シンクランチ、なぜ起業から1年4カ月で株式売却に成功?
上村 でも、起業を考えていた時にKDDI ∞ Laboの審査に通って、KDDI社員の方は少し迷っていたみたいなんですが、高橋専務に推していただいたのも、ある意味運です。そしてなんといっても、サービス開始後すぐ「web R25」に掲載されて、そこからヤフーニュースのトップに出て、それを見て新聞記者が来て、と連鎖的に取材が続きました。あの時は本当にすごかったです。
塩野 メディアでのPRですが、ネットの人って、絶対にあり得ないんですけど、普通の女子がTechCrunch読んでるって錯覚しちゃうじゃないですか?
上村 (笑)初めはやっぱりみんながwebを見ているという幻想は持ってしまいますね。でも、PRのスタートってやっぱり出やすいということで、ウェブメディアは重要だと思います。僕らは、記者の方が記事化しやすいように加工してリリースを送っていました。あとは、PRは「面」で取りにいきました。うまく複数のメディアに同時に掲載されるように記者にコンタクトしたり、リリースを送るという具合に。
塩野 今の起業家の方々を見ていても、シンクランチみたいにちょっとだけVC(ベンチャーキャピタル)回っただけでファイナンスつくところなんてないと思うのですが、ファイナンスについて今の起業家たちにメッセージはありますか?
福山 「ファイナンスについては、本当のプロに任せる」に尽きますね。
上村 普通に人生歩んできた人は、あのファイナンスのマインドは持てないですね。5年計画をつくって、それで(企業価値を)いくらってつけて、いくらを出資するみたいなお作法は。最初、IGPIの人に「こうやるんだよ」って言われて、「はぁ」「それって意味ありますの?」という感じで……。やっている時は怖かったですね、これでこんな大金もらっていいのかって。口座残高見てビビりましたね。
●創業者が自分のお金で出資する
塩野 今回のEXITに関して本当によかったのは、2人が最初にちゃんと自分のお金で出資して支配株主になっていたことですね。最近だと起業家が自分のお金出さなかったり、株を全然持っていなかったりしますからね。
福山 それは絶対に考えられないですね。
上村 ほぼ同時期に起業した会社が追加出資を受けていますが、もちろんさらなる成長のためという場合はよいですが、「お金がもうないから」という理由の場合もあり、その場合はキツイなと思いますね。
塩野 でも、最近は、さっき会社つくった人が「企業価値は、まずは3億円くらいですかね」って言いますよ。
上村 その怖さは、実際にやらないとわからない。僕らも自分たちがやってみて、株式で資金調達することの意味が、本当に腑に落ちてわかりました。「絶対に出口が必要だ」という意味が。
福山 起業するにしても、例えば、「月間1000万PVくらいにサービスが成長するまで起業しない」という堅実さがあってもいいと思います。資金調達しない起業というのも選択肢かと。それで楽しくやると。
塩野 「アプリ兄ちゃん」で稼いで、お小遣いで美味しいもの食べれればいいですし、世界が狙えるなら起業すればいいってことですよね。
上村 サラリーマンで働きながらやれるならベストだと思いますよ。でも集中したくなるんですよね。で、起業しちゃう。
塩野 お2人が30歳だったら起業しましたか?
上村 いや、絶対しないですね(笑)。
福山 僕がそもそも30歳までグーグルにそのままいるような人間だったら、個人でサービスとかもつくってないでしょうねぇ。落ち着きます(笑)。
上村 起業してからヤバいと思ったことはたくさんありますが、グーグルを辞めて起業したのを後悔したことはないですね、これは本当です。
塩野 それはなぜですか?
上村 ここでどんな結果になっても、自分たちの人生にとってマイナスには絶対ならないと思っていました。個人としての価値っていう意味で、これくらいの年齢でこんな経験してる人はほとんどいないですし、どう考えてもマイナスにはならないなと思ってました。
●重要な創業者の役割分担
塩野 前の職場(グーグル)で2人が出会ったってというのも大きいですよね。2人はケンカはしなかったんですか? 外から見ると、2人が役割分担をできていたのが大きかったような気がしますが。