レアジョブの中村岳社長は1980年生まれ。東京大学大学院情報理工学系研究科を卒業後、大手通信会社に就職。技術者として働くなか、「個人と個人をつなぐ新しいビジネスをしたい」と考え、中学・高校時代の同窓生である加藤智久氏(現レアジョブ会長)と一緒に、2007年にレアジョブを設立。今年6月、加藤氏が会長に就任したのに伴い社長になった。
スカイプを利用したマンツーマンのオンライン英会話サービスの分野で、レアジョブはユーザー数が34万人を突破。加藤氏との二人三脚で業界No.1シェア(MMD研究所調査)の会社に成長させた。
多くの日本人がグローバルに活動していく中で、英会話は必須条件になる。20年には大学入学試験のスタイルが一変し、「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)が開始される予定だ。この改革で英語教育はリスニング、リーディング、スピーキング、ライティングの4つの技能すべての能力を直接測定されることになる。当然、小中高における英語教育もカリキュラムの大幅な変更が予想される。
こうした英語力ニーズの高まりを背景に、レアジョブは業績を伸ばしてきた。一方、三井物産は国内外に幅広いネットワークを構築し、グローバルな人材の育成を世界各国で推進してきた。両社が提携することで、レアジョブがこれまで得意としてきたコンシューマー(一般顧客)向けのサービスに加え、三井物産の幅広い顧客アセット(資産)を最大限活用して企業や学校法人との提携や海外展開を図る。三井物産はレアジョブの既存株主から株式の一部を取得したほか、第3者割当増資を引き受け、レアジョブの第3位の株主(持ち株比率22.7%)となった。
この提携によって、レアジョブは5年以内に企業法人向け英会話サービスの導入社数を現状の590社から3000社へ拡大させるとともに、学校法人向けサービスの提供を加速させる。海外展開にも乗り出し、15年下半期にブラジルでサービスを開始するほか、他国についても進出の可能性を探る。
三井物産は最良のパートナー
今回の提携の狙いなどを中村社長に聞いた。
–なぜ三井物産を提携相手に選んだのでしょうか。
中村岳氏(以下、中村) 三井物産は教育事業に出資しています。教育事業への知見を持っているので情報交換をしやすい、連携しやすいと判断しました。
–三井物産の海外のネットワーク網や情報も魅力です。
中村 この秋からブラジルでサービスを展開しますが、ブラジルに一番入り込んでいる日本企業は三井物産です。法人のB to Bの取引でも幅広いネットワークを持っており、それを活用させてもらいながら英語教育のプラットフォーム、インフラを世の中に広めていきたいと考えています。
グローバルなネットワークを活用し、5年以内に法人企業3000社との契約を目指します。これまで当社と取引のなかった業種にも幅広くレアジョブ英会話の良さを知ってもらい、社員の英語力向上に寄与したいと考えています。
–経営状況についてお聞かせください。
中村 15年3月期の売上高は21億1200万円で、従業員は約100人です。フィリピンの従業員は170人ほどです。「日本人1000万人を英語が話せるようにする」ことを使命(ミッション)にしています。
–現在進行中の施策を教えてください。
中村 当社で提供している、英語を話せる力を測定する「レアジョブ・スピーキングテスト」(スカイプを利用し、厳選された3人の試験官、責任者によるスコア判定)を100社(1社100名、合計1万名)に無償で提供するプロジェクトを始めました。学校向けには各都道府県の中学・高校から1校を対象に、最大40名までレアジョブ英会話を1カ月無料で提供しています。
現在4000人いる講師の中で、ビジネス向けの講師は百数十人です。現状、講師の数は足りていますが、スクリーニングにかけると採用率は4%以下になります。ビジネス用のトレーニングを行ったうえで講師としてデビューさせています。
–大学入試のあり方が変わると高校以下のカリキュラムも変わってきます。
中村 大学入試で4技能を測定することになると、中学、高校でのスピーキングのニーズが増えてくるでしょう。とりわけ高校では顕著になると考えられます。市場が一気に拡大しますので高校をきちっと攻めたいと思います。
–ありがとうございました。
(構成=編集部)