストラリアを舞台に、第一生命と日本生命が競合することになる。

 損保業界では、国内最大手の東京海上ホールディングスが6月、米HCCインシュアランス・ホールディングスを買収すると発表した。買収額は約9400億円で、日本企業の海外M&Aで歴代8位の規模になる。

 生損保とも、国内市場は人口減少により大幅な保険料収入の伸びは見込めない。そのため、海外市場に活路を見いだすしかないのだ。しかし、問題は買収した後である。海外の大型M&Aで成功した日本企業の事例があまりに少ないのが、気になるところだ。
(文=編集部)

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