民間血液銀行は、採取した血液の販売で利益を上げているため、血液提供者の健康や採取された血液の品質を考慮せずに血液を採取していたのだ。さらに、生活のために売血を繰り返す売血常習者が増え、売血を繰り返した血は血球部分が少なく黄色い血しょう部分が目立つため、「黄色い血」と呼ばれた。
ライシャワー氏が肝炎に感染したことで、売血が社会問題化し、政府主導の黄色い血追放キャンペーンが始まった。一連の活動が奏功し、日本国内における輸血用の血液は、日本赤十字社による献血で100%賄われるようになった。
こうした社会背景から、当時は会社を挙げて献血に協力する企業も少なくなかった。移動献血車が来ると、手が空いている若手社員は上司から「献血してこい」と促されることもあったのだ。
しかし、最近は人口減少と高齢化というダブルパンチに加え、若者の献血離れが血液不足に拍車をかけている。献血は16歳から可能だが、10代の献血率はわずか6.3%だ。同じく20代も7.2%、30代は6.7%にとどまっている。
「こうした状況を改善しようと、政府は05年から『献血構造改革』と称する中期計画を立てるようになりました。今年、策定された中期目標では、20年までに20代の献血率を8.1%に、30代を7.6%に引き上げることが掲げられています」(同)
厚労省と日本赤十字社は若年層の献血者を増やすべく、移動献血車を増やして高校や大学への出張献血を行っている。献血ルームでの採血とは異なり、学校などでの集団献血は安定的な血液の確保ができる上に若年層の献血啓発効果もある。しかし、そうした移動献血車を敬遠する動きもあるという。
「高校生の場合は、友達の輪から外れたくないという思いが強いため、体調が悪くても『みんながやっているから、自分もやる』と無理をしてしまう子も多いようです。そうした事情から、最近は高校側から『献血車はご遠慮いただきたい』という申し出が目立つようになっています」(同)
移動献血車が高校から遠ざかることで、若年層における献血の理解は進みにくくなってしまう。また、若者の献血離れを加速させる要因は、ほかにもある。
献血業界を脅かす、国際化や経費削減の波
02年に施行された「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」も、そのひとつだ。同法が施行されたことで、それまで献血者に配布されていたQUOカードや図書券といった特典が廃止された。「それらを配布することは、有料採血に当たる」という指摘を受けてのことだが、特典を目当てに献血をしていた10~20代の大学生や社会人も決して少なくないだろう。