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「スター」になりたがらないパナソニック津賀社長へ提言 「感動の名手」盛田昭夫に学べ

文=長田貴仁/岡山商科大学教授(経営学部長)、神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー
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 「トップ広報」が注目され始めてから久しい。社長などトップが率先してインタビューに応えるなど、自ら積極的に広報活動を展開する姿勢が、近年一般化している。これは決して経営者の「神格化」につながるわけではない。経営者が私利私欲のためではなく、従業員、顧客、社会、株主などのステークホルダー(利害関係者)に対して、トップの考えやキャラクターまで知ってもらうための活動は、経営上、重要度が増している。

 財務という定量分析を重視しているアナリストたちも、社長の発言や思考、性格などの定性的な面に注目するようになってきた。そのため、国内外のIR(投資家向け広報)ミーティングに、社長自らが出席して説明をするというケースはめずらしくなくなっている。

 一方で、IRには熱心だが従来型のPR(広報)には不熱心という社長も見られる。これでは、本当の意味でのスターにはなれない。こう提唱すると、「社長はスターにならなくていい」と言われるかもしれないが、単なる人気とりになれ、と言っているわけではない。人びとの心を動かせる経営者になれ、と主張したい。今、このような経営者が少なくなり、株主重視経営に傾倒し企業価値を高めるためには業績さえ良くすればいい、と思い込む経営者が増えてきた。

 不正会計問題で揺れた東芝は、皮肉にもトップ広報に熱心であった。今回のような行動をとっていなければ、西田厚聡氏(元社長)は国内外に対する発信力という点では優等生であった。マスコミ受けも良かった。だからして、不正会計に走ったことが余計に悔やまれる。今回の一件で、口がうまい、マスコミ受けする経営者は怪しい、と思った人も少なくないだろう。だが、事はそれほど短絡的に分析できない。

 ちなみに、西田氏だけでなく、後継者の佐々木則夫氏も立て板に水の如く話す人であった。ところが、直近まで社長を務めた田中久雄氏は、小声でつぶやくように話すので側で耳を傾けていても聞き取れなかったほどだ。

 トップにとって「経営は言葉である」という条件は必須である。これを疎かにするということは自殺行為につながる。しかし、ここであらためて、「言行一致でなくてはならない」と但し書き付け加えておかなくてはならない。不幸にも、「経営は言葉である」と自ら語っていた西田氏は、この経営哲学を全うできなかったことになる。すばらしい才能を持っていても結果が悪ければ、とくに不正につながれば、断罪されるのが経営の厳しさである。とはいえ、晩節を汚したからといって、ある時点で活躍していた経営者の全資質を否定してしまっては、あまりにも学習効果が薄いと言えよう。

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